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【第三章】第八部分

ある時、徳川葵ヘゲモニーは将来、引き取り先を紹介すると、言ってくれた。他人の家に行く以上は、相手側のやり方、しきたりに極力合わせていくことが必要だと教えられた。

最初はいろんな性格の子供を演じるのは、お遊戯会みたいで楽しかった。しかし、それは訓練を受入するための、エサだった。甘えん坊、ツンデレ、ヤンデレ、無表情、いつも怒り、泣き虫などいろんなキャラを作り、実践した。

どうしてここまでしないといけないのか、卵丸は疑問に思ったが、その理由はすぐにわかった。『高く売るため』だった。一般的に、女の子の方が成長が速く、その上、卵丸は相当にしっかりした子供で、自分のことや、周りの大人の事情をよく理解し、飲み込んでいた。

「お前はとある名家に行く栄誉が与えられる。しかし、それは候補生のひとりに過ぎないという意味だ。代わりはいくらでもいる。」

卵丸は他人から本当に大事にされたことがない。拾われた卵丸は自分をクローン的な存在だと思っていた。クローンだから、いつでも廃棄される可能性がある。でも自分は自分。『代わりはいくらでもいる』と言われると頑張るしかない。他に選択肢のない卵丸は歯を食いしばって訓練に勤しんだ。


5歳の時、徳川葵から織田家に紹介された。

「思ったよりも『その時』が早く来たな。」

 卵丸はすでに覚悟を決めていたので、あまり大きな動揺はしなかった。

信永の父親である信英の、お稚児さんシュミに応えるべく連れて来られた。だから甘えるのがいちばん。本当は甘えるのは嫌いだったが、お稚児さんシュミに付き合うために、学んだ甘え方を大いに実践した。

ただ甘えるだけではすぐに飽きられてしまう。いろんな性格を持って、臨機応変に対処する。その成果は織田家に行っても生かされた。信英の前では多彩な幼女を演じ続けていた。

成長期になり、さすがに胸をごまかすことは困難になってきていた。中学2年生までは多彩な幼女キャラでカバーしていたが、信英には徐々に飽きられてきた。

徳川は卵丸に対して、『信英がそろそろ飽きる頃だろう。信英に女をアピールするように』と命じた。それは信英の元を離れて、信永へのシフトを意味した。これには心底ホッとした。

卵丸は高校一年生になり、正式に信英から信永に下げ渡された。徳川葵ヘゲモニーは、織田家に卵丸を送り込んだのは、最初からそれが狙いだったが、さすがの卵丸にもそこまでの考えは及ばなかった。

一つ重要なことがある。施設にいた時はなかったものを感じるようになった。それは疎外感である。衣食住がマシになったために、気持ちにわずかにスキマが生まれて感じるようになったのである。

卵丸には、信英に対して特別な感情はなかったが、ゼロということではなかった。信英の許から離れることに、ほんの一抹の否定的な思いがあった。

それ以後疎外感がなくなることはなく、現在にまで至っている。


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