俺は悪徳奴隷商人
「どうだい……ここは」
「おう……いいんじゃないか」
ルメリアの嫌らしい笑い声に、俺は生返事をすることしかできなかった。
謎のバー。
その奥にあった見知らぬ空間。
はっきり言おう。
ここはかなりやばい場所だ。
見るからに違法薬物とわかるものがそこかしこに置いてあったり、かと思えば見たことのない魔物が牢屋に閉じこめられていたり……
俺も4年間冒険者をしてきたが、頭が二つあるゴブリンとか、目が6つあるレッドウルフとか……あんなの見たことないぞ。
いったいなにをどうしたら、あんな妙ちくりんな魔物が生まれるんだ。
「ヒッヒッヒ。どうだい、すごいだろう?」
満足げに笑うルメリア。
「改造種の魔物は意外とよく売れるんだよ。熟練の冒険者を倒すのにぴったりさね」
「……なるほどな」
そりゃ、あいつらは普通の魔物じゃないからな。どこにでもいるゴブリンと思っていたら、予想外の攻撃で殺された――という光景がありありと浮かんでくる。
俺は確信した。
ここはやばい。
やばすぎる――!
「話はわかった。案内してもらって悪いのだが……そろそろ帰らせてもらっていいか」
「…………」
ルメリアの目がひたと俺に据えられる。
「なんだい。お気に召さなかったか?」
「……まあ、ありていに言うとそういうこった」
こんな商売、誰がやってられるか。
裏社会で生きようと思ったが、これは明らかに度が過ぎている。俺はただ、さっきみたいなバーの店員とか、比較的まともなのをやりたいんだが。
「さすが犬狼を従えているだけあって、ちょっとやそっとの商売では納得しないかい。自信あったんだがねぇ……」
「そういうことだ。そろそろ帰っ――」
ていいか。
そこまで言いかけたところで、俺はふと、気になるものを見かけた。
獣人だ。
キツネのようにもふもふとした両耳が頭の上についており、明らかに人間じゃないとわかる。
全身も柔らかそうな体毛に包まれていて、なんだか触ったら幸せな気分になれそうだ。
それでいてベースの体型は人間そのものなんだよな。女性だと胸のふくらみもあるし、その違いはほんの少ししかない。
その獣人は、なぜか牢屋に閉じこめられていた。
「おい、あれは」
俺がそう訊ねると、ルメリアが目を細めて牢屋を見やった。
「ああ。ありゃ奴隷さね。獣人の親が、わずかな金欲しさに持ってくるんだよ」
「…………」
「だがねぇ、奴らは内向的すぎるんだ。だから全然懐かないし、買い取り客も少なくてねぇ。商売としては割に合わないよ」
親に捨てられて……そしていま、不本意ながらあの場所にいるのか。
可哀想――と思うのは俺の傲慢だろうか。
あの子たちだって、好きで閉じこめられているわけじゃあるまい。
見れば、収容されている獣人のほとんどは女の子だった。
年齢はさまざまだが……みな、一様に怯えた表情を浮かべている。自分たちの境遇をよく理解しているんだろう。
なんてひどい……
俺はこつこつと牢屋まで歩み寄る。
「ひぃ……」
それだけで獣人は恐怖に感じたのだろう。
見てくれで言えば俺よりすこしだけ年下な少女が、びくりと身体を震わせる。
下世話な話だが、この獣人、めちゃくちゃ可愛かった。スタイルも抜群で、目のやり場に困るほどだ。
「ちょっと、あんた。人の話聞いてたのかい?」
ルメリアが呆れた声とともに歩み寄ってくる。
「無理だよ。そいつらを売るのは割に合わない。それともなんだ、あんたがそいつに惚れたとでも――」
ルメリアの言葉を黙殺し、俺はスキル《テイム》を発動する。
その瞬間。
俺と少女を、同時に柔らかな光が包み込んだ。
「…………にゃ?」
少女が初めて、可愛らしい声を発する。
「怖がることはない。俺は君の味方だ」
「にゃーー!!」
少女は涙を浮かべ、俺の元へ走り寄ってくる。もちろん牢屋越しなので、触れあうことはできないが。
「な……な……う、嘘だろう……? 獣人を懐かせただって……?」
目を見開くルメリアに、俺は決然と言い放った。
「奴隷商人。そんなビジネスは――どうだ?」
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