化け物の治療法
自分らしくなりたいからって、愛想笑いを辞め
た。楽になったといえばそうだけど、誰かと笑い
合うことが、極端に少なくなった。
本当に楽しい時だけ、嬉しい時だけ笑えた。
私の本当の表情を知れたことに、何にも変えら
れないような意味を感じていたはずだったのに。
いつからか、笑顔を作れなくなっていた。
私を笑わせてくれようと話してくれる、可愛ら
しい彼女に笑みを返すことも出来ず、変に口角を
歪め、乾いた笑い声だけが辺りに響き渡っていっ
て。
確かに、彼女の話は楽しくなかった。
彼女に、価値を感じていた訳じゃなかった。
だからって、彼女を突き放した本当の私に、深
く傷付いたのは私自身の心臓だった。
独りよがりの、私という名のオリジナルな化け
物が本当の私、の正体だったのかもしれなかった。
心臓に膿む傷跡の痛みだけが、私が人間である
ことを証明しているようで、だが、そんな僅かな
人間性が宝石みたいに光り輝いて見える私の感性
は、正に化け物のそれだった。
鏡の前で、口角を上げて、笑顔の練習。
今日こそ、彼女に笑顔を返したい。
そうすれば、きっと傷も癒えて、痛みも引く。
痛いのは、嫌いだ。