【第二章】第三十部分
「実に変な格好、あなたはヘンタイですの?」
「ええっ?危蝶さんに言われたくないですけど。」
「何をおっしゃいますの。こんな清楚な純情制服、他にありませんことよ。」
「それのどこが清楚なんですか?」
「上から下まですべてが清らかそのものじゃありませんか!」
「全然、わかりませんよ!」
危蝶の清楚に関する感覚、感性は一般常識とはかけ離れたものであった。
幼い頃に父親から溺愛されて、世間から隔離された超箱入り娘だったのである。
危蝶が思春期入りしてから、急激に性的な知識を詰め込まれた結果、極めて片寄った女子に育ってしまったのである。さらに、父親との反目もこの頃に始まっていた。
ふたりは共に肩で息をするようなファイティングポーズで、今にもバトル開始となりそうである。
「どちらが清楚かのバトルですわ。」
「あたしは別に清楚なコスを目指してないけど、ヘンタイには勝てるもんね。」
珍しく光秀奈は自信を持っていた。
「ワタクシが負けたら校外に出ていく、あなたが負けたら二度と学校の門をくぐらないという条件でどうでしょう。」
「それって、同じような条件みたく見えるけど、あたしが負けた時に退学なんて、酷すぎませんか?」
「でもここはあなたのフランチャイズ、判定はここの生徒さんたちの拍手の量で決める、でいいですわよ。」
それなら、と光秀奈はあっさり受諾した。
こうして、コスプレバトル開始の笛が鳴った。
『ドタドタドタ!』
「あれは無数のイノシシだわ~!」
聴衆に激しい恐怖と動揺が走った。
「あれはイノシシじゃないわ、ブタよ!」
野球帽を被った無数のカメラ小僧が、どこからともなく集まってきたのである。
『カシャ、カシャ』
不快な音が耳に突き刺さり、大半の生徒たちはすっかり引いてしまった。
現在のコスプレバトルエリアは、ブタどもが円形に取り囲む、いかにもおぞましい舞台と化している。ブタどもは血走った目で、光秀奈と危蝶に超接近し、その胸元を覗きまくっている。
「こ、こわい。不逞の輩の集団、これはテロだよ、地獄絵図だよ!」
コスプレには慣れている光秀奈も、こんなシチュにすっかりビビってしまった。
そんな光秀奈に反して、危蝶は眉ひとつ動かすことはなかった。
「ワタクシを見るのはみんなブタですわ。ブタの愛はプラトニックラブホですわ。」
『パシャパシャ、パシャパシャ』
「こんなの耐えられないよ。もう無理、ぜったいムリ!」
ブタどものローアングル連写に耐えられない光秀奈は、コスプレを聴衆に訴える前に、敗戦を認めた。




