迷惑な遺言
新連載です
よろしくお願いします(o_ _)o
ドュバン侯爵家当主のラクサスは妻のミナリーゼとともに登城していた。
3ヶ月前に崩御した前国王よりドュバン家に沙汰あり速やかに登城せよという王宮からの呼び出しだった。
何故前国王がドュバン家へ遺言を?
訝しみながらも王宮からの呼び出しであれば夫婦揃って登城せねばならない。
ラクサスの心中は《《これ以上》》ドュバン家を王家の事情に巻き込まないで欲しいというのが本気の願いだった。
案内されたのは謁見の間
二人で新国王ダートンの前に臣下の礼で跪く。
「ドュバン侯爵、これは王命である」
「はっ」
ラクサスが返事をすると緩ゆると国王が王命を読み上げる。
「前国王サイラス・ファン・ゲートの遺言により第二王子ルーカス・ドゥア・ゲートとドュバン侯爵家息女アルシェリーナの婚約を認める」
「「⋯⋯っ!」」
「んっんっ」
ラクサスとミナリーゼは夫婦で息を呑み直ぐに返事が出来ないでいると玉座より数段低い位置で立ち並んでいた、宰相であり従兄のマリトス公爵が咳払いをして返事を促す。
「あっ有り難き幸せにて⋯謹んで⋯お受け、致します」
不本意ながらも王命では逆らえない、ラクサスは途切れ途切れに受諾するのが精一杯であった。
(あぁまたドュバン家は王家に振り回されるのだな)
悔しさに心で呟きながら、決まらない覚悟を胸に泣きそうな妻とともに家路へと馬車に揺られるのであった。
「お帰りなさいませ」
「⋯⋯」
城に近い王都の一画に建てられたドュバン侯爵家に着くと出迎えた執事からの言葉に返事が出来ずにトボトボと執務室へ向かうラクサス。
妻のミナリーゼは着いたそうそう今にも倒れそうになりながら自室へと侍女に伴われて行った。
執務室の机に肘を付きその両手で額を押さえながら何事かを考えているラクサスを執事のトーマスは心配そうに、だが声もかけられずに見守っていた。
本日の登城が王命であったのは知らされていたので良くないことを言われたのは主人の様子でわかるのだが、一体どんな無理難題を押し付けられたのだろうかとラクサスの言葉を待っていた。
やがて意を決したように顔をあげたラクサスの目は泣くのを堪えて真っ赤になっていた。
そしてトーマスに伝える。
「ダイサスとアルシェリーナを呼んでくれ」
トーマスは主人の命に直ぐ様従った。
ラクサスに呼ばれた兄妹は其々の侍従と侍女も伴って執務室へ入ってきた。
ラクサスとミナリーゼの間に生まれた2つ違いの兄妹は兄がダイサス、そして妹がアルシェリーナ。
兄ダイサスの侍従がディラン、アルシェリーナの侍女がエリナ。
ディランとエリナも兄妹であった、父親は執事のトーマス。
優秀な執事の子供は二人とも優秀であったのでラクサスは早い段階で二人を我が子の側に置いていた。
ラクサスは向かい側のソファに並んで座る我が子に辛い報告をしなければならない。
躊躇いながら口を開いた。
「アルシェリーナ、お前の婚約が王命で決まった」
「「⋯⋯っ!」」
二人は息を呑み体は固まったままで直ぐに反応しなかった、いや出来なかった。
先刻謁見の間で自分達も夫婦揃って同じ状態であった事を思い出しラクサスは苦笑した。
子は親に似るのだな、そう思って新しく決まった娘の婚約者であるルーカスを思い浮かべて嘆息する。
「第二王子のルーカス様だ」
父親の言葉にアルシェリーナは思わず大きな声が出た。
「我が家は!ドュバン家は何の罰を受けてるのですか!」
アルシェリーナの言葉に、その声量には驚かされたが執務室にいた面々は皆同じ気持ちであった。