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初めての⋯。

ドキドキ、ドキドキ、

アルシェリーナの動機が止まらない。

今日私は天に召されるのではないか、これはかなりの確率なんじゃないかと馬鹿な事を考えているアルシェリーナが、今いる場所は⋯。

離宮のルーカスの部屋だった。


初めての“彼”の部屋。


この心臓の早鐘は恋する乙女の試練なのか!


陛下との対面の為、トゥールがドュバン家の隠し部屋まで迎えに来てくれて、そのまま隠し通路から案内されてここへ着いた。

ソファにはショタルーカスが足をぶらぶらさせながらケーキのイチゴを頬張るところで思わず駆け寄って口の端に付いてる生クリームをペロリとしたい衝動に駆られたが、主を守る為に走り出しそうなアルシェリーナをトゥールが羽交い締めで止めた。

その後はいつものようにルーカスの隣に座って大人しくしていたのだが、彼女はふと気付いた。


ここって⋯⋯。


そして冒頭に戻るである。


今、アルシェリーナはトゥールの事はすっかり意識から排除して居ない者として取り扱っている。

この部屋(世界)に二人きり⋯照れるぅ!とアルシェリーナの思考はお花畑であった。


哀れなトゥールはそんな事をアルシェリーナが考えてるなんて微塵も思わず、今はそれどころでは無い。

此方に訪う陛下の為に用意した最高茶葉を最高の状態で蒸らすのに必死だ。


いつもと変わらないのは毒舌ショタルーカスだけだった。


いつものようにアルシェリーナの膝枕で寝転んでお行儀の悪さを発揮していた。


コンコンコン


ノックの音が響き、慌てて走るトゥールが扉を開ける。

そこに佇んでいたのはゲート王国国王ダートンの姿だった。

彼は共を一人も付けずにやって来た。


ズカズカと部屋に入ったダートンは開口一番


「ルーカス!久しいのぉ」


アルシェリーナの膝に寝転がる不敬な態度のルーカスには触れず、ルーカスに会えて嬉しくて堪らないという態度を全面に押し出した、ただの父親の姿がそこにあった。



トゥールが必死に淹れたお茶は流石最高茶葉である。

少し黄みがかったそのお茶はアルシェリーナが飲んだ事もない旨味と少しの渋みが混じった、煎茶というものだった。

ラガン夫人経由でトゥールが仕入れたのだと、一切関わっていないのに自分の手柄のようにルーカスが燥いでいた。

それをニコニコと嬉しそうに聞いているダートン。

その顔はアルシェリーナに死刑宣告の様な婚約を両親に命じた強面の国王の姿とは思えない程だった。


両親から聞いていた姿とは全然違うのだけれども⋯。


─本当の陛下の姿はこちらなのね─


アルシェリーナは全ての人柄は実際に自分の目で見て確かめないとわからないという事、噂を鵜呑みにしてはいけないということを改めて感じ、学ぶのだった。







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