ゆめのくらがり ―4―
欠伸猫です。
連続投稿完了です。
最終話も是非楽しんで下さいませ♪
少女を背負い
公園に向けて歩き出した男子学生は
歩いて暫くしてから、
少女に話し掛ける。
「……足、
どんな風に。
……痛い………?」
問い掛けられた少女は
「………
そうですね……。
んー………、
ズキズキ……?
つきつき……?
そんな感じ……。ですか……、ね………?」
「………そう、か。
…………。
……他に、
痛む処はあるか?」
「えー……と……。
特に……、は
無い……、です……。ね………?
少なくとも……、
今のところは……?」
「……なら、良い。
…………………。
……思ったより遠いな……。
……少し。
……急ぐ、ぞ?」
「は……、はい………!」
その言葉を皮切りに
少女を気遣い
ゆっくりと歩いていた
男子学生の足は
一気に早くなる。
そして、
あっと言う間に
目的地である
公園に到着し
公園の広場の端にある
水場の近くのベンチの一つに
少女を降ろして
ゆっくりと座らせる。
「……大丈夫か?
……痛みが酷くなっていたりはしないか?」
「はい……、
大丈夫ですよ……?
有り難う御座います……。」
「……少し、ここで
待っていて欲しい。
……ハンカチを水で濡らして来るから。」
「分かりました……。
大人しくしていますね……?」
「……ああ。
……そうしてくれ。」
そのやり取りの後に
男子学生は水場に向かう。
その後ろ姿を見送り
少女は一息つく。
「ふぅ………、
流石に少し
疲れました……、ね………。
それにしても……、
随分と背の高い方……、ですね………。
何㎝程なのでしょう………???」
そう呟いて、
こちらに背を向け
水場で何やら、作業をしている
男子学生に目を向けながら
ぼんやりと過ごす。
すると―――……
「…………?
……どうした………?
……痛む、のか?
……大丈夫か?」
「…………あ……。
お帰りなさい……。
大丈夫ですよ……?
痛みは
ほぼありませんから……。
寧ろ……、先程より
痛みは引いていますね……。」
「……そうか。
……なら、良いが。
……靴、脱がすが。
………良いか?」
そう言いながら、
少女の足元にしゃがむ
男子学生の言葉に対して
少女は、
「っ………。
は……、はい……。
大丈夫です……。
一思いに
ヤって下さい………!」
「…………。
……何故、
そんなにも………??」
「……何か。
……俺が酷いコトを
するみたいじゃないか?」
「あ…、
イエ……。
つい………。
よく……、考えたら……。
私……、サンダルでしたね……?」
「……それも、
踵無しの。
……突っ掛け。
……みたいな、な………。」
「はい………。」
そのやり取りを終えて
男子学生が少女の顔を覗き見ると
少女は、ほんのりと
顔を染めて、いた。
それを見た
男子学生は、
「…………………………………。」
唖然とした顔で
暫し、
固まった。
「…………?
あの……??
もしもし……?
大丈夫ですか……?
もしもーし……?」
「………ハッ!
………?!
……す、スマン……!!
……ア~、と。
……だな…………?」
「はい……?
何ですか……?」
「……イヤ、
――………。
……そう言えば。
……お互い、
呼び方が困る。
……な、と。
……そう思っただけだ。」
「あぁ……。
そう言えば……、
確かに……。
そうですね……。
私は貴方のコトを
何とお呼びすれば……、
良いですか……?」
「……そうだな?
……んー―――………。
……あぁ!
……クク、と。
……そう呼んでくれ。」
「………
くく……。ですか……?」
「……ああ。」
「……。
理由をお伺いしても……?」
「……勿論だ。
……理由は、な。
……俺の名前を
捩ったのと。
……俺が小さい時に、
計算の九九が
出来なかったコトを
かけた渾名で
呼ばれていたから。
……取り敢えずは
その呼び方で。
……というトコロだな。」
「そうですか……。
解りました……。
では……、
くくさん……。
と
お呼びしますね……?」
「……ああ。
……そうしてくれ。
……で。
……俺はあんたのコトを。
……何て呼べば
良いんだ?」
「そうですね…。
私のコトは……、
ゆみ……、と……。
呼んでいただければ……。」
「…………ユミ?」
「はい……。
ゆみ……、です……。」
「理由は……、
敢えて
聞かないで……、
下さい……。」
「………。
……解った。
……なら。
……ユミ、と。
……呼ばせて貰う。」
「……宜しく、ユミ。」
「はい……。
宜しくお願いします……。」
「……じゃあ、
手当て。
……する、な?
