【第二章】第四十一部分
危蝶と信永は商店街の中に入っていった。危蝶が前で、その後ろに信永が追随する形で、デートというには演出不足である。
ほどなく危蝶が、下りたシャッターの前で、足を止めた。
「ここが靴のはしばですわね。」
日吉は、先日危蝶にこう話していた。
「その店の前には人が歩いてへんから、ギャグやるのにちょうどええ場所や。店の名前は、『靴のはしば』や。」
「はしば?どこかで聞いたような。まあどうでもいいですわ。」
信永は店舗廃業の張り紙を顎に手を当てて見ていた。
「さあ、いよいよですわ。スーハー、スーハー。」
危蝶は深呼吸して気持ちを落ち着けようとした。
「1度では深呼吸の効果がないみたいですわ。スーハー、スーハー。もうちょっとかしら。スーハー、スーハー。うっ。ちょっとお腹に力を入れ過ぎました。直腸の火山が糞火しそうですわ。」
危蝶はトイレに行きたいのだが、初デートの初っぱなでそれを言うのは、オトメにはあまりに酷なことであった。
危蝶はどうしようもなくて、しかめた顔でモジモジしていた。
信永は、危蝶の様子を見ることなく、公衆トイレの近くに歩いていった。
危蝶は足を閉じたまま、歩きにくい状態で、カニのようについていった。
「これは、織田信永様はわざとトイレに連れてきてくれたんですわ。すぐそこにコンビニがあります。『じゃあこのあとはコンビニに行くから、ちょっと待っててくれ。』というセリフが来ますわね。」
「斎藤くん、ちょっと、ここで待っていてくれ。」
「キマシタワー!」
「ちょっとお寺にいく。」
「ガクッ。」
大仰にツッコミ倒れをした危蝶。
「どうしてお寺ですの?」
「そこを軽く滅ぼしてくる。」
信永の行き先は、歴史上、有名な石山ホンバン寺だった。




