僕の夏休み。
この度は、夏のシリウスを目にしていただいて、ありがとうございます。
この掲示板を使うことは初めてですが、温かい目で見ていただけると幸いです。
一応、ローファンタジーの方分類してみましたが、いまいちどこに入るものかわかりません…泣
俺は梅田遥希。28歳、フリーターだ。
東京都◯◯区、現在1人暮らし。もちろん、未婚。彼女もなし。
元々、地元は石川県だが、高校を卒業と同時に上京してきた。
大学やらへは進学していないので、俺の学歴は高卒だ。
「梅田君。今日、六時入りのバイトの子がさぁ、授業が遅れて遅刻しそうなんだって。…だから、少し伸びたりするかな?」
「河合さんの事ですよね?…はぁ。あの子、前もそんな事で遅刻してましたよね。…ほんとに授業で遅刻なんすかね。」
「ははは…。それは、どうだろう…はは。」
自分より歳下で尚且つアルバイトの俺に対してでも下手に出てくる店長。客から矛盾したクレームが入ってもずっとペコペコしてる。
(この後、何にも予定無いしなあ。別に面倒だから断ってもいいけど、まあ金も欲しい。)
「…はあ〜。」
大きなため息をついた。
「いいっすよ。」
「本当!ありがとう、神様だ。ごめんね。」
店長は申し訳なさそうにしながら、安心した顔をしていた。
別に店長のことは嫌いではない。けど、こんなジジイには将来なりたくないなぁ。と、心底思う。
元々俺は、某有名テーマパークで働いていた。
別に俺も、何の夢も希望もなくただ上京してきたわけじゃあない。そこのテーマパークに就職し、大勢の人に楽しんでもらったりしてもらうことが俺の夢で…って言うと、綺麗事だ。
田舎とは違い、キラキラガヤガヤした街、人。そしてそこに行けば、なんにもしなくても、俺は今まで秘めていた何かしらの才能を"誰かに見つけてもらえて"、SNSやTVでも超有名人の、誰もが羨むスターになると過信していた。
わざわざ東京のテーマパークに周りに無理言って就職したのは、俺のその、なんの根拠もへったくれもないところから生まれた自信、から、また生まれた野望を、"誰かに叶えてもらう"ためだった。
上京をすれば、勝手に何もかも良い方向に進むと思っていた――――。
「…君、梅田君!レジ、お願い!」
店長の声でハッと我に帰った。店が空いている隙に商品チェックをしていたが、いつの間にかレジが混雑していた。
レジには一人で長蛇の列と戦う店長。漫画のような飛び散っている汗が見える気がする。
…ガチャッ。
住んでいるボロアパートに着いた。
「ふー、疲れた。」
小さなテーブルの前に着くと、座り込んだ。そして手洗いもせず、近所の惣菜屋で買った弁当を動画を見ながらがっつく。
「まぁた芸能人のハーチューブデビューかよ。こいつら、マジで金が好きだな。いいでちゅね〜、あんたらはカメラの前でペラペラ喋ってるだけで銭が湧いてきて。はい。低評価、低評価。」
親指が撫でた手つきで動く。
「この大食い馬鹿、食うことしか芸がない無能だから、ネタがマンネリ化してきてつまらなくなってきたな。どうせ、食ったもんも全部吐いてんだろ。そのままコメント書いてやろう。」
親指が素早く動く。
こうやって、匿名で低評価をつけたり、アンチコメントを投稿するのが最近の日課だ。
誰だってわかんねぇし、この時だけ、俺がこいつらよりなにもかも上にいるように思える。
「別に俺もアンチになりたいわけじゃねぇよ。ただ、俺みたいな奴がいないと、無能のくせに金儲けできる輩がわんさか湧いてしょうがないだろうが。無能なくせに楽して稼ごうとしてんじゃねぇよ。」
画面の向こうのハーチューバー(動画投稿主)に言いながら、ビール缶を開け、流し込む。缶が空き、もう一缶、もう一缶…
…酔って、いつの間にか寝ていた。
「やべっ、目覚まし!…って、明日は休みか。」
そう言うと、俺は二度寝しようとした。が、目を覚ました時に見えた景色に違和感を感じ、再び目を開ける。
「え?これって―――。」
そこは、俺の実家だった。