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旅路


―町を出てから数時間ほど。

 太陽は頂点に向け上り始め、地上を温めている。始めはワクワクした道のりも、次第に風景が変わらなくなり、はやる気持ちも落ち着いてきた。


「何をやっても、こういうものなのかもなぁ」

 わたしはそんなことをぼんやりと考えていた。何もすることがなく、ゆっくりと乗り物に揺られていると、物思いに(ふけ)ってくる。旅は考えごとにいいかもしれない。

「始まりはとっても不安、それでいて何とも言い難いワクワク感がある。そしてそこからやって来る、ちょっとした疲労感。始めはそれに気づかないけど、だんだん慣れてきて、自分の気持ち、身体のことを見渡せるようになる。そうして、今やろうとしていること、対峙していることに向き合うことが出来る」

 荷台は相変わらず、一定のリズムでコトコトと揺られている。

「わたしは今回の旅で何がしたいんだろう?」

 街へ行くきっかけは、レオンハルトだ。彼が"非日常"を持ち込み、いつもの生活に少しの風が通り抜けた。たったそれだけのことだが、わたしの気持ちは大きく変わった。

 別にレオンハルトを追いかけたい訳ではない。ただ、いつもと違う日常に惹かれて、止まなくなってしまったのだ。

「わたしは元々好奇心のある方だったんだなぁ」

 いつからわたしは今の日常を繰り返すようになったんでしょう。思えば、小さい頃はどこへでも出かけていたかもしれない。

「きっと、あの出来事なのでしょうね」

 わたしの心に焼き付いて離れない記憶がある。わたしは、あれをきっかけに臆病になってしまったのだろう。変わらない方がいいこともあるのだから。

「そんなわたしが何年ぶりにこうして動いてるんだから、凄いことです。目的はいい。せっかくだから、ただ街の空気を味わってみましょう。街へ行くことが、今回の目的…」

 そんなことを考えながら、うつらうつらと閉じてきた瞼に身を任せ、荷車にコトコト揺られる荷物のひとつとなった。


 太陽が天頂に届く頃、進む先にようやく外壁がはっきりと見えるようになった。

 「わぁ、あれが街…大っきい」

 街の外壁は近づくにつれ、全容が分からなくなる。(もっと)も、木々に囲まれているところもあるため、遠目にも外壁全てを映すことは出来ない。

 長い道のりだったが、いざ街が見えてくると、途端に高揚感で体が元気になる。兎の耳が何かを察知してピンと立ち上がるように、気持ちも急に引き締まった。



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