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悩む後継

「すまんなアネトスが年々苛烈になってしまって⋯」


ダートンが染み染みという体で謝罪を口にしてアルシェリーナはどう返答していいか困った。

ただの目上の人ではない、この国の王の謝罪だ。

ダートンの言葉に目を白黒させて(くう)を見つめた。


「今更だよ父上」


ダートンが目の前にいるのにも関わらず未だアルシェリーナの膝枕でなんなら足は組んでいるルーカスが、《《普通に》》答えた。

全てが不敬の塊ルーカスは更に追い打ちをかける。


「妖精達が父上の頭を蹴ってるよ」


その言葉でダートンは自身の頭に手をやるが、見えない妖精に触ることも抵抗することも出来はしない。


「ゲート王国を守護してくれる妖精に嫌われる王なんて王じゃないねぇ」


更に更にの倍!

ルーカスは父であっても容赦はしなかった。


「面目ない」


ダートンはルーカスに情けない顔を向けて手を合わせていた。

これではどちらが王なのか、アルシェリーナは密かに嘆息した。


「母上はどうされるおつもりか?」


ルーカスが今までは膝枕でアルシェリーナの顎先を見ながら話していたのに、その日始めてダートンに顔を向けて言った。


「マリアに王妃は務まらない」


「そんな事は解っていたでしょう」


「だがライアンはアネトスに、そっくりだ。王位は渡せない」


「⋯⋯⋯」


話の展開が見えないアルシェリーナは、居ない者と扱っていたトゥールをやっと認めて目を向けた。

─どうなってるの?─

アルシェリーナの双眸はそう語っているようにトゥールには見えた、だから首を左右に振った。

今はこの話の行く末をトゥールも聞かなければならないからだ。



ダートンはこの半年悩みに悩んでいた。

この王国には迷信ではない妖精がちゃんと存在している。

それは父王の代から王家も共有をするべきだという訓示を遺言として残された。


その引き継ぎをダートンは誰に引き継げばいいのか悩んでいるのだ。


愛子(めでご)になった時点でルーカスを王太子にする事は出来ない、それ以前にアネトス派が許すわけがない、だがもう一人の王子は、息子であるのにダートンは信用できないでいたのだ。

ライアンは腹黒すぎる、ただの腹黒さならルーカスもあまり変わりはないが、ライアンの場合は利己的なのだ、とても王の器ではない。

今日ここへダートンが訪ったのは当事者であるルーカスにも知恵を絞って欲しかったからだ。

妖精に関しては誰にも相談することが現時点でダートンには出来なかった。


父の苦悩は解るけれど愛子のルーカスには出来る事は限られている、それは普通の王子よりも少ないのだ。

最早、臣籍降下が決まっているルーカスが考えることではないと彼は達観していたのだが⋯。


「セリーヌに女王になってもらうしかないのでは?」


ルーカスが提案したのは彼より一歳下の第一王女、ライアンの姉であった。


「セリーヌだったら王妃の息はかからないでしょう」


セリーヌは第一王女であるが、凡そ王女らしくない生活をしている。

何故なら母である王妃のアネトスに疎んじられているからだ。

マリアのあとに王妃とはいえ子を成したアネトスは自分が産んだ子が女であった事に、かなり憤った。

そしてその鬱憤が全てセリーヌに向けられることになる。

それはライアンが生まれたあとも変わりはなく、彼女はルーカスと同じ様に宮を充てがわれ一人で住んでいる。

ルーカスと違うのは一応ダートンが気にかけて使用人もふんだんに送り、教育も施しているからだ、但しアネトスには内緒で。

バレたら血を見るかもしれない。


それほどにアネトスは苛烈だった。


「父上が王妃を甘やかすからですよ、いや甘やかすというより逃げてたんですかね。ハハ真逆(まぎゃく)ですね」


ルーカスの毒舌は止まらない。








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