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【第二章】第十二部分

こうしていきなりオーディション開催の案内ポスターが校内中に張り出された。

『募集要項

生徒会の戦力強化のため役員募集を行う。条件は、セレブかそれに準ずる生徒でエンタメ特異な者。以上。』

掲示板の前で、光秀奈と日吉が、エサを待つカメのような首をして、立っている。

「ずいぶんとぶっきらぼうな募集要項だね。」

「特異?つまりノーマルな芸人じゃダメいうことやな。」

「その前に、日吉はセレブなの?」

「セレブやあらへん。でも秘策があるねん。」

日吉は意気揚々と安アパートに戻り、2階への錆びた鉄製の階段をカンカンとうるさく鳴らした。

錆の取れないドアノブを捻って、ドアを開くと、部屋の奥に向かって大声を出した。

「あんたの出番や!」

奥の黒い影が日吉の言葉に反応して、幽霊のように、ゆっくりと不気味に動いた。


日吉も魔法少女モンスターをやっているということは、願いを持っている。日吉は金を稼ぎたい、そのために芸人になる、芸人になることが日吉の願いであった。


日吉の実家は商店街の零細な靴修理屋。父親は早世し、経営と家計は厳しかった。ゆえに日吉は子供の頃から、織田家に靴磨きとして出入りしていた。

「おかん、今日もしっかり働いてきたで~。」

商店街の壊れかけたアーケードの一角に、靴のはしばがある。

1階が店舗、2階が居宅という、商店街にありがちな佇まいである。『靴の修理、なんでもやりまっせ!』という、傾いて汚れた看板が目に付く。

1日働いて五千円というバイト代を母親に渡した中学1年生の日吉。

仕事、学校からの帰宅に関わらず、母親は屈託のない笑顔で、日吉の黒い髪を撫でてくれていた。靴職人の汚れた手袋を目の前で脱いだ上での、優しい手触りであった。日吉はそれが何よりのスキンシップであり、家に帰る時の大きな楽しみであった。

しかし、この日の母親はいつもと違っていた。

「今日もよく頑張ってきたな。って、誉められるとでも思ったら大間違いやで。」

眇めた目をした母親は、現金入りの封筒から中身だけ取り出して、外側を光秀奈の顔に投げつけた。母親はよれた赤いジャージ姿で、髪も乱れている。

「たったこれだけ?もっと稼がないと、借金返済には全然足りないんやで。」

「おかん、我が家は経営がきびしゅうて、借金がかさんでるんか?」

「いや、そんなことはあらへん。大して儲からん商売やけど、収支はトントンぐらいやな。」

「えっ?じゃあどうして借金があるねん?」


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