第15話 ユナイタウン▷▷▷シーラ
あっと言う間だった。白い光に包まれて気がついたら私達は、“ユナイタウン”と言う街に居たんだ。その街は空にフワフワと飛行船が飛んでいて、大きな塔みたいのも幾つか建ってて何だか近代都市みたいだった。今迄見て来たアナログな世界とは少し違かった、だけど私達の住む世界ともまた違う……、何だか不思議な世界だったんだ。
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「え〜と? “フリージアの店”でしたよね?」
飛ばされた場所はどうやら街の中心地みたいで、賑わうその中で私はネフェルさんに聞いた。
「ええ、少し歩けば見えると言ってましたね。」
ネフェルさんは辺りをキョロキョロと見ていた。こんな集団がいきなり現れても誰も気にしない。スゴい世界だと私は改めて思った。周りは色んな人達が行き交ってる……、なのにですよ? 私達大人数でいきなり現れたのにだぁれも気にしてない、スルーです。スゴい世界だわ。
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フリージアの店は直ぐに見つかった。周りは高層の塔みたいな建物、その中にその
店はあったんだ。ぽつん。と、1階建ての平屋みたいなその店はとても目立った。平屋言うても日本風ではなく西洋風な洒落た家屋なんですけども。
躊躇う私の前でハウザーさんがその店の扉を開けてくれた。
「いらっしゃ〜い。」
と、中性的な男性の声が響いたんだ。ハウザーさんを先頭に私達はその店に入った。こじんまりとした……雑貨屋みたいな雰囲気だった。挨拶してくれたのは、カウンターに居る人だと直ぐに解った、店内には誰も居なかったからだ。
「あの人が……シーラさんかな?」
私は飛翠に聞いた。
「じゃね?」
飛翠は周辺見ながらそう言った。
「あのさぁ〜……俺、ヒマじゃねーんだわ、要件何よ? 旅人。」
と、カウンターに居る人が言ったんだ。頬杖ついてミントブルーのボブヘアの可愛い顔した男のコって印象だけど……実年齢不詳。
「あの……ゼクセンさんからシーラさんに会えって言われたんですけど?」
私は飛翠の腕掴みながらそう言った。ふ〜ん。と、その人は軽く相槌打つと
「なんで?」
と、聞いて来たんだ。
「は??」
私は思わず聞き返していた。
「いや、理由。」
途轍もなく綺麗な男のコ? いや、青年?? なのかは解らないけれども、何か滅茶苦茶イラっとする言い方で、私はカチンときた。
「そんなの知りませんよ! コッチも会えって言われたんで!」
と、怒鳴っていたんだ。すると、その人は ふ〜ん。と、私を見てにやり。と、笑った。
「あ〜……アレか。“闇魔石”。」
と、言ったんだ。
「あ? 知ってんのか?」
飛翠が聞くとその人は、ふっ。と、小馬鹿にした様に笑った。
「お前ら“闇魔石”って何か知ってんの?」
「え?」
私が聞き返すとその人は頬杖つきながら、溜息ついた。
「“闇魔石”って1つじゃないんだわ、この世界に散らばってんだよね、知ってた?」
さらり。と、そう言ったんだ。
「はいいっ!?」
私は思いっきり聞き返した。けれど、彼はーー、カウンターから立ち上がると……たんっ。とそのカウンターに軽々と乗った。更に私達の前に飛び降りたんだ。
浅葱色のマントをつけた少し小柄な少年ーー、とは言え私より背高いですけどね。
「ちょっと待って下さい、シーラ殿。」
彼の理論の暴走止めたのはネフェルさんだった。あ? と、聞き返すシーラさんはいつの間にか右手に少し短めのロッドを持っていた。私が持ってるロッドより半分近く短いロッドだった。
「闇魔石が1つではないとは?」
ネフェルさんがそう聞くとシーラさんは ふん。と、何だか小馬鹿にした様に笑った。
「あのじーさんもズルいよな? 助けて欲しくてお前ら寄越したんだろ?」
シーラさんはそう言ったんだ。
「ちょっと待って、どーゆうこと!?」
私が聞くとシーラさんは鋭い眼差し向けた。
「さっさと行かねーと死ぬぞ? あのじーさん。」
そう言ったんだ。
「え? それってゼクセンさん??」
私が聞くとシーラさんは溜息ついた。
「他に居んのかよ? 態々、俺のとこにまでお前ら寄越して……救い求めてんだから。」
シーラさんはそう言った。
「どうゆうことなんですか? ゼクセン様が危険と言うことですか?」
シロくんが聞いたんだ。でも、シーラさんは険しい表情をした。
「話してるヒマねーんだわ、飛ぶぞ? “アズール魔導館”、行けば解る。」
そう言うとロッド右手にしゃがんで左手を床につけたんだ。
「“風霊の導き”」
その言葉を彼が言った途端……床に碧色の魔法陣みたいなモノが浮き出たんだ。それは私達の足元にいつの間にか移動して、碧色の光が私達を包んだ。眩い光の中でロッド片手に立つシーラさんが笑っていた。
「あのじーさん……舐めてるよな。」
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当然……その後は何処か解らない場所に移動してた私達です。
「何処よっ!?」
私は辺りを見回して怒鳴っていた。
またもや詐欺師ゼクセンに騙されたのだからそりゃ怒鳴るわっ!
