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芽生えたつぼみ

 太陽の起床が少しずつ遅くなり、肌に感じる風も心地よくなってきた。空には瑞々しい鱗を纏い、もう飛翔の心配もなくなった竜が舞っている。

 春も深まり、季節は初夏に近づいてきた。芽吹いた草花たちは見る間に緑を増やし、咲いた花の色味も次第に涼しげな色に変わっていく。

 そんな季節の移り変わりを肌で感じながら、私は今朝も太陽が昇る頃に起き、せっせと朝食の支度を済ませるとペロリと平らげ、町へ行く準備をしていた。

 今日はお買い物の日である。

 私の日常は、基本的に町へ行くか森へ行くか、あるいは家の畑や炊事をするかなのだ。

 そんな4つの選択肢の、今日は町へ行く日なのである。

 「今必要なものは…」そんなことを一人呟きながら、買い物リストを作る。さっきまで覚えていたのに、いざ実行しようとすると忘れてしまう人も多いけれど、かく云う私もその一人。目的地に到着すると、色々なものに(かどわ)かされて本来の目的を見失ってしまうのです。

 「よし、じゃあ出かけますか」

 メモが終わり、家を出る。そうしてまた今日も新しくて、新しくない一日が始まる。そんな日々にふと感じる想いに蓋をして、また今日が始まる。明日も、明後日も――。

 いっそ事故にでも遭えば、魔物でも来たならば、強盗に襲われたならば―。

 そんな考えは、幸せな証だ。実際にそういうことが起こった時に、どんな感情を抱くことになるのか、その出来事から立ち直るだけでもどれほどの年月が必要になるのか、私は知っている。

 だから、そんなことが欲しいのではない。ただ、「平穏であること」を幸せと捉えることもないのだ。

 過ぎ去る日々の中、ふと浮かんではそっと沈み、そうして浮きつ沈みつしながらわたしの感情は徐々に膨れ上がっていく。

 きっと必要なのは、一歩を踏み出す勇気と不安を上回る好奇心。

 ふと過ぎた道を振り返り、小さくなった家を見る。なんてことはない。わたしには、ちゃんと帰る家がある。

 「この気持ちに決着をつけますか」

 そんなことを言いながら、わたしは町へ向けてまた一歩二歩と、踏み出すのだった。

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