第9話 蒼華と飛翠は帰るのか?
申し訳御座いません!!
本日、1日検診でちょっと時間がなくまたもや短いです!!
申し訳御座いません!
いや、血、、7本抜かれました。
高見燈
シロくんのお陰で和んだ空気。
ええ、わかってた。この可愛いマスコットみたいなわんこが、私には到底理解出来ない“奴隷”と言う世界。そこで生きて来た事。
なんとなくはわかる。歴史の授業でもやった。でも、実際にはわからない。
私は経験してないからだ。
だから、彼の傷みや苦しみを到底解ろうとするのは、無理だ。
話に聞いて想像は出来る。お蔭さまでそうゆう映像作品は、私の世界にはゴロゴロと転がってる。それを見れば知識として理解した事にはなる。まるで見た事ある様に、理解した気持ちにはなる。映像作品だからと、完全に第三者として観ていた。涙も流した。けれど、彼等のその時の状況、苦しみ、思いは理解なんて出来ない。経験した事ないからだ。でも、、、“強さ”はわかる。
この人は、それでも“他人を信じられる”。他人から酷い事をされたのに。私が口を開こうとしたその時、
「何も変わらねー。」
今まで黙ってゼクセンさんとシロくんの話を聞いていた飛翠が、そう言ったのだ。
え? 私はちょっとびっくりして飛翠を見た。この時の私の率直な意見は、、、え?? あんたハナシ聞いてた?? だった。
「俺らのやる事は変わらねー。」
でも、飛翠はそう言った。
「この世界に来た以上、この世界のルールで強くなるしかねー。それが生き残る為の手段。“ジジィ”。」
飛翠はそう言うとゼクセンさんを睨みつけた。
「わかってねーな、連れて来られたが“イシュタリア”で、お前らのルールで強くなってやる。なんなら俺がこの世界をぶっ潰してやる。そんぐらい思ってた。」
飛翠はーー、いつにも増して強い眼でゼクセンさんを睨んでいた。
ハッキリと続けた。
「それは今も変わってねー、策練ってハメたみてーなハナシしてるが、俺はお前もシェイドとか言う“オンナに狂った野郎”を超える。てめーらなんかに、殺されてたまるかよ。」
飛翠はそう言った。
更に彼は
「“俺は護る。”てめーらとは“覚悟”が違う。なめんな、くそジジィ。」
そう言ったのだ。
私だけじゃなかった。
その場にいる誰もが、普段はあんまり言わない飛翠の“本音”に、驚いてた。
それに、彼の眼は顔は見た事ないぐらい真摯で、強い。
気迫ーー、それを感じた。
「飛翠はオレが“真似”してー男だよ。」
ふと、そう言ったのは蒼い毛のコボルト。グリードさんだった。
「あ?」
飛翠はテーブルの椅子からその顔を向けた。グリードさんは、私達の座るダイニングチェアの後ろのソファーに腰掛けてるからだ。
蒼い毛の犬の獣人は、飛翠を見ていた。
「オレはわかってたのになんも言ってやれなかった。護ってやれなかった。“シロ”が、村に還って来た時……、言ってやれなかったんだ。」
グリードさんは、シロくんに目を向けた。
シロくんは蒼い瞳をくりっと開いた。
「たった一言だ、、、“お前、すげーよ。”それが言えなかった。仲間を解放して、一生奴隷の道を選んだコイツを、オレは……すげー。って言えなかった。」
グリードさんはシロくんを見つめながら、更に言った。
「仲間を護って自分も護る。それが“男の生きる道”だって思い込んでた。強くねーから、自分を犠牲にするしかない。けど、犠牲の上に与えられた自由ほど、他人は嬉しくもねーし、拘束される。精神を支配される。」
グリードさんはいつにも増して真摯な目をしてた。
「けど……“そんなのよりも助けたい”。その真っ直ぐな気持ちは、オレにはわかんなかった。後先どーのよりも、目の前の苦しんでる人をどうにかしたい。その気持ちが大事だって、知らなかった。“枷になる”、オレはそう思ってたから、なんも言われねーように強くなるって決めた。」
ごめんなさい……。
わかんない。
え?? なに? これは……“男の勝手な美学”??が、始まりました?? 闘いばかりの戦闘能の理論ですか??
「でも……飛翠。お前を見てたらなんかわかった。足元引っ張る面倒臭いヤツを護れるのが、強えーんだって。フツーなら切り捨てんだろ? 邪魔だ。」
え??
悪かったな!!足引っ張る邪魔者で!!
私はカチンときたが、グリードさんの真剣な目を見て、言葉を飲み込んだ。
「けど、ソイツらはお前に護られてる事を知って、強くなろうとした。本当の強さってなんなのか、それはまだわかんねーけど、お前ら見てるとわかる。“強弱”ってのはチカラじゃねーんだな。って。」
グリードさんはそう言ったのだ。
私はそれを聞いて目を丸くしてしまった。
でも、飛翠は
「いや? “チカラ”だろ。」
と、そう言った。
え? と、グリードさんは目を丸くしたが、飛翠は笑ってた。
子供みたいな笑顔をグリードさんに向けた。
「チカラがねーと護れねー。けど、そのチカラをどう使うかだろ。根本は“使う奴の気持ち”だ。」
飛翠はーー、そう笑ったのだ。




