【第一章】第八部分
「大丈夫か。ケガはないようだが。」
心配そうな信永の顔を見て、光秀奈はさっきとは違う種類の涙が溢れてきた。
「ご先祖様はお願いを聞き届けてくれたんだ。うれしい!」
光秀奈は涙を拭うと、新たな気持ちが顔に表れた。
「ありがとうございました。あのう、あ、あたしは尾張学園の、あけち」
光秀奈が自分の名前を言いかけた時。
「上様~。おねいさんがご所望の菓子を買ってきましたよ。」
どピンクナース服のかつえが、右手に持ったたい焼きを掲げて、走り寄ってきた。
「た、たい焼き!?コワイ、大キライ!!」
光秀奈は悲鳴を上げた瞬間、その場から消えた。
光秀奈はたい焼きが大の苦手であった。その理由はたい焼きの目が死んだ魚の目、つまり自暴自棄な自分の眼にそっくりだ、と思っているからである。
数秒後、と言っても光秀奈の体感した小時間であり、実際の経過タイムはわからない。
「あれ?ここはどこだろう。」
見覚えのない小さな公園に、光秀奈は佇んでいた。
「こんな場合って言ったら、フツー、いつもの自分じゃない自分になってるハズよね?」
光秀奈は両手をパタパタとからだに当てて、状況を確認した。
「あっ!あたし、魔法少女になってる、スゴい!」
光秀奈は変身した自分に、一瞬大歓喜した。
「・ ・・。さっきの魔法少女コスのままじゃない!」
光秀奈はいつもの魔法少女コスのままで、周囲を見渡すと、奇妙な音が耳に障った。
『クチャ、クチャ、クチャ。』
行儀悪くガムを噛んでいる男がいた。
「これはおあつらえ向きに、料理がでてきたな。ちょうど、課金して新しい道具を買ったので、筆下ろしをしようと思っていたところだぜ。かなりの出費になったのは痛かったけどな。またバイトしないといけないな。」
クチャクチャ男は、割と筋肉のついた腕で、拳銃を構えてきた。
『ダンダン。』
2発の銃弾が、魔法少女モンスター光秀奈のお腹にモロに当たった。
「痛い!どうして、あたし、撃たれたの?」
光秀奈を見て、クチャクチャ男は、頭悪そうに、ちょっと首を捻った。
「こいつはこの前のモンスターよりも防御力が高いな。これが上級魔法少女モンスターってヤツなのか。」




