序章 ~狂おしい夜に囚われて~
彼の下に横たわると、私の胸が重苦しい切なさと麻痺で満たされる。
黒崎徹也の暗い瞳が私を見据え、その燃えるような眼差しは、恐怖すら覚えさせた。
彼のキスは、優しくも確かな力で、まるで執着するかのように私の体の線を辿っていく。
以前のような荒々しさはなく、今や慎重なリズムでゆっくりと腰を振り、何か儚いものを壊してしまうのではと、彼が恐れているかのようだ。
私の体はすでに、彼の子を宿している。
その事実が救いになるはずなのに、そう感じられない。
徹也は相変わらず、まるで所有物のように私を求め続ける——少なくとも、彼の頭の中では私はそういう存在なのだ。
縛り付け、強制的に結婚させ、妊娠するまで毎晩ベッドを共にした男。
今では、彼の手の動きは優しく、無理強いしない。
だが変わったのはそれだけ——支配そのものは何も変わっていない。
彼は決して私を解放しない。
その後、彼は私を強く抱き寄せ、繭のように腕で包み込んでくる。
「早く、俺たちの子の顔を見たいな」
優しいはずのその言葉が、私の胸に澱んだ醜い感情をかき立てた。
——狂気じみている。
私は、理解できない。どうしてこの男は、冷たいと思ったら、次の瞬間にはこんなに優しいの?
世間にとって黒崎徹也は、冷酷非情な財閥御曹司。たった一瞥で人を葬り去る男。
しかし私の前では、彼はまるで別人のように振る舞う。
怒鳴ることもなければ、厳しい言葉さえも口にしない。その目は常に解読不能な感情を宿し、私にかける言葉には、たまらなく甘い色が滲んでいる。
それでも、彼は決して私を離さない。
堪えきれず、私はやっと震える声を漏らした。
もはや内に秘めた嵐を抑えきれないんだ。
「あなたは一体、私から何が欲しいの?」
彼はさらに私を強く抱きしめ、息が耳元に触れる。
「まだわからないのか、綾音」
言葉の端々に、執着の色が滴り落ちた。
「俺が求めてるのは、お前だけだ」
絶望。
絶望が私の心を引き裂く。
どうしてこんなことになってしまったの——?
父の失踪の真実を探すためだけに黒崎グループに足を踏み入れたはずなのに...
いつの間にか、この悪夢へとすべてが歪んでしまった。
全ては、あの日から始まった…
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