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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第5章 秩序が崩れるとき
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第17話 アズール魔導館▷▷絶望とは?

私達は倒壊してしまった“アズール魔導館”に向かった。炎に包まれほぼ全開のタワーの前で空から向かって来る大きな怪鳥たちを相手にしている“大魔導士ゼクセン”さんを助ける為に。烏滸がましいけれども。


こうやって向かっている間にもゼクセンさんが放つ白い光の魔法が怪鳥たちを蹴散らしてる。私達は街に入って来た所に連れて来られたので今……ひたすらダッシュ中なんですが……、え? “風の精(シルフ)の王”はどーしたって? 運んでくれないのか? って。ええ、彼は宣言したとーり我関せず状態で、今も私達の頭の上を多くの碧の“風の精霊”たち引き連れてふわり、ふわりと飛んで回ってるんですよ。何かゴツゴツした棍棒程度の長さの銀色のロッド持って優雅に空中遊泳してるんです。


(うっ……クソ! なぁんかハラたつなぁ! コッチはむっちゃ焦って全力疾走してるってのに!)

私がイラっとしていると、隣で“勇敢な心(ブレイブハート)”と言う名の大剣(クレイモア)を持って走る飛翠(ひすい)が言ったんだ。


蒼華(そうか)、何か可怪しくね?」

「は?? 何もかも可怪しいわ!」

「俺にキレんな、見ろよ。」

飛翠はそう言って空を見上げたんだ。あークソ! ふわり、ふわり浮かぶシーラさんが視界に入って更にイラっとした。


「阿保、あのくそガキじゃねー、空。」


飛翠がそう言った。え? と、私は空を見上げた。バサッバサッと、黒い大きな怪鳥達は私達が走ってる上空をまるで旋回するかの様に飛び回ってるんだ。周りでは黒炎吐きまくってるのに私達には向かって来ないんだ。


「え? 何で? なんか……“警戒”してる?」

「お前、ガチで成長したな? ハナシ通じるし。」

「は?? 悪かったな! 今迄は“DQN脳”で!」


(通じてなかったんかーい!!)


飛翠は私のその1言には完全スルーで、上空見上げて チッ。と、舌打ちした。


「え? 何?? 私の発言そんなにイラつかせましたっ!?」

「前言撤回、なんも成長してねーわ、お前。」

「あ"ぁっ!?」

「喚くな、つか……落ち着け。」


ちょいトーンダウンな声でそう言われたので私は心を整えた。


「くそガキの“力”かもな。」


え?? 飛翠の声に私は聞き返した。彼は空から視線を真っ直ぐと倒壊したタワーの方に向けた。その横顔は私の知ってる“幼馴染の飛翠”じゃなかった。


モテメンで女のコ取っ替え引っ替えしてたクソ男の顔ではなくて……、グリードさん、ハウザーさんと同じ……“闘う戦士”の顔をしていた。


私はちらっと上空見上げた。走る私達の頭上をシーラさんは“碧色の風の精霊”達を引き連れて飛んでるんだ。良く見れば私達の頭上を光のカーテンで覆うみたいに。


「飛翠……私も気付いたことある。言っていい?」


私が言うと飛翠は あ? と、聞き返してきた。


「見て。シーラさんの周りに居る“風の精霊”が増えてる……。」


そう言うと彼はちらっと視線上げてくれたんだ。彼はとても悔しそうに クソが。と、ボヤいたけれど……私はいつの間にかシーラさんが先導しつつ多くの碧色の光を纏う精霊達が、集まって来ていているのを見て力を……勇気を貰えた気がした。


▷▷▷ 

倒壊したタワーは目前、ゼクセンさんの周りには魔導師達が居て、彼らは必死にロッドを空に向けて魔法を放っていた。

真っ黒な身体の怪鳥は間近で見ると大迫力で、大き過ぎて……私はそれを目の当たりにしてゾッとした。あの吊橋でもし体当たりされていたら……私は……死んでいたのだから。


ギェェッ!!


怪鳥達がゼクセンさんと魔導師達の魔法で撃ち落とされていく、私は叫んだ。


「黒崎さんっ!!」


解らない、何故……そう呼んだのか。でも、必死に闘うお爺さんは私がずっと慕っていた古書店“月読(つくよみ)”の店主なのだから。確かに着てる服とか外見はちょい変わってしまったけど、イシュタリア仕様に。


でも、2年間……彼とは東京の私と飛翠の地元で、毎日顔を合わせていて飛翠の愚痴とか、高校入って唯一出来た女友達……“親友の舞子”のハナシとかお煎餅食べながらハナシしたその人なのだから。


「蒼華ちゃん! 飛翠くんっ!」


私の声に気付いたゼクセンさんが笑ったんだ。何時も見てたあの優しい笑顔をしてたんだ。もう、それを見ただけで泣きそうになった。


でも。


ドクン……と、私の心臓が1鳴りした。勝手に。


『行くの? 貴女には“絶望の未来”しかないのに。引き返すなら今よ? 蒼華。』


(き……きたっ! いきなりきたっ!)


