【第二章】第四十三部分
日吉がいることに危蝶が気づいているのかいないのか、わからないが、危蝶はギャグを始めた。
「ヲタノブナガとパシリヒヨシのスリッパの話をします。これは冬のとある寒い日のヲタ屋敷での出来事ですわ。」
危蝶は胸からスリッパを取り出した。
『信永様、これを暖めておきましたで。どうぞ。』
『どれどれ、よく暖まっていて心地よいぞ。ほいほい♪』
「信永様は、いきなりヲタ棒を取り出して踊り出しましたわ。」
『信永様、それはスリッパではあらへん。ウチのパンツやで。は、恥ずかしいからスリッパって、言うただけや。そのパンツをそんなところに着けんといて!』
「信永様は、ヒヨシの日の丸柄パンツをアタマに被って、永遠にヲタ芸を続けましたとさ、ですわ。ちゃんちゃん。」
「こんなの、事実やあらへん!」
日吉はポストの裏から、ナマハゲのように飛び出した。
「誰ですの。って、羽柴日吉さん?」
日吉の闖入にも信永は冷静だった。
「事実と違う?これはただのギャグだろう。羽柴くん、今の寸劇に何か苦情でもあるのか。」
「い、いやなんでもないです。ギャグは常に事実とは異なるもんやと、言いたかっただけです。事実はギャグより気になるだけでおます。」
「ふん。そうか。」
信永はジト目を日吉に照射した。
「痛いで!」
わざとらしくズッコケた日吉。
「お笑い芸人らしいリアクションだな。気に入った。」
すかさず、日吉は反応した。
「スリッパ使った一世一代のギャグを見せたるで!」
日吉は便所スリッパを立てて、胸の前に持ってきた。
「聖徳太子、令和バージョン。」
次に、日吉はスリッパを横にして顔に当てた。
「スー、スー、スヤスヤ。隠し面積デカいアイマスク。」
日吉はどこからともなく、一合升を取り出して、口許を緩めた。




