【第一章】第十二部分
「大抵の女子は、オカマモードの上様にびびってしまうよ。でもオカマモードはあくまで一時的なもの。もし上様とお付きあいということになれば、やがては織田石油グループのファーストレディのポジションがほんわずかだけど、視界の隅っこに入るからね。大抵の女子はガマンするよ。明智さんはどうするのかな?」
光秀奈はゴクリと唾を飲み込んだ。
(今の信永会長はどうみても、ただのオカマ。あたしのタイプじゃない。でも他の誰かと入れ替わったわけじゃない。信永会長そのもの。その人が、こんなあたしにキスしようとしてる。他の女子は受け入れしてる?それ自体は気になるけど、みんなやってることなんだ。こんな機会はもうないかもしれない。信永会長に殺されたいという気持ちにウソ偽りはない。どうせ殺されるなら、キスのひとつやふたつ。)
光秀奈の目は、まっすぐにオカマモード信永を見ている。
「おや、いい顔をしてるね。覚悟を決めたようだね。」
かつえの緩んだ口の端は、さらにつり上がった。
オカマモード信永は、すでに目を瞑って、万全の受け入れ態勢を整えた光秀奈に、邁進していく。光秀奈の心臓は激しく動悸していた。
(く、来るよ。あたしは、彼氏いない歴が年齢。でもみんなヤってるんだったら、これぐらい、なんてことあるけど、ないと思い込むよ!)
両者の唇は、どんどん間合いを詰めて、大接近。そして、『ブチュー!』
「こんなのダメ~!ドカッ!」
光秀奈はオカマモード信永を突き飛ばした。
信永は元の患者椅子に無事復帰した。
「チッ。やっちゃったねえ。もうこんなことになるなんて、もったいないったら、ありゃしない。」
かつえは、さんざんゴマを擦った上司に裏切られたサラリーマンのような顔になった。
「あたしは生徒会に入れなかったんだ。ガクッ。」
光秀奈は両肩を落として、生徒会室の出口に足を進めた。
「待ちなよ。合格だよ、合格。」




