【第三章】第七部分
「やあやあ、みんな、ちゃんと乗ってるよん。よかったよん。この車両は貸切だから、好きなところに座ればいいよん。」
光秀奈たちは、生気を失い、ばらばらと統一感なく動いて、席についた。
「どうしてここにポジションを取る?」
光秀奈はそう思った。
たくさんの空席を放っておいて、わざわざ4人で密を作っていた。
4人は脱力感に溢れることを全身全霊で主張するがごとく、肩を奈落の底まで叩き落としていた。
「「「「「「まるこはぁ、まるこはぁ、」」」」」
5人の卵丸から、わざとらしい甘えた声が聞こえてきた。
『ド、ド』
『ドン、ドン』
『ドドン、ドドン』
『ドドドン、ドドドン』
4人席の8本の足が床を踏み倒している。
安定走行していた車両が震えてきた。
『ニヤリ。』
ひとりに戻った卵丸は表情を変えずに気持ちを声に出した。
孤児だった卵丸。4歳の時、食事も満足に取れない、ボロボロな養護施設から徳川葵ヘゲモニーに連れていかれた。
徳川葵ヘゲモニーは衣食住を用意してくれた。幼い卵丸はそこに感謝し、徳川葵ヘゲモニーのために尽くして生きるしか選択肢がないと思っていた。
施設では大部屋に住み、決してうまいとは言えない粗末な食事を与えられ、服はいつも同じものを着させられていた。それは日常だったので、不満不平があったわけではない。
しかし、テレビを通じて一般人の生活水準はどうしても目に入る。幼いながらも自分の社会的地位は最低ランクだと感じていた。
生活レベルよりも何よりも嫌だったのは、人間関係だった。幼児にも人間関係というものは存在する。人間関係という言葉にはネガティブなニュアンスが含まれている。
施設に来る子供の年齢、入所事情はさまざまである。概して、いやすべての入所者が、大きな問題を抱えてやってきている。そんな連中を一纏めにして、まともな教育ができるはずもない。しかし、施設にいると、まともな教育とか、そんなことを考える余裕はなかった。
貧すれば鈍する。卵丸は、ギスギスしたとかいう言葉では到底表現できない、艱難辛苦の日々を送っていた。




