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夏のシリウス  作者: 捺嬉
4/7

友達。

「…なんだ、夢か。」


俺は自分の手に目をやり、納得していた。

そう、あれは夢。でなければ、説明がつかない。

だが、とても鮮明…いや、リアルすぎた。なぜなら、今日は---


「…しちがつ、にじゅういちにち…」


俺が見ていた夢は、七月二十日。つまり、昨日の夢を見ていた。しかも、夢を見ていた時は混乱していたのと、状況把握で必死になって気づかなかったが、こうして落ち着いて思い出してみると。ガキの頃の記憶とめちゃくちゃデジャヴがある。

まあ、リアルな夢なんて珍しくない。昔の思い出の夢も珍しくないはずだ。そんな話もよく耳にするもんな。それより、俺がガキの頃にタイムスリップするなんて方が説明がつかないし、意味不明すぎる。


「あっ!やべっ!バイト!」


俺は慌てて飛び起き、充電中のスマホを操作する。


「…あ、今日、休みじゃん…。」


安心したと共に、寝汗で身体がベタベタしている事に気付く。現在pm12:30。俺はシャワーを浴びて、近くのコンビニに足を運ぶ事にした。



今日は夏日だ。少し外を歩くだけで、フライパンの上で焼かれているウィンナーの気持ちになる。


「さっきシャワー浴びたのに。気持ち悪りぃな。」


ボソッと誰にも聞こえないような声量で文句を言う。暑さにイライラしながら足を進め、コンビニで昼食を購入し、家のポストの前まで着いた。

ポストを開けると、中からドサドサッ、と、チラシやらなんやら落ちてきた。


「…入れすぎだ、馬鹿。」


入れすぎ、というよりかは、俺が確認しなさすぎである。中から出てきたものから、要らないものは近くにあるゴミ箱に捨て、軽い断捨離をしていた。


「…ん?有川…?」


そこには、幼馴染みの、有川瑞樹から送られてきた封筒がある。そして、瑞樹の名前の隣に、見覚えのない女の名前があった。

まさか、と思い、俺は部屋にも戻らず、その場で中身を見る。


「うぇでぃんぐ…。けっこん、します…。」


俺の嫌な予感は的中した。それは、結婚式の招待状だった。

同級生や昔の友達が何人か結婚しているのは知っていたが、まさか、お前までもか。

瑞樹は顔も整っており、某有名私立大卒のエリートでモテていたが、浮いた話もなく、俺はそんな瑞樹に、いつのまにか変な仲間意識を持っていた。俺がこの歳で彼女がいなくっても、結婚していなくても、俺に非があるわけじゃない。俺は瑞樹と一緒で、"選ぶ立場だから"と。

決して、28歳で結婚していないことは遅いことではないが、周りがどんどん結婚をしていく中、高校を卒業してから、一度も彼女が出来ない焦る自分にそう言い聞かせていた。

俺は、勝手に自分に言い聞かせ、瑞樹に仲間意識を抱いていたくせに、瑞樹に裏切られたような気がして、腹が立ち、その場で招待状を破り捨てた。


「どうせ、すぐ離婚すんだろ。離婚する奴にくれてやる金なんてねーよ。」


俺はポスト付近にあるゴミ箱を蹴飛ばし、一階の自分の部屋に帰った。




飯を食ったり、動画を見たりしていると、あっという間に夜になった。俺はいつものように有名人の粗探しに必死だ。


「いんすた◯らむ?あー、今流行りのね。こいつもしょうもねぇミーハーだなぁ。みんなと同じことしてないと死んじゃいますぅ>_<ってか。」


俺はインスタ◯ラムやツ◯ッターというものは一切使っていない。高校の時は使っていた。当時、俺の仲良しグループの何人かが、俺たちを誘いもせず、同じクラスの女子と遊んでいる写真を投稿しているのを見てから、毛嫌いするようになった。


「今日も何もしなかったな。…休みの日は何にもしないに限るよな!あーあ、明日からのバイト、だっる。行きたくねぇなー。」


俺は布団の上で大の字にのびながら、かすれた声で言った。


「…俺、何のために上京してきたんだっけ。ってか、何のために生きてるんだ…。死んでも、親に迷惑かかんなきゃ、とっくのとうに死んでるよなぁ。」


天井に向かって呟く。


「っと、目覚ましセット。」


スマホの目覚ましをオンにした俺は、電気を消して眠りに落ちた。




---ぱちっ。


珍しく俺は、目覚ましに頼ることなく自分で起きた。目の前の光景はなんと、…俺の実家だった。


「はぁ。またかよ。」


二度目となると、もう流石に驚かない。しっかり声も戻ってやがる。にしても、本当にリアルだな、この夢。ガキの頃に本当にタイムスリップしてるみたいだ。

夢ってことは、また思い出か?なんで二度もこんな思い出の夢ばかり見るんだ?


その日の俺は何故だか、少し心を躍らせていた。まるで、友達との約束がある日のように。

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