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【第二章】第二十七部分

「今のは何だ。一瞬人影が見えたような気がしたんだが。」

信永は部屋をくまなく見渡したが、どこにも痕跡はなかった。

「おや、これはなんだ?」

足元の畳の一部が七色に光っていた。信永が畳を触ると、粉が指に付いた。信永は眉間にシワを寄せて廊下に立ったが、何も見つからなかった。

女子三人がいなくなり、合宿はなんらイベントを行うことなく、終了してしまった。


【第三章】


岐阜県県庁所在地の駅前一丁目一番地の一等地に20階建ての黒い偉容を誇示するビルがある。これは、岐阜の『斎藤スリーロードエナジー』という大会社である。この地方では最大の企業で、県内のガソリンスタンドのシェアは80%を誇る。

最上階は全フロアが社長の自宅である。

リビングと言っても教室クラスの広さがある。そこにふたりの、正装した姿が見える。

日当たりは良すぎて、閉められたブラインドで顔が見えない。中年男性と高校生ぐらいの少女がいるのはわかる。男性は高級ブランドの紫色ダブルスーツ、少女は、光沢が華麗で眩しそうなドレスだが、ブラインドの影で、顔、からだがよく見えない。

「お父様。ワタクシはどうしても尾張学園に転校しなきゃいけないんですの?」

「そういうことだよ、きっちゃん。パパの会社は所詮地方のトップ企業。しかし昨今、織田石油が愛知県からの岐阜県への商圏拡大を目指しているんだよ。正面切っての戦いも選択肢のひとつではあるけど、企業体力ではわが社には勝ち目が薄い。社訓であるスリーロード、つまり3つの道である『林風山』が、先代より示されているよ。『林を薙ぎ倒す如く殲滅せよ、風の如く迅速撤退せよ、そして、山のごとく動かずして調略せよ』、だよ。きっちゃんのおじいちゃんは、小さなガソリンスタンド一軒のみのオーナーで、油売り商人だった。周囲のライバル企業との競争に艱難辛苦の日々を送る中で、社訓を作り、パパに託した。パパは父の教えを忠実に守って、地域で地盤を拡大して、岐阜県の大半を手にいれて、今やこの城たるビルを持てるまでになったんだよ。」

「お父様、ワタクシに説教なさる時、いつもその話ばかりして。もう聞き飽きましてよ。それにお爺様の『林風山』って、武田信玄のパクリじゃありませんか。二番煎じも甚だしいですわ。2本同時にパクリするのは難易度高いプレイですのよ。」

「パパはママにそんなプレイ求めてないし、って2本ってどういう意味?それより、林風山って、林羅山っぽくて、アカデミックじゃない?とにかく今のマーケットシェアを維持するためには、隣県の織田石油との良好な関係を築くことが重要なんだよ。実は織田石油の御曹子と危蝶の縁談の話を内密に進めているんだけど。」


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