表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第5章 秩序が崩れるとき
93/131

第12話 目指す理由

ゼクゼンさんの家なのかな?? 私と飛翠が1番最初にお邪魔した丸太小屋。

そこで、今夜は一泊する。小さな小屋みたいなのに、中は広くてビックリ! ちゃんと、客間とかあって大浴場まで完備されてた。しかも……造りが、私達の世界にある宿泊施設みたいだ。シャワーもあるし、湯船もある。見させて貰ったけど、なんかジャグジーみたいにぼこぼこと泡出てた。

ゼクセンさん、コッチとあっちを行き来して造ったんだろーなぁ。と、私は思った。夕飯の支度は、私に主導権を与えられた。ええ。勿論! 得意中の得意ですよ! 材料と調味料さえあれば! 何しろ私は一人暮らしが長いので。自炊はお手の物! ちゃちゃっとやってろーじゃないの!

「オイ。蒼華(そうか)、、、この赤いのは砂糖みてーなヤツだ。クソ甘っ!」

と、飛翠(ひすい)は私の作るカレーみたいな煮込みを味見しながら渋い顔をしたのだ。

「え?? ウソ!? それスパイシーなカレーにしてくれる魔法の調味料じゃないの!?」

私は飛翠の隣に置いてある小瓶を掴んだ。タバスコの瓶みたいなやつだ。

紙のパッケージは、マジックフラグ(超甘味材)と書いてある。だが、真っ赤な粉だ。

「クソ甘めーよ。」

飛翠は鍋に、お玉を放り込んだ。

「えぇっ!? こんだけ赤いんだからカプサイシン系だと思うでしょーよ!」

「は?? つか、わかんねーんだから舐めてから入れろ。」

隣でコンロに鍋を掛けながら飛翠は、キッチン台にある調味料の瓶を掴む。

「蒼華姉様! 大丈夫ですよ。そのマジックフラグを打ち消すには、“ヘルベン(超香辛料)”を入れればいいんです。」

と、横にいるシロくんが何とも気味の悪い蒼い粉の瓶を取ったのだ。

こんな真っ青な調味料……初めて見た。海の色ですよ。

「え? そうなの??」

私はちょい半信半疑、いやおもクソ不信感満載で、シロくんが踏み台に乗りぐつぐつと煮えてるカレー鍋に、その蒼い粉を振りかけてるのを見つめた。

(っておい!! 瓶半分いれてっけど!?)

小瓶とは言え、タバスコの瓶と同じぐらいの大きさだ。それを惜しみなくぶんぶんっと振り播撒いたのだ。カワイイ顔して。

「あ……いい薫り……。」

くんくんと私は鼻をふんふんさせた。漂うスパイシーな薫りは、最早カレーだったからだ。シロくんは踏み台から降りると、私に振りまいた瓶を突き出した。

「ヘルベンは何にでも効きます。魔法で言うと、“聖魔法”でしょうか? 打ち消すんです。」

と、にこにこしながらそう言ったのだ。

ハハハ……

と、グリードさんの笑い声が聞こえた。

グリードさんはダイニングテーブルでナイフ片手に、私達を見たのだ。

スカイポート(空の恵み)”と言うウチらの世界で言うと、マンゴー。形はそれ。けど、皮は真っ青。空の色そのもの。その皮を肉球のあるわんこの御手てはナイフで、器用に剥く。中身は黄金の果実。とてもジューシーで甘そう。

「シロは頭が魔法だからな。なんでも魔法に置き換える。」

と、グリードさんは笑ったのだ。

だが、シロくんは

「いえ……」

と、少し困った様な顔をして鍋の方に目をちらっと向けた。

だが直ぐに私を真っ直ぐ見つめた。

「せっかく! 蒼華姉さまが作ってくれたんです! 僕はちゃんと食べますから!」

と、言った直後、、、

「あ。やべーかも。」

飛翠はそう言ったのだ。

もくもくと上がる黒い煙を前にして。


ボンっ!!


と、爆発したのだ。

私の作ったカレー鍋は。


ゴホっ!

う〜〜

ごほっ!!

