一夜明けて
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身体を拭いてホッとしたのか、熱がよっぽどしんどかったのか、レオンハルトは身体を拭うと食事もとらずすぐに寝てしまった。
「本当に騎士…?」とも思ってしまったが、初対面のわたし相手に気を許してくれたのだと思うと、ちょっと嬉しい。
きっと、かなりお疲れだったんですね。
それからわたしは夕飯の支度に取りかかり、ご飯を済ませ、レオンハルトの服を洗って暖炉で乾かした。
春先とはいえ夜は少し冷えるので、薪はまだ残っている。臭いがつくといけないので、火からは遠ざけ、ハーブ水で洗っておいた。多少防虫効果もあるだろう。
誰かと一緒に過ごす夜は何年ぶりでしょう…。
一緒に話しているわけでもないのに、家の中に誰か別の人の存在があるだけで、ちょっとした緊張感と、どことない安心感がする。何となく、嬉しい。
暖炉の火を眺めながらボーッとしていると、色んなことが頭に浮かぶ。
今日一日の出来事、レオンハルトの身の上、両親との思い出。
そんなこんなを考えているとウトウトしてきたので、服を着替え、羽織布を持ってきた。今日は、このソファで眠る。
「明日には少し回復しているといいですね」
そう思いながら目を閉じると、すぐに意識が遠のいた。
翌朝もいつもと同じく、陽が昇った頃目が覚めた。
外では鳥の囀りも聞こえる。今日もいい天気のようだ。
「さてと・・・」
起き上がり、ソファで寝ていたことを思い出してついでに昨日の記憶も蘇った。
「そうだ、レオンハルト様」
夜中に一度様子を見に行ったけれど、眠った時と同じ様子だったのでそのまま寝床に戻った。そして、朝を迎えたのだ。
作り置きのハーブ水に少しの蜂蜜を加えると、それを手に寝室へと向かった。ノックをして、中へ入る。
「おはようございます。調子はいかがですか?」
レオンハルトは今の今まで寝ていたらしく、わたしの声を聞いて目を開いた。寝起きの朧げな様子に、つい可愛いと思ってしまった。
人様の寝起き姿を見る機会はあまりないので、こう思ってしまうのは仕方がないです。
焦点が合わずボーッとしていたレオンハルトだったが、わたしの姿を見てハッとすると、今度は本当に目を覚ました様子になった。
「おはよう…ございます…」
昨夜のことを思い出し、世話になったことにドギマギしているのだろう。なんとか挨拶だけが搾り出た。
「おはようございます。身体の具合はどうですか?」
そんなレオンハルトに、わたしはまた問いかけた。
「そう、だな…重かった頭が軽くなっている気がする」
彼はそう答えた。寝起きでよく分からないのかもしれないが、顔色は随分良くなっている。
「良かった。ぐっすり眠られて、喉が渇いているんじゃないでしょうか?これ、喉にもいいと思います。こちらに置いておくので、好きな時にお召し上がりください」
わたしは手に持っていたハーブ水をベッドサイドの小棚に置くと、そのままリビングへと戻る。
それからレオンハルトの服を持って来て、再度部屋に入った。
彼はまだベッドの上に佇まったまま、起きない目を頑張って開いていた。朝が弱いのかもしれない。
「上着、こちらに置いておきますね。これから朝食の準備をするので、ゆっくりされていてください」
その言葉を聞いたレオンハルトはハッと目を開き、慌てた様子でこちらを見た。
「いや、私も何か手伝おう」
そう言って起き上がろうとするので、
「大丈夫ですよ。特別な物は準備出来ないので…」
そう答えた。
街に暮らす彼の口に合うものを作られるかどうか。だから何かを無理に準備するのではなく、いつも通りの慣れた食事を用意するつもりだ。手のかかることは何もない。
「そういう訳にはいかない」
しかし彼は、そう言って引き下がらなかった。
まぁ、逆の立場だったらすごく気を遣うだろうな…。そう思うと、何かしてもらう方が彼にとってもいいでしょう。
「では、井戸で水汲みをお願い出来ますか?力のいる仕事なので、して頂けると助かります」
わたしはそう言って、レオンハルトにお願いすることにした。彼は安心した様子で微笑むと、軽く身支度を済ませたらリビングに向かうと伝えてきた。
そこでわたしは先に戻り、顔を洗ってエプロンを身につけ、朝食の準備にとりかかった。




