表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄令嬢の幸せ  作者: maruko
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/48

始めよう

ダートンはここで一気に皆の気を高めて廃妃に向けて画策しようと意気込んでいたのだが⋯。

アルシェリーナの登場で高まった気が一気に分散されてガックシ肩を落とした。


その様子を横目で見てルーカスは笑う。


「父上、己の失態は己でどうにかしてくれ。子に背負わすな」


「⋯⋯」


それはご尤もであるが元来気弱な君主は情けない顔を《《その子》》に向ける。


フゥーと大きな溜息を吐きトゥールを見やり、その後は一生懸命に思いの丈をアルシェリーナに語っているセリーヌへと気を向ける。

恋の屍になった弟の事も少しではあるが片隅にだけでも気にはしていた。


トゥールは2、3枚の書状をダートンに渡すと少しだけ説明を行う、読みすすめたダートンはトゥールを見上げ、そしてちゃっかりアルシェリーナの膝の上にお座りしているルーカスを見る。

それから頷いて「余は帰る」と立ち上がり離宮を去った。


後に残された三兄弟とアルシェリーナはいつの間にか居なくなったダートンには目もくれず和気藹々とお茶に明け暮れた。

ライアンだけはまだ失恋の痛手を負っていたが自分の中で切り替えた。

何故なら今日のアルシェリーナはいつも以上に可愛らしい魅力的な女性で見ているだけでも気持ちがアゲアゲになったから。

─兄の物でも見るだけなら許されるだろう─

女々しいライアンだったが、今日だけは妖精達も彼を慰めていた為ルーカスは許した。



「「みんな仲良しねぇ~」」

「「意地悪な人はダメダメよぉ」」

「「楽しく楽しく踊りましょう」」


妖精は今日はとっても気分がいいようだ、口々に言いながら踊るから、何時もの閑散とした応接室に虹色の光が差してきた。

その光を見ながらトゥールは本日何杯目かわからないお茶のお代わりを注いで回った。



◇◇◇



離宮を後にしたダートンは直ぐ様、自身の側近を呼ぶ。


「此の者たちを集めよ」


先程トゥールから渡された紙を側近にスライドして指示を出したあと、机に座り手紙を認める。

久しぶりに書く個人的な手紙の宛先はマリアだった。

昔はよく書いていたがアネトスの顔色を伺う内に疎遠になっていた事にも今やっと気付き実感した。


「魔窟にしたのは私のせいだな」


呟きも虚しくベルを鳴らして腹心の侍女を呼んだ。


「これは必ず手渡ししてくれ」


受け取った手紙を見て侍女は驚く、そして陛下の顔を見ると彼の決意が伺えた。


「御意に」


この言葉を発したら彼女は侍女ではなく“影”として動いてくれるだろう。


立ち上がり窓から外を見下ろすダートンは戦いの火蓋を自分が切った事を実感していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