【第二章】第三十四部分
危蝶は、まさに蝶のように不規則な動きで信永を幻惑しながら、巧みな手使いでパチンコを打ち出す。
『ビュン、ビュン』という見た目とは違う勢いで、次々とパチンコが信永目掛けて発射される。
カッと見開いた目を座らせたまま、からだを的確に動かして、すべてを避ける信永。
「完璧に合格ですわ。こんな殿方、見たことありませんわ。特定部位が感服しましたわ。」
「それは攻撃本能というところだな。誉め言葉として受け取っておこう。今度はこちらの番だ。」
「あら、番台に上がりたいんですの?まさか、ワタクシの入浴シーンをガン見したいとか。」
「それはもうちょっとあとに置いておこう。それよりも、仮面でよく顔が見えない。それを取ってもらおうか。」
「わかりました。父親の前でもこの仮面は外しません。ですが、信永様には初めてを捧げましょう。」
危蝶は肌色のボンデージ姿になった。制服を脱いでいたのである。
「取るのは制服ではない、仮面だ。」
さすがの信永も少々顔が赤く変わった。
「あっ、間違えましたわ。」
危蝶はもったいつけるように、ゆっくりと仮面を外して手に持った。
わずかにつり上がり可憐だが、美しさ妖艶な瞳が長い黒髪に実に似合っている。何よりもツヤツヤの長くて赤い睫毛が頗る魅力的である。
「これは見たことない美しさだ。美の極致、ミロのヴィーナスもダッシュで逃げ去るようだ。」
信永は観音様を拝むように、手を合わせてウットリしていた。
「上様のからだはおねいさんが解剖するまで、誰にも奪わせたらダメなのに。ムカッ、ムカッ!」
「おかつ、神聖なる生徒会室で騒ぐのはやめろ。」
「はい、かしこまり、ま・し・たっ。上様。」
かつえはクチビルを噛み締めて、精一杯のガマンをした。
「診察の準備でもして、気を落ち着けるんだな。」
「はい、上様。そのように。」
「いい気味ですわ。そのまま腐れた自分のことをケアすればいいですわ。ホーホホホッ。」
「クソ、ヘンタイ・スケベオンナが。」
信永の後ろに移動したかつえはブツブツ言いながら、診察用の額帯鏡を頭に付けた。




