【第一章】第十部分
かつえは、白い制服を着ている患者のところに歩いていき、聴診器を当てるような仕草をした。
「上様。おからだの具合はいかがですか。おねいさんの見立てでは、下腹部にエネルギーが蓄積しているように見えますけど。パンパン。」
かつえは、にやけながら、お腹を二度叩いた。その勢いで、光秀奈は耳に痛みを感じた。
「おかつ。いちいちうるさいぞ。聴診器を当てるんじゃない。」
患者は気だるそうに、ゆっくりと首を捻って、光秀奈の方に顔を向けた。
『ピカピカ!!』
患者から激しいフェイスフラッシュが放たれて、光秀奈は思わず目を両手で覆って口から言葉がこぼれた。
「スゴい。美しいよ、美し過ぎるよ~。」
「あ~ん。上様~。」
かつえは恍惚とした表情に変貌し、気絶した。
「君は、この前の織田石油主催のイベントに来ていたコスプレイヤーか。」
憧れの信永に会えて、光秀奈は心拍数が異常に高まっていた。
(何を話したらいいのか、わからないよ。『殺され』の依頼って、どれだけ費用がかかるのかな。)
憧れの人に会うには、不純過ぎる動機であった。
そんな光秀奈を横目で見た信永は一瞬ドキッとするが、そんな気持ちを表に表すことは避けた。
「よく来たな。1年生、明智くん。」
(あたしの名前を知ってくれているんだ。なんか、うれしい。)
信永は光秀奈の方に顔を傾けて、4分の1を視野に入れた。
中途半端な信永の視線が光秀奈を落ち着かせた。光秀奈は、自分の気持ちよりも現実的な質問に逃げた。
「あたしは、どうしてここに呼ばれたんですか?」
「生徒会が人手不足だからな。」
「生徒はゴマンといるでしょう。そんなことってあるんですか?」
「人手不足は社会現象だからな。生徒会の入会希望者は多いが、実際に入会となると、大抵尻込みするようなんだな。」
『それでも、どうしてあたしなんですか?』という言葉を光秀奈は伏せた。
(コスプレイベントだけじゃなくて、ご先祖様へのお願いは、コスプレイベントだけのたまたまじゃなく、本当に通じたんだ。)
すごくうれしくなって光秀奈は胸の前で手を組んでの瞑想ポーズを自然に取った。