辺りは森だった。しかもさっきまでは晴天真っ青だったのに今や真っ暗闇ですよ! 月の灯りしか空にはありません! どーなってんのっ!?
「おー……全員無事?」
その声に私は振り返った。気づけば……皆様いらっしゃった、もう……皆の事も考えられないぐらいパニック状態だったんだな、私。声の主はシーラさんだ。銀色の短めのロッド握りながら、目の前に居たんだ。
「シーラ殿、話を……」
「はいはい、行けば解るって。」
ネフェルさんの声を即座に遮るシーラさんは、すたすたとこの暗闇の森の中を歩いた。まるで……先導するみたいに。
「アイツ……俺らが知りてーことを全部知ってるんじゃねーか?」
と、飛翠が言ったんだ。
「え?」
私が聞き返すと飛翠は真っ直ぐ見つめて来た。
「イシュタリアの全て。」
「…………!」
私はそれを聞いて何も言えなくなった。怖くなった。イシュタリアの全てって何?? と。と言うか、それを知ったら…………もう後戻り出来ないんじゃないかと……、私は怖くなった。
シーラさんを先頭に暗闇の森を歩く、私はシロくんと手を繋ぎ、飛翠の腕を掴み歩く。幸い森の中の道は歩き易くなってて草木掻き分けるサバイバルな感じではなかった。
でも、私と飛翠の後ろからついてくるハウザーさんとグリードさんの顔が……顔が……おっかねーんだわ!
「何がどーなってんだよ!?」
「さーせん! 俺に聞かんで貰えますかっ! 兄貴っ!」
おいおい……グリード君、いつからハウザーさんは貴方の御兄弟に??
「……蒼華姉様……ちょっと嫌な感じがします……、何ですかね? なんかこう……じめっとするんです……心が。」
隣で歩くシロくんがそう言ったんだ。
「え? シロくん……」
大丈夫? と、話を聞こうとしたら背後から
「オイオイ! シロ! 大丈夫か!? ぽんぽんイテーの??」
と、グリードさんが割って入って来た。
(過保護か!?)
と、私は思うがグリードさんはシロくんをとてもとても…………溺愛してる。はい、もうコレは間違いない。だって、私からシロくんを取り上げてささっと肩車しだしたんで。
「グリードくんっ! 歩けますっ!」
「いーから、いーから!」
滅茶苦茶嬉しそうだし……グリードさん……。
でも……そんな少し和やかな雰囲気も消えた、飛翠の言葉で。
「蒼華……、見ろ。火事だ。」
「えっ!?」
私はその声に正面を見据えた。森の先……空に紅い煙と白煙、更に灰煙が立ち昇っていたのだから。それも見た事もないぐらいの勢いと広さ……、一軒燃えたとかのレベルじゃない。
「あんなのヤバいじゃん!」
消防車何台居ても消えなさそうなその業炎が目の前で見えたんだ。
「だから言ったろ? やべーって。」
振り返ったのはシーラさんだった。更に彼はニヤリと笑った。
「ま。あのじーさんの“自業自得”だな。」
と。