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【第二章】第三部分

書類処理の山は、意外に速く平坦になった。

「やった、終わったよ、信永会長。やり方を教えてくれなかったのは残念だけど、あたしやったよ。あれ?会長がいない。」

信永は音もなく退出していた。

「殺されそこねたけど、終わってよかった!」

光秀奈は意気揚々と帰宅した。

さっき、信永はわざと見えるように両腕を広げていたことに、光秀奈は気づかなかった。


翌日、かつえは光秀奈の処理した書類を見て、特に表情を変えることはなかった。ただ、腹をポン、ポンと叩いただけだった。

かつえは、昨日とは異なる書類を光秀奈に渡したが、今度は確認方法をしっかり教えていた。

信永はいつものように患者椅子に座って、かつえの手当てを受けていた。特に持病があるようにも見えないけど、と光秀奈は思ったが、口には出さなかった。

こうやって信永と一緒の空間にいると、殺されたいというのとは別の感情ができているのを意識する光秀奈であった。

かつえは患者椅子から離れて、生徒会室の奥に行って、しばらくしてからワゴンを押して戻ってきた。

「ちょっと休憩をいれるよ。」

「えっ、この実に嫌な甘ったるい臭いは。」

光秀奈はニオイに反応した。臭いという文字を使う場合は悪臭的ニュアンスである。

「おお、いい匂いがするな。今日のは、焼きたてホヤホヤだな。」

ニオイにつられて信長が患者椅子から立ち上がってきた。

かつえは、光秀奈の苦手なたい焼きをおやつとして出してきたのである。かつえは幼児におやつを出す母親のように、ニコニコ笑顔を全面展開している。

「ねえ上様、たい焼き嫌いな人は、世の中にいないはずですよね。」

「それはそうだろう。オレなんか、物心つく前から、たい焼きだけは大好物だったからな。」

「さすが上様。ねえ、明智さんもそう思うでしょ?」

かつえはこれみよがしに光秀奈に卑しげな笑顔オーラを送った。

「は、は、はい?」

光秀奈は、これ以上の単語で声帯を震わせることができなかった。

「あ~ら、明智さんったら、ずいぶんと食いしん坊さんね。そんなにたい焼きが好きなら、特別におねいさんがおいしくなる魔法をかけてあげるよ。おいしくなあれ、おいしくなあれ。ほ~ら、おいしくなったよ。」

魔法使いのお婆さんのような手つきを披露したかつえ。


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