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 「あ・・・」

 さて、声を上げたのはどちらでしょう?…わたしです。

 「こんばんは、今お帰りなのですね」

 「あぁ、まぁ」

 「すっかり暗くなってきましたね。あれから一日森で調査をされていたなんて、本当にお疲れ様でした」

 わたしが買い物やら何やらをこなしていた間中ずっと、レオンハルトは森を彷徨っていたらしい。舗装されてなければ人の足で踏み締められてもいない道を歩き廻るのは、さぞかし疲れたことだろう。

 「今日はこの町に滞在されるのですか?」

 そう尋ねると、レオンハルトは少し眉間に皺を寄せた。

 「…いや、宿もとっていないし、これから馬に乗って出発するところだ」

 「これからですか!?」

 驚いた。町の外で夜道を出歩く者はいない。さすが、魔法が使えて剣術にも長けている騎士様は、夜道もお手の物なのだろう。ただ…。

 「レオンハルト様、なんだか顔色が優れませんが、実はかなり疲れていませんか?」

 レオンハルトは無表情のまま、頷きも否定もしなかった。なるほど、疲れているんですね。

 「良かったらわたしの家にいらっしゃいますか?わたし以外誰もいませんし」 

 レオンハルトはすぐに断りはしなかった。よっぽど疲れているのだろう。

 「いや…誰もいないのはむしろ問題だし、出発も遅れてしまうから…」

 レオンハルトは歯切れ悪くもそう答えた。さすがは騎士様。というより、彼の性格なのだろう。律儀だ。

 「では、少しお茶だけでもお召し上がりください。そのままでは馬に乗っても倒れてしまいます」

 どうぞこちらへ、と声をかけると、戸惑いの表情を浮かべながらも、レオンハルトは大人しく着いてきた。

 ――よっぽど疲れているんですね。



 わたしの家はキッチンが続く居間に、わたしの寝室、そしてお風呂や玄関、洗面所などを覗いてもその他二部屋ある。両親が居た頃からこの家に住んでいるので、一人暮らしには少し広すぎるくらいの広さだ。

 居間には4人掛けのダイニングテーブルと、長いソファに1人掛けのソファ、その前に長机が置いてあり、居間だけでもそこそこの広さがある。あまり人が来ることはないけれど、それでも来客時には困らない。

 まぁ、都会に住む騎士様にとっては、手狭いでしょうけれど。


 「上着や荷物、お預かりしますね」

 そう言ってわたしはレオンハルトへ手を差し伸べた。

 「あ、あぁ、お願いする」

 レオンハルトは少し戸惑いながらも、素直に受け応える。そうして荷物を預かる時、ふいにレオンハルトの手が触れた。そして、思う。

 「レオンハルト様…ちょっとよろしいですか?」

 一言断りを入れて、わたしはレオンハルトの頬に手を伸ばした。突然頬を触れられ、レオンハルトは目を見開き、身体がビクリと強張る。それでもわたしは、それからさらに額に手を当てた。

 「・・・熱がありますね」



・・・・・・



 

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