誰もが爆煙の中で咳き込んだ。


私も目は開けられなかった。


「嬢ちゃん! 俺らじゃなくてヤヌスにやれよ!」

と、ハウザーさんの声がもくもくと煙る部屋の中で響く。ゴホゴホと咳き込んでるのも聞こえる。

「知らないし!!」

私は手で目の前の白い煙をとにかく叩いた。ぶんぶんっと蝿を追いやるように。

「蒼華ちゃん! 全部入れたな!?」

咳き込んでそう言ったのはゼクセンさんだった。

「え?? だって蒼以外はパラペーニョ系かと思ったし!」

私はとにかく、蒼以外の調味料は使った。ええ、それは否定しません。だってカレーにはスパイス! 香辛料! 緑と赤と黃は入れるでしょう??

もくもくとしていた部屋の中だったが、落ち着いてきた。けれど……カレー爆弾をモロに顔面に食らった黄色い飛翠は……、ゴンッ!!と、私に拳骨食らわしたのだった。


「痛いっ!!」

「バカ女、この世界でメシ作んな。わかったな?」

と、そう言われたのであった。

「わかった。ごめんってば!」

私は再度謝ったが、カレーまんの飛翠にもう一回、拳骨くらった。

あー痛い!!


▷▷▷

かちゃかちゃとスプーンの音はする。

私の失敗カレーは、再度作り直し、みんなで夕飯だ。でも、皆言ってくれた。

「美味しい。」

最初に言ってくれたのはネフェルさんだった。ネフェルさんは、着いて来てくれてるが私より飛翠にやっぱり……気持ちが行っている。

それは良くわかる。彼は恋人を護れなかった。だから、飛翠を強くさせたい。自分と同じ思いをさせたくない。そんな感情を彼は飛翠に向けていて、彼を応援している。私の事はいつも冷たく見つめるだけだった。弱者のように。

でも、最近は違う。こうして、笑ってくれる。

「ホントですか?」

だから、私も嬉しくなる。再度作ったカレーライス。それを食べてもらえて。

「ああ。美味いよ。スパイスが絶妙だ。」

ネフェルさんはにこっと笑ってくれたのだ。更に、ハウザーさんとグリードさんも

「ウマい!」

と、笑ってくれた。

良かった!! なんて嬉しい!! 自分が作ったものをこんなに喜んで貰えるなんて! それも、異世界の人たちだ。味覚も違う人たちだ。嬉しい。

「蒼華姉様。このゴロゴロしたのはなんですか?」

「じゃがいもだよ? ゼクセンさんの畑にあったんだけど……、食べたことない?」

隣でじゃがいもをスプーンで掬うシロくんは、目を丸くしていたのだ。

「ありません。じゃがいも……、これは非常食に向きそうですね。とても美味しい。」

と、シロくんはもぐもぐとしながらそう言ったのだ。

ゼクセンさんはそんなシロくんを見て微笑んだ。

「シロ。お前はとても感受性が高い、そして、何よりも心が純粋だ。」

だけど、ゼクセンさんはスプーンを置いた。そして、私達を見据えた。強い目で。

「蒼華、飛翠、“グロームとガルパトス”は堕ちた。」

ゼクセンさんは真剣な目をしたのだ。

「堕ちた……ってなに?」

私はそう聞いた。

「ティア王女の元に堕ちたのだ。」

ゼクセンさんはそう言ったのだ。

「つまり……“彼女らの支配下に”。」

そう言ったのはネフェルさんだった。私はそれを聞いて手を握り締めた。


え? 待って。

彼等は……強い心があったはず。そんな簡単にあの王女様の言いなりになるの??

え? 待って……ガルパトスさんは、飛翠を気に入ってた。どうして? なんで??


「蒼華ちゃん……。」

「はい?」

私はゼクセンさんを見つめた。


「先に言っておく。ここからは“想像を絶する場面”ばかりだ。お主らもそうだが、ここにいる全員が死ぬかもしれん。」

私は目を丸くしていただろう。

「お主らの為に走り回っておる“カルデラ、ラウル、ローズ”。更に力を手に入れそなたを支えようとしてる“ミリア達“。」

ゼクセンさんはネフェルさん達を見つめた。

「そしてここに集う仲間たち。更に庇った……”アイウラ族、コボルト族“。最早、お主らは巻き込んでいる。この世界の者達を。」

ぎゅっと……私は膝の上でその手を握り締めた。怖くなった。そう言われて。

でも、隣にいる飛翠の手が私の手を掴んだ。

ぎゅっと。


私は驚いて飛翠を見上げた。

でも彼は真っ直ぐとゼクセンさんを見て言ったんだ。


「だったら闘うしかねーだろーが。護る為に。」

飛翠はハッキリとそう言ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