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3/7

俺は悪徳奴隷商人

「どうだい……ここは」

「おう……いいんじゃないか」


 ルメリアの嫌らしい笑い声に、俺は生返事をすることしかできなかった。


 謎のバー。

 その奥にあった見知らぬ空間。


 はっきり言おう。

 ここはかなりやばい場所だ。


 見るからに違法薬物とわかるものがそこかしこに置いてあったり、かと思えば見たことのない魔物が牢屋に閉じこめられていたり……


 俺も4年間冒険者をしてきたが、頭が二つあるゴブリンとか、目が6つあるレッドウルフとか……あんなの見たことないぞ。


 いったいなにをどうしたら、あんな妙ちくりんな魔物が生まれるんだ。


「ヒッヒッヒ。どうだい、すごいだろう?」

 満足げに笑うルメリア。

「改造種の魔物は意外とよく売れるんだよ。熟練の冒険者を倒すのにぴったりさね」


「……なるほどな」


 そりゃ、あいつらは普通の魔物じゃないからな。どこにでもいるゴブリンと思っていたら、予想外の攻撃で殺された――という光景がありありと浮かんでくる。


 俺は確信した。

 ここはやばい。

 やばすぎる――!


「話はわかった。案内してもらって悪いのだが……そろそろ帰らせてもらっていいか」


「…………」

 ルメリアの目がひたと俺に据えられる。

「なんだい。お気に召さなかったか?」


「……まあ、ありていに言うとそういうこった」


 こんな商売、誰がやってられるか。

 裏社会で生きようと思ったが、これは明らかに度が過ぎている。俺はただ、さっきみたいなバーの店員とか、比較的まともなのをやりたいんだが。


「さすが犬狼を従えているだけあって、ちょっとやそっとの商売では納得しないかい。自信あったんだがねぇ……」


「そういうことだ。そろそろ帰っ――」


 ていいか。


 そこまで言いかけたところで、俺はふと、気になるものを見かけた。

 獣人だ。

 キツネのようにもふもふとした両耳が頭の上についており、明らかに人間じゃないとわかる。

 全身も柔らかそうな体毛に包まれていて、なんだか触ったら幸せな気分になれそうだ。


 それでいてベースの体型は人間そのものなんだよな。女性だと胸のふくらみもあるし、その違いはほんの少ししかない。


 その獣人は、なぜか牢屋に閉じこめられていた。


「おい、あれは」

 俺がそう訊ねると、ルメリアが目を細めて牢屋を見やった。

「ああ。ありゃ奴隷さね。獣人の親が、わずかな金欲しさに持ってくるんだよ」


「…………」


「だがねぇ、奴らは内向的すぎるんだ。だから全然懐かないし、買い取り客も少なくてねぇ。商売としては割に合わないよ」


 親に捨てられて……そしていま、不本意ながらあの場所にいるのか。


 可哀想――と思うのは俺の傲慢だろうか。

 あの子たちだって、好きで閉じこめられているわけじゃあるまい。

 見れば、収容されている獣人のほとんどは女の子だった。

 年齢はさまざまだが……みな、一様に怯えた表情を浮かべている。自分たちの境遇をよく理解しているんだろう。


 なんてひどい……

 俺はこつこつと牢屋まで歩み寄る。


「ひぃ……」


 それだけで獣人は恐怖に感じたのだろう。

 見てくれで言えば俺よりすこしだけ年下な少女が、びくりと身体を震わせる。


 下世話な話だが、この獣人、めちゃくちゃ可愛かった。スタイルも抜群で、目のやり場に困るほどだ。


「ちょっと、あんた。人の話聞いてたのかい?」

 ルメリアが呆れた声とともに歩み寄ってくる。

「無理だよ。そいつらを売るのは割に合わない。それともなんだ、あんたがそいつに惚れたとでも――」


 ルメリアの言葉を黙殺し、俺はスキル《テイム》を発動する。


 その瞬間。

 俺と少女を、同時に柔らかな光が包み込んだ。


「…………にゃ?」

 少女が初めて、可愛らしい声を発する。

「怖がることはない。俺は君の味方だ」


「にゃーー!!」


 少女は涙を浮かべ、俺の元へ走り寄ってくる。もちろん牢屋越しなので、触れあうことはできないが。


「な……な……う、嘘だろう……? 獣人を懐かせただって……?」


 目を見開くルメリアに、俺は決然と言い放った。


「奴隷商人。そんなビジネスは――どうだ?」

 

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― 新着の感想 ―
[一言] こうして、悪徳奴隷商人は誕生したのであった……と書けばいいかのう?
[一言] 奴隷マスターとしての成長が見たいです!
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