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 青空がどこまでも続き、緑穏やかな草原が広がる。

 空には竜の子が嬉しそうに舞っていて、瑞々しい鱗の立派な翼を、意気揚々と広げていた。


 飛行訓練をしているのだ。


 太陽の光は燦々と翼に降り注ぎ、時折銀色の光を撥ね返す。

 その下に広がる草原では、少女がカゴを片手に歩いていた。手を空に透かしながら、眩しそうにその光景を眺める。

 竜の姿に驚くこともなく、にっこりと笑いながら、進む先に視線を戻した。


 「あの竜の子、近々飛び立てそうです」


 少女が満足そうな笑みを浮かべながら歩く先には、広大な森が拡がっていた。

 そこが目的地なのである。


 森に到着すると、少女は早速食べられそうなものを探し始めた。果実にキノコ、香草、木の蜜…。広い森では実りも多く、それぞれに見合った環境下で様々な生き物が競存している。


 そんな豊穣な恵みに感謝しつつ採取をしていると、自分を包み込む影が頭上に出来た。

 少女は知っている。生き物の本能的な勘だが、こう言う時は大抵肉食動物に命を狙われているものなのだ。


 「これはまずいかもしれない…」

 それでも確認しない訳にはいかない。

 その影の正体が何であるのか、確かめた上で対処しなければ。


 決意を固めた少女は、バッと上を見上げた。

 そこに待ち受けていたのは、歪な顔をした生き物だった。

 人と同じ形状でいながら、ゴツゴツとした輪郭に人とは違う緑の目。瞼は垂れ込み、分厚い唇はへの字に曲がっている。


 その見た目だけで少女は慄いた。これほど近くで対峙するのは初めてだった。

 姿を見たらすぐさま逃げるつもりだったが、足が竦んで動けない。


 (わたしは、死ぬんですね…)


 そう思ったとき、その生き物が大きな手を差し出してきた。見れば、その手には小さな花と赤い実が乗っている。

 顔に視線を移すと、笑っているのか垂れ込んだ目が僅かに細くなっている。


 「わたしに、くれるの?」

 人間の言葉が通じるはずはない。でも、思わず尋ねてみたら仕草で伝わったのか、コクリと頷かれた。


 受け取った小さな花は、自分の手に乗せてみるとそこそこ大きく、白くて薄い花びらは光沢があり綺麗だった。

 初めて見る赤い実はどうやって食べるのか分からなかったが、その生き物が実を一つ摘むとヒョイと口に入れた。

 真似して食べてみると、甘くて柔らかい食感が広がり凄く美味しかった。

 少女の表情を見たそれは、満足そうな顔をしているように見えた。

 

 それからその生き物はその実のなる場所に案内してくれて、そこには先程の白い花もたくさん咲いていた。

 「親切にして頂いて、どうもありがとうございました」

 伝わるわけではないが、一応お礼を言って頭を下げると、その生き物は手のひらを向けどこへともなく行ってしまった。


 家に帰って、初めてその実を食べた両親はとても喜んだけれど、心配されそうだったのでその日の出来事は内緒にしておいた。


・・・・・・



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