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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その33~結婚式

作者: 天海樹

ある晴れた日の教会での結婚式。

賛美歌が響き渡り、

いよいよ誓いのキスという時、突然扉が開いた。

そこにはサングラスにヒゲ面の男が立っていた。

室内に光が飛び込み皆が一斉に扉の方へ顔を向けると、

その脇を新婦が駆け抜け

そのまま扉の前に立つ男と外に消えていった。

皆はあっけに取られ何が起こったか理解できないまま、

微動だにしなかった。


二人は車に乗り込み素早く車を出した。

男は付け髭をとって言った。

「結婚式なんて聞いてないぞ!」

「言ってないからね」

「儲け話かあるからって…

これじゃあ映画の『卒業』じゃないか」

「そんないいもんじゃないわよ。

だって誘拐犯なんだから」

そう言って新婦は笑った。

男は意味がわからないまま新婦の顔を見てると

「はい、コレ。まずは身代金要求ね」

と、運転する男の膝の上にボイスチェンジャーと

飛ばし携帯を置いた。

新婦の言う通りに高速のサービスエリアに着くと、

男はこの短い間に積り積もった質問をぶつけた。


新婦が言うには、

最初から結婚は彼の実家の資産狙いで、

結婚して遺産をもらうまで

待てないから身代金で手に入れようと。

「でも君は自ら駆け寄ったところ見られてるじゃん」

「なんとでもごまかせるわ。

交際中によく調教したから私の言葉は信用するの。

それに彼、プライド高いからそれ以上に

花嫁を取り戻すのに必死のはずよ」

「身代金を受け取った後、どうするの?」

「あなたに殺してもらうわ」

男はもう何を聞いても驚かなくなっていた。


身代金を運ぶのは新郎の彼を指名した。

受け渡しは時間内にある場所まで来させ、

それを3、4回繰り返す。

最後の場所では用意した台車を使わせて、

丁度来た電車に現金の入った

スーツケースをだけを乗せさせる。

あとはそのスーツケースをいただくだけ。

目撃されていても乗っていた目撃者を警察が探すのは至難の技。

しかも変装してればとうてい辿り着かない。

もし最後の場所まで警察が追って来たとしても、

電車を車で追うのは難しいし、

行き先を予想して警官を配備しようにも

スーツケースのピックアップ先を他の管轄にしてしまえば

要請に時間がかかるという素人離れした計画だった。


二人は計画通り身代金を受け取った。

「最後に、警察に知らせたから、

という理由で私を殺したことにして」

「これからどうするんだよ」

「嘘の私から本当の私に戻って悠々自適に暮らすわよ。

式の参列者?すべて雇った人達。

今時お金を払えばすぐに集まるでしょ?

あなたのようにね」

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