探していた本と雑誌
私は本屋さんにはよく行く方だと思う。近隣の本屋さんならば自分の欲しい本を探す時は、どこになんのジャンルがあるのか、売り場がわかっているので探すのにあまり苦労しない。
ただ、頼まれた時には探すのに困る本もあるのだ。最近の話しで探してもわからなかったのは、アニメ化もしていた、デキる猫の漫画のレシピ本だ。アニメ化すると、特設コーナーに大体的に本を飾るタイプの本屋さんなので探すのは簡単なはず··なのに、漫画のコーナーにない。一巻から最新巻までありファンブックのようなものはあったのに、レシピ本なるものが見つからない。
だが、私は本屋を知り尽くしている(自分の好みの本のみ) まずは在庫の確認を検索機で確認して印刷する。スマホでも確認出来る店もあるけれど、ここはレジと直結している店の中の検索機が確実だ。
在庫はあり、と出た。つまり私の見てない所に置かれているのは確かだ。本屋に詳しい私は漫画のコーナーが漫画コーナーとはまったく別の島にある事を知っている。
それは趣味のコーナーやお母さんのためのコーナーだ。この本屋は赤ちゃん子育て奮闘記や、海外で〇〇した話しの漫画などが、別枠にされている。探している本があるとすれば、ここしかないのだよ。
自信満々に向かったものの、目当ての本はなかった。あれ、在庫ありになっているよね。本屋を知り尽くしていると謎の自信から、探すことさらに五分、いや探していたのは本ではなく店員さんだ。
わからない時、困った時は本当のプロに聞く。私のちっぽけな誇りは簡単に壊される。
しかし、店員さんも私の行動をなぞる動きをする。すなわちアニメ化コーナー、出版社別の棚、趣味のコーナーだ。うん、プロでもお店の人でも見る所は同じなのだね、少し安心したよ。
それでも相手はプロ。素人の私と違い、とっておきの場所を知っている。というかレシピ本だから、料理コーナーに普通にあった。そう、これは盲点でもなく私の固定観念の問題だったのだ。漫画本だから漫画コーナーと決めつけ、ジャンルを思考から外していた。
思い込みはこうして、時に自分の視野を狭く生きづらくしていく。たかが本と侮れない。私はよく行くスーパーでも同じ轍を踏んでいたから。
店員さんにお礼を述べて目的の本を手にする。料理の事以上に私に学ぶ機会を与えてくれてありがとうと言いたい。私が読みたかった本ではないけれど、それは言っては駄目なやつだ。
そして再び頼まれたのは雑誌だ。キャラクターものの付録付きの。ディズニー、スヌーピー、ムーミンを筆頭にミッフィー、ダヤン、リラックマなどが続く。最近はちいかわとかトムとジェリーなどが目に付くところに置かれている。
キャラクターが渋滞を起こしている中、やはり付録付き雑誌のコーナーがある。店舗が比較的大きめなので、こういう時に助かる。
頼まれた付録付きの雑誌を探す。もう知り尽くしている、なんて自負はない。ただ、前回と違い発売日当日、在庫も確認済で、探す場所も思考の罠にとらわれないように、雑誌の置かれている場所を探したのに見つからない。
困った時の店員さんは、若い子たちしかいなかった。ちょうどベテラン店員さんが帰り若いバイトの子たちが多い時間。私は駄目だと思った。最近の子は〜と言いたいわけじゃない。ただ適当に探してありませんでしたと何度も断られて来たので、仕方ないと諦めただけだ。
若い子だから悪いわけじゃなく、仕入れたり在庫補充を担当していないと、なかなか全ての場所を把握なんて大変なのはわかるつもりだからね。
本屋に限らず、一見狭いコンビニだって、複数の品があり過ぎて興味ない品物なんて、売ってるんだって思う。
この時だって、経験のある店員が把握していた事を、入って間もない店員が同じレベルにないのをわかっていた。たんに適当にあしらわれるのが嫌だなと思っただけだ。
しかし、私の意に反してその子は見た目より熱かった。やる気なさそうな顔と言ってごめんなさい。いえ、本当にだるそうだから、私が身構えただけ。早とちりもいいところだ。
その子は在庫数を確認して売場にないはずがないと断言した。格好いいと思ってしまった。帰りがけのベテラン店員を掴まえて、あるはずの場所に雑誌がないことを指摘する。
そして担当者に確認させる。高校生か大学生くらいの子なのに、出来る、惚れる、チョロいぞ私。
接客向きじゃない表情だけど、それがかえって信頼に変わる。手のひらクルックルってやつだ。セルフレジなので、愛想振りまく必要ないからね。
最終的に担当者が売り場に出さずに放置して、店の倉庫に置いたままだったようだ。私は半ば諦めていたので、店員さんの執念に感謝した。
言ってしまえば店のミスなんだけど、言わなければ誤魔化せる。アルバイトなら店にないものはないで終わらせられる。
でも、彼女は在庫があるのにおかしいとハッキリ言って、担当者の同僚を摑まえた。待たせているので、店内で雑誌を探しつつ声をかけてくれる。
先輩店員のうっかりを見逃さず、私の手元に欲しい品物を届けてくれた若い店員さんは最後まで丁寧だった。
私は頼まれた雑誌が手に入り満足したのと同時に、素人ながらものを書く身として彼女を題材に文章に残したくなった。
別に書いてくれって店員さんが望んだわけじゃない。読んだ人が、だから何って思うごくありきたりの話だ。でも、日常にありふれている話だからこそ、書きたかった。