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夏のシリウス  作者: 捺嬉
5/7

ラジオ体操。

「七月、二十一日…」


俺はカレンダーを見た。どうやら今日も現実世界と日付は同じらしい。


「また、同じ日か。」


俺は自分の手を確認する。やはりガキの手になっている。


(この夢、なんの意味があるんだ?よっぽど、リアルの生活に不満ありありですよーってことか?まあ、実際そうなんだけどさ…)



ジリリリリ!


急な大きな音に全身がびくついた。

目覚まし時計もセットしてたのか。スマホの目覚ましと比べて、本当に心臓に悪い音だ。

カチッと目覚ましを止める。


「ってか、今日は夏休みだろ?なんで目覚ましかけてんだ?」


ふと、目覚まし時計の横に置いてあるカードが目に入る。…これって


「ラジオ体操…」


そういえば、夏休みの時毎日行ってたっけ。早起きは嫌いだが、地域の小学生だけで行うラジオ体操は、何故か好きだった。

大人になった俺だったら、こんな行事、行くのダセェし、なんの意味もないけど…


俺は準備を始めた。




ラジオ体操が行われる場所は近所の公園だ。俺は自転車で向かった。


気持ちいい。そういや、朝方の田舎を自転車で走るなんて、いつぶりだ。

空はオレンジや白や水色などが混ざった綿飴みたいだ。まだ月も見えている。田舎の広い空を鳥が渡る。周りは田んぼや家しかない。少し遠くを見るだけで、朝方の曇りがかった山が見える。どことなく海の匂いもする…。田舎の外の空気を鼻いっぱいに吸い込んでいると、近所の家から朝ごはんの匂いがしてくる。ここの家は朝からカレーか?強烈だな。

俺は、この公園までの道を、朝方に走る道を、世界で独り占めしているみたいで好きだった。



公園に着いた。小さな田舎町の小学生が集まっても、数は知れている。


「わっ!!」

「あひゅ!?」


俺は背後から誰かに驚かされて、変な声が出る。


「あひゅ!?ってなんやって、はる!」

「…しゅんた」


ゲラゲラ笑いながら、俺の首をプロレス技で閉めてくる。俺を驚かすことに成功したことを嬉しそうにしているこのガタイのいい坊主頭は、同級生の奥野俊太だ。


「あれ?いつも見たいにキレてこんやん!腹でも痛いん?」


まだ懲りずにからかってくる、この奥野俊太は、小学生時代の俺の仲良しグループの一人。見ての通りヤンチャで、中学に進学すると暴走族とか入ってたな…。高校には行かず、就職したと噂で聞いた。俺、よく、こんなおっかないやつと、小学生の頃仲良しだったな。


「く、くるしくて…うっ」

「え?あぁ、わりぃわりぃ!」


パッと手を離す俊太。…悪いやつじゃないんだろうが、こいつは馬鹿だ。


「あ、あっちに宙もいるぞ!行こ!」


タタッと俺の腕を引っ張りながら走る俊太


「あっ、はる、しゅんちゃん。おはよ…」

この、見た目は派手なのに、性格が大人しいというギャップの持ち主が、藤森宙だ(ふじもりそら)。こいつは確か、同じ中学に進学したけど、不登校になったんだっけ。


「宙は今日も朝からクールやなぁ!」


クールと大人しいの区別も分からんのか、こいつは。


「…しゅんちゃんは今日も朝からゴリラっぽいね」


宙って、大人しいのに毒舌だったな、そういえば。悪意のない、思ったことを素直に言っているだけなのだが…素質ってやつか?

ゴリラと言われて、横で胸を拳でドンドン叩いてみせるしゅんちゃん。お前はラジオ体操じゃなくて動物園へ行け。


俺らの仲良しグループは男四人で結成されている。俺と、しゅんちゃんと、宙と、そして、あともう一人---。



「しゅんちゃん!宙!はる!」



聞き覚えのある声がして振り向く。



あと、もう一人は---



「「瑞樹!」」



…そう、有川瑞樹だ。



みんなが瑞樹のもとへ寄っていく中、俺だけはその場で動けずにいた。


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