私の脳内に響くのは私の声。しかも滅茶苦茶、粘着質に響くからスルー出来ない。私の全神経が感情がその声に持っていかれる。


何度かこの遭遇は経験している、ゼクセンさんに貰ったこのロッド……。“審判の心(ジャッジメント)”が……いや……私の心の声が語りかけてくるんだ。これが“試練”……、結構しんどい。メンタル激ヨワな私には地獄の試練だ。


でもーー、今の私は違う。この先にあるモノを知ってるから、乗り越えるモノだから。


(うるさいっ! 絶望なんてそんなモノない! 私は“闘う”! 自分自身(貴女)が何を言っても私にはもう響かない!!)


そう心の中で叫んだ時だった。


カッ!! と、私の持つロッドが“蒼白く”光輝いた。


「きゃぁっ!」


次の瞬間、私はそのロッドから放たれた蒼白い光と突風に吹き飛ばされていたんだ。


「蒼華!!」

「蒼華ちゃん!!」


ネフェルさんと飛翠の声が聞こえた。


地面にふっ飛ばされた私を 蒼華! と、抱き起こしたのは飛翠だった。でも、私は見たんだ。今迄持っていた自分のロッドが……手を離れ蒼白い光に包まれ宙に浮いているのを。


「あ?」


と……飛翠の声が聞こえた。私は抱き起こされ彼を見た。すると、彼の右手に握られていた筈の大剣(クレイモア)、“勇敢な心(ブレイブハート)”が白く光輝いていた。


「何だ?」


飛翠は右手に持つ大剣を眺めてたけど、それも私のロッドと同じ……


カッ!! 


と、眩い光放った。


「きゃあっ!」


私達の身体はその光の中で突風に巻き込まれて吹き飛んだ。


「蒼華姉様っ! 飛翠さんっ!!」


シロくんの声が聞こえた。声が聞こえると言うこと、“生きてる”と言うこと。


私と飛翠は地面に吹き飛ばされたけど、身体を起こしていた、自然と。


「蒼華、大丈夫か?」


痛みはないとは言えない、身体を地面に打ち付けられて背中が痛い……、でも同じ状況になったのに直ぐに私の傍に駆け寄って腕を掴んでくれる飛翠を見て……泣き言は言えない。


私は彼の手で引き起こされ立ち上がった。


「ごめん………ありがと。」

「謝んな。」


けれども、目の前には私のロッドと、飛翠の剣が宙に浮かんでいた。それぞれ光に包まれて。


「何? なんなの?」

「解んねー。」


私達は目の前で宙に浮かぶロッドと剣を見つめた。けれどもそれは


パンッ!!


と、弾けたんだ。


「きゃぁぁっ!!」

「蒼華!」


物凄い光と突風!! 私は咄嗟に飛翠に抱きかかえられて……吹っ飛んでいた。


地面に落ちたと言う感覚はあった、けれども、私はちょっと柔らかくも硬くて暖かい感触の中でバウンドしてた。


え? と、私は目を開けた。飛翠が私の身体の下に居たんだ。


「ごめんっ!」


私は直ぐに起き上がった。飛翠が下敷きになってたからだ。


「別に。無事?」


飛翠は私の腰に腕巻きつけたままだった。


「はい、途轍もなく。」

「あっそ。」


私は飛翠の腕を掴み一緒に立ち上がった。けれども、声が響いた。


「お前らなに飼ってんの? 生き急ぎ過ぎだろ。」


シーラさんの声だった。私達はその声に振り返る。目の前には浮かぶシーラさんと風の精霊たち。


でも、その向こう側に真っ黒な者達が居た。私はその2人を見て……叫んだ。


紅炎の支配者(イフリート)! 深海の乱暴者(リヴァイアサン)!!」


そうーー、あの時、私を庇い救ってくれた彼等の姿がそこに立っていたのだから。身体は真っ黒だけど忘れない……、私を庇ってくれたその姿を。


「つか……くそガキ、お前は全部解ってんだよな?」


飛翠がそう言うとシーラさんは はぁ。と、溜息ついた。


「お前らの存在って“紙一重”なの。」

「え?」


シーラさんの言葉に私は聞き返した。けれど、彼は私達を振り返らない、目の前の真っ黒な姿をしたイフリートとリヴァイアサンと向き合いながら、更に淡々と言った。


イシュタリア(この世界)を変える者、壊す者。お前らはどっちにもなれる存在……申し訳ねーが、出逢いたくなかったな。」


けれどもシーラさんの周りに碧の光纏う精霊達が集まったんだ。彼の身体は眩いくらいに光輝いて………カッ!! と、碧色の閃光が放たれた。


「きゃぁぁっ!!」


私は閃光と突風に目を閉じた。

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