【第二章】第二十五部分
「頂点は取っておくよ。」
「えっ。・・止めるんや?これって、欲求不満?いや違うわ。こうなったら、奥の手や!『おかん、おかん。冷やし中華どこにあるんや?』『冷蔵庫の中やで。』『ああ、冷やし中か。』・・。見事にスベッたわ。」
頂点を極められなかった日吉は、脳内スベリをイメージして、ガマンした。
「あかん。おかんのこと、思い出してもうた。コイツはおかんのカタキの一派や。」
日吉は、ギャグのスベリ以上の感情で、感部衝撃を打ち消してしまった。
「羽柴さん、現実に戻りな。診察はまだ終わってないよ。ほらほら。」
かつえは聴診器を日吉のお腹の方に持っていった。
「そ、そこはやめてんか!」
「よいではないか、よいではないか。」
悪代官山のカリスマアパレル販売員になったかつえ。
「そこはダメや~!」
「おやおや、お腹の下に小さな突起物があるよ。いったい、なんだろうねえ。」
かつえは日吉の浴衣をはだけようと手をかけた。
「ダメや、ダメ、ダメ、それだけは見せたくないんや~!!」
日吉は暴れて、両腕をブンブン振り回した。すると、自分に当てられていた聴診器が、かつえの胸部頂上に到達してしまった。
「あ、あはん。久しぶりに噴火!」
かつえの噴火音は、聴診器を通じて、自分に跳ね返った。
「うわわ~!」
どピンクナースの姿は、部屋から消滅した。
「勝ったんか?びっくりしたわ。現実世界から消えたところを見ると、オバチャンも魔法少女モンスターやったんやな。」
患者椅子で待ち伏せしていると、落ち着いた足音をさせながら、信永が入ってきた。
「つ、ついに来た。これでウチの念願が果たせる。」
テンション上がった日吉の気持ちには、すぐに雲がかかった。
「でも、笑い殺すって、どんなギャグやったら、ええんやろう。ドキドキ。」
日吉の動揺は、椅子に伝達されてガタガタ震えてきた。
『ツカツカツカ。』
信永の足音は、犯人を追い詰めるベテラン刑事のように、日吉の耳のすぐそばまで忍び寄ってきた。
「き、来た~!」
日吉は脳内で甲高い悲鳴を上げた。
「昔、『信永様、椅子を温めておりました。』って言ってたんだよな、羽柴くん。」
「そ、それは昔のウチ!信永様、覚えていてくれたんや。」
日吉の緊張が解けて、余裕の虫が頭を出してきた。
(よし、信永様を笑い殺したるで。その前に、これやな。)
日吉は信永の御前として畏まった。




