【第一章】第二十部分
『ガラガラ!』
いきなり教室のドアをぶっ壊すような勢いで開いた日吉。
「これから桶狭間テストをやるで。」
「桶狭間テストって、いったい何をする気?」
「カンタンや。みんな、大発表するから、耳かっぽじいて、聞いてや。」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「何だ、何だ?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
クラスメイトたちは突然の宣言に、理解不能な空気に包まれた。
「ほれほれ、教壇に立たんかい!」
日吉は、光秀奈の背中を親の仇のごとく、力一杯押した。
「あわわわ。」
光秀奈は、きれいな瞳をコマのようにぐるぐる回している。
「さあ、この紙に書いてることを読むんや。」
いきなり人前に立って一言喋れるほど、光秀奈の精神力は強固ではない。
「あわあわあわ。」
すでに阿波の守になって、自己防衛を図ろうとしている光秀奈。
「早く読まんかい!」
「わ、わかったよぉ。あたしは、信永生徒会長が大好きです。」
騒がしかったクラスは一瞬で静寂の境地。
30秒後。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「なんですって~!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
クラスの3分の2を占める女子が異口同音にクレームを上げた。さらに女子全員がコンパスや定規、中にはカッターなどの凶器を手にして、光秀奈ににじり寄った。
「うわあ~!」
窮鼠はネコを噛むなんて、都市伝説であり、光秀奈は日吉と共に猛ダッシュで逃げ出した。走りながら光秀奈は日吉に言葉を投げ掛けた。
「いったい、何が起こってるのよ?いや、怒って追いかけられている状況はなんとなく理解できるけど。」
「それで十分や。これぞ、難敵を召喚する桶狭間テストや。」
光秀奈たちは告白の聖地である校舎裏に追い込まれ、取り囲まれた。
「ど、どうしよう。みんなすごく殺気立ってるよ。」
「嫉妬は乙女としてのたしなみやから、仕方あらへん。」
「それはそうかもしれないけど、生命の危機を感じるよ。」
女子生徒たちの握ったコンパス、定規、カッターという凶器集合体が太陽の光を浴びて、殺戮オーラを満タンにして輝いている。
「あたしは殺され志望Aランクだけど、それは信永会長にとってるんだから。」
「「「「「「「「「「「「私たちだって、夜に会長に死ぬほど愛されたいのよ!」」」」」」」」」」」
光秀奈の呟きは、女子生徒たちにはダイレクトに届かず、むしろ火に油を注ぐ結果となりつつある。
「しゃあないなあ。ウチもまだ命が惜しいし。やらなきゃならぬことがあるんやからな。光秀奈、これを見な。」
日吉の手のひらに乗っているのは、たい焼き。ホカホカそうに湯気を振り撒いている。
「きゃああ~!たい焼き!?コワ~イ!」
光秀奈は、悲鳴と共に、忽然と姿を消した。
「やっぱりな。」
日吉はニヤリと口の端を吊り上げた。




