【第二章】第四十部分
「ハックション。風邪かな?」
岐阜県在住の義父には、どんより空気のほんの一部が到達した。
「デート場所は斎藤くんが決めてくれ。」
そのまま、信永はかつえとともに屋敷に戻った。
残った日吉と光秀奈がブツブツと井戸端会議をしていた。
一方の危蝶は、しばし思案していたが、突然立ち上がって、大きな声を出した。
「デートコースを考えましたの。場所として適しているのは、病院、たい焼きや、ギャグのできる広場のあるところです。しかし、岐阜県出身のワタクシはそんなところ、知りません。困りましたわ!」
日吉はその言葉を聞いて、ニヤリと猥雑な口を見せた。
「それならウチに任せてんか。地元民やからな。」
こうして、件の日曜日はすぐにやってきた。みんなにとって、来てほしくない日ほど、スピード感を持って立ち向かってくるものである。
晴れの日曜日の公園前。噴水が明るい光を浴びて、虹を作っている。
危蝶は、50メートル弱離れた電柱の影に隠れて、噴水前の様子をウォッチしている。
「あら、ちゃんと時間前にやってきてくれてますわ。あっ、織田信永様が時計を見ました。時間を気にしてますわ。この焦らしがいいと、デートハウツー本に書いてありました。さあ、全世界動画満場一致で、ワタクシの出番ですわ。」
シルクの白いシャツに、茶色のズボンの信永がベンチに座っている。
「お待ちになりましたか?」
「いや、そんなことはない。5前に来たばかりだ。」
「いえ、4分42秒前ですわ。」
「正確性がずいぶんと高いな。まるで、ここから42メートル42センチ離れた場所から、オレを見張ってたような感じだな。」
「そ、そんなことありませんわ。ホホホッ、ペッ。」
口からワタクシの何かを吐き出してごまかした危蝶。
薄いピンク地に花柄のワンピース。膝上10センチの絶妙な長さのスカート部分。小さな蝶が無数に舞っており、お嬢様にふさわしいコーデである。
「これからいったいどこに行くのかな?」
「こちらの方向ですわ。」
ふたりが向かったのは商店街の壊れた箇所の修理をしていないアーケードだった。
「ここで買い物でもしようっていうことなのかな。しかし、あまり若い女性が買うようなものは売ってなさそうだが。」
「そんなことはありませんわ。こんな商店街だからこそ、楽しめることがあるのです。お宝などあるかもしれませんわ。売っているのは、一物とは限りませんから。」
「イチモツ?」
「いや、物とは限りませんわ。ホホホ~ッ。」