……少し触るが
痛かったら言えよ?」
「はい……。
―――っ……!
やっぱり……。
触ると……、
痛い……。です……、ね………。」
「……そうか。
……スマン……。
……この辺り、か。
……ハンカチ、当てるぞ?」
「分かりまし……、
っ………!
~~~ッ……!!」
「……スマン!!
……痛いよな!?
……ただ、もう少しだけ。
……我慢して、欲しい……!!」
「は……、はい………。
大丈夫……、です………。」
「…………
……そうか、
うん。
……このくらい、
なら………」
そう言って、
男子学生は
肩に掛けて持っていた
鞄から、
小さな取っ手付きの
真四角形でプラスチック製の
クリアボックスケースを
取り出して蓋を開け
その中から
湿布、テーピングテープ、ガーゼ、消毒液、絆創膏。
そして、包帯を。
取り出した。
それを見た
少女は、
「あの………、
それ………。」
「……ん?
……ああ………。
……コレか?
……出歩く時の為の
携帯式救急セットだ。」
「…………。
持ち歩いて……、
いるんですか………?」
「……マア、
一応………
何かあった時の為に、な。
……現に、今。
……役に立っているだろ?」
「………。
そう……、です……ね……?」
「有り難う御座います………。」
「……イヤ、
気にするな。
……結構。
……腫れている、な?
……あん、………。
ユミは。
……利き足は左か?」
「いえ……。
反対の……、
右足……、ですね……。
一応……。」
「……成る、程……。
……足首、だからな。
……一応。
……固定、しておくな?」
「……あと、
膝も。
……擦りむいている、な。
……………
……あ~あぁ。
……血ィ出てるよ………。
……こっちも
手当てするな?」
「はい……。
有り難う御座います……。
……………
すみません………。」
そう言って少女は
目に見えて
落ち込んでしまう。
その反応を見た
男子学生は、
慌てて。
「……イヤイヤ、
気にするな!
………大丈夫だから……!
……な!?
……俺の言い方が
キツかったのも
あるから……!!
……スマン!」
「い……、イエ……。
私の方こそ……、
すみません……。
くくさんこそ……、
お気になさらないで下さいね………!?」
そんな風に、
大小·凸凹の男女が
二人揃って
アワアワと、
慌てふためく様は
端から見ると
中々どうして
シュールだった。
「えーと……、えーと……。
どうしよう………
ア……、そうです……!
あの……、くくさん………!!!」
「……ハイッ!?」
「……何でしょう!?」
唐突に俯いていた顔を上げて
声をあげる少女に
ギョッとしたように
思わず。といった様子で
仰向けに上体を逸らしながら
返事を、それも何故か敬語で
した男子学生に
少女は
「あの……、
割とどうでも良い
疑問なのですけども……、
くくさんは
身長は……。
何㎝です……、か……!?」
本気で。
割とどうでも良い、
質問をされた
男子学生は
虚を突かれたような
顔をしながら
応えた。
「………。
……そうだな。
……最近は、ちゃんと
測っていないから
具体的に正しくは無い、が。
……確か―――………
2m、は確実に超えている、な?」
その言葉を聞いた
少女は
口をぽかん。と開けて
「何ですか………。
ソレ………。
ズルいです………。
私なんて……、
漸く……、
140㎝あるか……、
ないか……。なのに………!!
狡いです………!
くくさん……、
狡い……!
その上背……、
少し……、イエ……。
半分くらい
ください…………!!」
と男子学生に詰め寄る。
詰め寄られた男子学生は
「…………お、オウ?
………?
……!?
………イヤイヤ!!
