二人の行く手
川原へ下りると、そこには自生のハーブが茂っていた。この辺りの土は川からの水が地下に沁み出ていて、植物が育つのに非常に良い環境になっている。
そんな中で植物淘汰が起こり、自然と強い植物が生き残る。謂わば『競存』だ。
ハーブ、と言えば聞こえはいいが、言うなれば人の役に立つ「雑草」なのである。
ここは日もよく当たり、綺麗な川の水を吸って育つので、植物の状態もとても良い。何を作るにしても、素材の質は重要だ。
わたしはそこからひと束ほどのミントを摘みとり、川の水で丁寧に洗ってからカゴに入れた。ミントには殺菌力があるので、普段飲む水の中に入れておくのだ。
虫除けにもなるため、庭に生えているレモングラスと合わせて焚くこともある。
「今日も素敵な実りをありがとうございます」
川原に残ったミントたちにそう声をかけてから、わたしは帰路についた。
・・・・・・
さっきの少女は、こんな森の中で一人採集など怖くはないのだろうか。
過去の乱闘を知らないのならまだしも、知った上で、まだこの森に入っている。
あの乱闘では町人の1/3ほどが亡くなり、負傷者はもっといたはずだ。話している時の表情を見たところ、仄暗い事情も抱えている。両親は彼女がこの森に来ていることを知っているのだろうか?知っていて許すのか、知らないのか、あるいは、もう知る術もないのか。――
一般的な森がそうであるように、奥へと進むほど大木の葉が頭上に重なり合い、太陽の光が遮断される。
道と呼べるものも次第になくなってきた。この辺りが、森の住民たちとの境目なのだろう。
目に見えて分かる領域など存在しない。曖昧な線引きで、感覚として伝わるものがそこに確かに存在し、意味を成しえるのだ。
曖昧でありながらも、そこには意味を与えるものが必ず存在する。人であるなら文字で表した標識、人外であるなら行動で示した痕跡といったところか―
この先が彼らの領域ならば、騎士であっても、人間である私が先に進む訳にはいかない。ここからはこの領域に沿っての調査になる。
それにしても、この草木を掻き分けながら進まなければならないとは…。気の重い作業だな。
・・・・・・




