【第二章】第四十七部分
「たい焼きをふたつ、もらおう。」
(信永会長はよほどお腹がすいてるのかな。)
そう思った光秀奈の顔色がみるみる変わってきた。なんと、危蝶は信永におねだりしている。それも古式ゆかしいベタなやり方で。
「織田信永様。せっかくワタクシにくださるのであれば、こうしてくださいませ。あ~ん。」
危蝶はエサを求める池のコイのように、口を開けている。
「あ~ん。」
なぜか光秀奈もフルフェイスの中で、埴輪のような穴あき顔になっている。
信永は光秀奈のリクエストに気づいたのか、たい焼きをもうひとつ追加しよう、と光秀奈に注文した。
信永は、受け取ったたい焼きをフルフェイスに近づけた。光秀奈は万全の受け入れ態勢を敷いた。つまり顔の部分を開いた。
「あ~ん。」
絵的には、信永はたい焼きを持った左右の手を、危蝶・光秀奈の両サイドに伸ばしている。
光秀奈は、怖いたい焼きを見ないようにと目を強烈に瞑り、匂いを嗅がないように息も止めている。
浮かれた気持ちありありの光秀奈を見た危蝶は、苛立った。
「こんなところにやってきてワタクシの邪魔をしようとするなんて、コシャクですわ。苦手なたい焼きを見ないように、としてますわね。ならばこうやってあげますわ。」
「あっ!織田信永様が服を脱ぎましたわ。」
視覚・嗅覚を閉ざしていた光秀奈は、聴覚が敏感になっていた。
「えっ?信永会長のヌード?見たい!」
視界のガードはあっさりと破られた。当然ながら目の前には天敵の存在。
「た、たい焼き、怖~い!」
『フルフェイス 吹っ飛ばされたら カブトムシ』である。
光秀奈の宇宙服の下は魔法少女コスだった。
「きゃあ~!」
「あ~れ~!」
光秀奈と危蝶は同時に、戦場から消えた。
この場に日吉はいなかったが、宇宙服の下を魔法少女コスにしたのは、日吉のアイデアだった。危蝶と信永のデートがうまくいかなようにセットしていたのである。
「おや、斎藤くんがいなくなったぞ。急用でもできたのか?仕方ないな。しかし、このたい焼きはうまいな。それにしても、好きな女子か・・・。」
信永は口を動かしながら、商店街を後にした。