………狡いって??
……くれって言われても、
背丈は
あげたくて
あげられるモノじゃ
無いからな!?」
一瞬
何を言われたのか
解らずに
戸惑い
次いで
大慌てで
否定し
説得に走る。
すると
少女は
目尻に涙を浮かべ
「………
うぅ~~~~っ……!!」
威嚇する子犬のように
唸り声をあげる。
「……イヤ、
唸られても………」
その姿を見て
男子学生は
困惑したように
眉尻を下げて
呟いた。
そうこうしているうちに
「………
……ホラ、
終わったぞ。
……良い加減落ち着け?」
「………ム~……。
まぁ……、良いでしょう……。」
「……あのな?
……はぁ。
……どうだ?
……少し立って
歩いてみて貰えるか?」
そう言って、
少女の足元から
退いて、促す。
「よい……、ショ………。
んー……、
そうです……、ね………」
「………!
凄いです……!
立ってみても……、
歩いてみても……、
痛く……、無いです………!
凄いですね……。
くくさん………!!」
辺りをグルグルと
歩いてみた少女は
そう言って
きらきらとした目で
男子学生を
見詰める。
そんな目で見詰められた
男子学生は
照れた様子で
「……そう、か。
……なら、
良かった。
……キツすぎたり
緩すぎたりは
あるか?」
そう尋ねると
「いいえ……?
全然………!!
程好い締め付け具合です……!
ホントに凄いですね……!!」
「……そうか。
……ところで、
ここから
ユミの家は
近いのか?」
具合と状態を確認した
男子学生は
少女にそう尋ねる。
その質問を聞いて
少女は
「えと……、
何故……?
と……、
聞いても
よろしいでしょうか……?」
と質問した。
ソレを聞いて
男子学生は
慌てて、
「……ア。
……イヤ、
違う!
……その、
手当てしたと、言っても。
……怪我は怪我だろう?
……つまり、
ユミは怪我人だ。
……万が一。
……ここから遠かった場合。
……タクシーを呼ぶなり。
……近くの
バス停や
駅まで送ろうかと。
……思っただけで……!」
と
何故質問したのかを説明した。
その説明を聞いて
少女は
「すみません……!
その……、疑うつもりは……、
無かったのですが……、
一応……、というか……、ですね……?
すみません……。」
「そうですね……。
ここからだと……、
かなり近いですよ……?
私の家は……。」
「なので……、
大丈夫ですよ……。
心配していただき……、
有り難う御座います……。」
と罪悪感でいっぱいな感じで
そう告げた。
ソレを聞いて
男子学生は
「……そうか。
……イヤ、
こちらこそ
申し訳ない。
……ユミの家まで
行くつもりは無いが
途中まで、
送ろうか。」
と尋ねた。
少女は
「いえいえ……、
大丈夫ですよ……?
本当に……、
直ぐ近くなので……。」
と笑い掛けてみせた。
「……そうか。
……なら、
俺はここで行くが、
本当に。
……大丈夫なんだな?」
「ハイ……、
大丈夫です……。
有り難う御座います………。」
「……解った、
気を付けて。
……あと、もし。
……明日になって痛みが
酷くなった場合や、
数日経っても
腫れが引かなかった場合は。
……速やかに
病院に行くように。
……良いな?」
「はい……、解りました……。
わざわざ……、有り難う御座いました……。
本当に…………。
お手数……、お掛け致しました……。」
「では……。
私は……、
これで……。」
そう言って少女は
公園の出口に向けて
ゆっくりと
怪我をした左足を
庇うようにしながら
歩き出す。
その背を見送りながら
男子学生は、
「……ああ、いや。
……気にしないでくれ。
……俺の方こそ。
……要らぬお節介をやく
ような真似をして
申し訳なかった。
……どうか、
気を付けて。
……いずれ、また。
………機会があれば。」
そう告げて
少女が向かった出口とは
逆方向にある出口に向かい
歩き出す。
そうして
少女と男子学生の
奇妙な一時は
幕を閉じたのであった。
如何でしたでしょうか?
このお話で完結とさせていただきます。
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