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【第二章】第一部分

放課後になり、光秀奈は何事もなかったように、生徒会室の前に立っていた。

「このまま入っていいのかな。ひとりだけだし不安だよ。でもここに入らないと、信永会長に殺してもらえないしなあ。」

『ポン、ポン。』

「小鼓の音がするよ。中で歌舞伎の公演でもやってるのかな。」

光秀奈がドアをこそっと開いて中を覗くと、かつえがお腹を叩いていた。

信永は不在で、患者椅子である生徒会長席から少し離れたところにある副会長席に、足を組んで座っているのは、かつえである。

「副会長のお腹スゴいね。脂肪分タップリで栄養十分だね。」

「目が悪いのかい?眼科に行きな。これは筋肉だよ。ポンポン。」

「あっ、そういうことにしておくね。副会長もいちおうオトメなんだろうから。」

「ムカッ。そんな軽口をきいたことを後悔させてやるよ。てか、軽口重口、関係なく後悔するだろうけど。さあ、生徒会の仕事だよ。」

「生徒会の仕事って、そんなことをしに来たわけじゃない・・・ってことはないか。」

クビを捻っている光秀奈に、かつえはドサッと書類の山を渡した。

「さあ、明智さん。各部活から出てきた予算申請書の処理をするんだよ。これが終わったら帰っていいよ。あっ、今日、上様は所用で帰宅済だからね。おねいさんもこれで失礼するよ。」

かつえはそそくさと退出してしまった。

「申請書の処理って、いったい何をするのか、どこをチェックするのか、皆目見当がつかないよ。」

入学したてで、部活にも入っていない光秀奈に、部費予算確認などできるはずもなかった。

「全部見終わったことにするのも選択肢のひとつ。でもそんな無責任なことをしたら、生徒会にいられなくなるし。」

光秀奈はそのあたりは気真面目な生徒だった。気真面目ゆえに課題を与えられると、どうしても終わらせようとしてしまう。気真面目な人間が、ストレス地獄に陥りやすい原因のひとつである。

「困ったよう。いったいどうしたらいいんだよう。途方に暮れるっていうけど、途方って何?」

「明智さんは、こんな風に、困惑のどしゃ降りに遭ってるだろうね。ポン、ポン。」

かつえは織田家専用車の中で、わずかに頬を緩めて腹を叩いた。

何も知らない光秀奈に対して時間を切ってやらせる、しかもやり方を教えない。イジメのネタなんて、あちこちに転がっているものである。


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