【第二章】第四十四部分
「これはマイ升、クックックッ。」
ブキミに笑う日吉は一合升を脇に置きながら、横スリッパに黒いマルをふたつ書いて、さっきと同じ顔の場所に置いた。
「だらしないたれパンダ。」
さらに、スリッパを口に持ってきて、だらしなく垂らした。
「退廃的になった妖怪人間ベロ。人間やめたい~!」
今度はゴソゴソと服を脱いで下着姿になった。
「超恥ずかしいけど、ギャグのためや。」
日吉は、超無防備にも、ブラを外し、代わりに横スリッパで覆い尽くした。
「ビキニ。いや~ん、はみでちゃう~。」
ギャグの瞬間信永が的確なツッコミを入れた。
「それはムリがあろう。隠匿性百パーセントだな。」
「ガ~ン!あかん。ギャグがスベッたんか。」
真の原因はギャグではなく、はみ出なかった胸部サイズが悪いのであったが、置いておく。
信永は仙人のような無表情のままで、一句。
『しずけさや 岩に染み入る セミヌードの肥え』
「ウチのギャグはセミの排泄物か!」
叫んだ瞬間に、日吉はモンスターとして転送されたのだった。
「これで邪魔モノをサル山に送り込むことができましたわ。ギャグがスベッたのは、ワタクシの成果ではじゃないにしても、事実ですから、第一の条件はクリアしました。さあ、次は聴診器ミッションですが、こんな古びた商店街に、病院はあるのかしら。」
危蝶はシャッター街の中を慎重に睥睨したら、なんと『靴のはしば』の前に、患者椅子が置いてあった。
(上様を患者椅子に座らせるのは、おねいさんだけなんだよ。これは条件反射。上様は患者椅子を見ると座ってしまうように、長い年月をかけて、おねいさんが仕込んだんだから。)
かつえは、日吉がいた郵便ポストの影からこっそりと様子を伺っていた。
「これは、羽柴さんが立ててくれていたプラン通りですわ。あの世をさまよう羽柴さんに感謝です。豊島区ナースには負けませんわ。信永様、あそこで2時間4千円の休憩をいたしましょう。」
患者椅子使用が有償なのかどうかは不明である。危蝶が話している間に、信永は患者椅子に深く腰かけていた。




