【第二章】第二十四部分
「あら、明智さんは散歩にでもいったのかな。」
かつえはわざとらしく笑顔を作ってみせた。日吉も同じような表情に同期した。
「さあ、ひとり掃除を済ませたで。次は難攻不落やが、今度はお笑いで成功し、その勢いで、本丸会長に臨む覚悟や。笑い倒すには、落語の高座のようなステージが必要や。それを探さんとな。」
「立ったままも、なんだから、こっちの部屋に移動するよ。」
廊下を少し進むと、左の障子が開いていた。
「おっ、お誂え向きのモノがあるやんか。」
日吉の視線の先には、患者椅子があった。しかも信永は座っていない。
「どんな座り心地なのか、試してみよか。これこそ生徒会長、いや帝王、切開の椅子なんやから。解剖したがるはずや。おっ、これってリクライニングやんか。」
椅子を背中で動かして、座り心地を堪能している。
『ピカッ!!』
「痛いぐらい眩しい!」
日吉の顔は、レーザー光線のような圧力で金色に変わった。
「上様の椅子に勝手に使うのはよくないよ。でもちょうど診察の練習をしたいと思っていたところなんだよね。キラン。」
闇がかったピンクの影が日吉の顔を覆い尽くした。
「ギクッ!あわわ。」
日吉はナース服のかつえの眼力に、すっかり萎縮してしまった。さらにシートベルトで拘束された日吉。
「おねいさんが診てあげるから、『感部』に触れたら、合図するんだよ。」
「それって、フツーは『患部』やないの?」
「『感部』概念集合体に『患部』は砲丸されてるから大丈夫だよ。」
「砲丸って、丸投げやないか!ってツッコミしてもしゃーないか。患部に来たら右手を上げるんやな。」
「あはん、と言うんだよ。」
「恥ずかしいで!」
「でもからだは正直だからね。きっと言いたくなるよ。」
かつえは頬の筋肉を右に吊り上げている。
かつえは聴診器を日吉の首筋に、豆腐に触れるように当てた。
「ひゃっ!」
「いい声だねえ。こんなところも感部なのかな。ひひ。」
「ち、違う。冷たかっただけや。」
すでにじんわりと涙目になっている日吉。
「よし。じゃあ、感部候補生を募集していくよ。」
「そんな候補生にはなりたくないで!」
「感部候補生と言えば、この部位だよね。ダイジョウ部位!」
かつえは、日吉の中軽量級膨らみに聴診器を当てた。
「あ・・っ。」
日吉は、汗を濁流のように流して、歯を食いしばった。




