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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第5章 秩序が崩れるとき
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第8話 遅すぎた真実

ちょっと待って??


私達が“お尋ね者”になったのは、本当はイレーネ王が言ったから。そんでもって、黒崎さん……“月読書店の店主”は、コッチの世界の“秩序の大魔導師ゼクセン”で、イレーネ王が“殺してしまった王妃様”の犯人を身代わりとして、連れて来るためにウチらの世界にいた。ってこと??

で、何だか知らんけど“魔力封じられたゼクセン”さんは、私達に出会い“ビビッときた”と。

おいおい、、、昔のげーのー人の婚約会見か?? ビビっときた出会いなんて早々あるかい!? 世の中にそー簡単に運命とやらが転がってるワケないでしょーが!!


私は頭をう〜〜〜ん。と、抱え込んでいたのだろう。眼の前にいるシロくんが心配そうに聞いてきた。

「だ………大丈夫ですか??」

とても、いや………かなり怯えていた。

彼は私を見てそのふさふさのしっぽと耳を倒していたのだから。

「えー……大丈夫。」

ここで、下がる訳にはいかない。

いつも、何が何やらわかんなくてこの世界の流れに簡単に流されてきたのが私だ。

もう、流される訳にはいかん!

聞くのだ! 今度こそ!

「ゼクセン………。」

私はそう言ったが、なんとなく

「黒崎さん。」

その名前を呼んだ。

この世界ではまだ日が浅いけど、てか、殆ど放置で一緒にいなかったし。

私の居た世界では、2年だ。

ずっと彼と、会っていたのだ。あの街中の古書店で。

「私達を殺すつもりだったの? その為にここに連れて来たの?」

私はそう聞いた。

ゼクセンさんーーは、その顔を伏せたが。しっかりと私と飛翠を見た。

「そうでなければ、ワシが殺されていた。ワシの魔力を封じ込め、お主らの世界に“飛ばした”のはイレーネ王だ。だが、それは“追放”ではない。“脅迫”だ。身内を犯人に仕立て上げよ。その代理を探せ。」

ゼクセンさんはーー、みんなを見据えた。

「彼のその困惑したような顔に、ワシは先ず、世界の秩序を思い描いた。この世界で“王家が身内を殺生するのは大罪”だ。如何なる理由があっても。」

ゼクセンさんの言葉に私達は、彼を見つめた。

「本来なら……、ワシは中立。どの国にも平等に接しなければならない。だが、ワシは、“ティア王女の指導魔導師”じゃった。」

ゼクセンさんは、頭を抱えた。

更に続けた。

「幼き頃からずっと面倒を見てきた。だが、その時、イレーネ王は“ティアを殺すか身代わりを仕立てるか。”ワシに、そう聞いてきた。その時もう既に、イレーネ王が、“闇魔石”を継承していると知らなんだ。ワシにはもうーー、選択肢がなかった。」

ゼクセンさんはーー、静かにそう言った。

その頭を抱えたのだ。

「ちょうど……“異世界転移魔法”の研究をしていた。そこで、お主らの世界に行ける様になってたのも事実。そこに言われたのが“イレーネ王からの身代わり”の話だ。ワシは……魔力を奪われ、どうにか異世界のお主らの世界に向かい、機会を待っていた。この世界の者でなければ、誰でもいい。素性がバレない者を。」


私も飛翠もゼクセンさんに見つめられて、目を見開いた。


「始めて見た時に驚いた。お主らはそっくりだだった。“シェイド様とティア王女”に。」


ゼクセンさんはその時を思い出したのか、感慨深そうな顔をしたが、直ぐにため息ついた。


「だが……ワシのした事は間違っておった。お主らはこの状況にも、仲間を作り立ち向かい成長した。本来なら“鍛冶屋、魔石屋”で武器も強化出来るものを、“精神(こころ)の成長”と敢えて……難しいものにした。」

ゼクセンさんは、私と飛翠を見てハッキリ言った。

「そんな不確定要素で強くなれる訳がないだろう? 普通なら投げ出す。他の武器を買う。それはわかるだろう? この世界にいれば、武器の話は幾らでも聞く。だが、お主らはそれを未だ持っていてくれる。」

ゼクセンさんは、私達を真っ直ぐと見ていたが少しその瞳は揺らいだ。それは、うるっとした。そう見えた。

「……ワシの思惑飛び越え……お主らは、成長した。」

ゼクセンさんはそう言うと、頭を抱えた。

はぁ。

と、ため息ついた。

「何よりも……“大魔導師ゼクセン”。お主らがワシを信じてくれた。」

ゼクセンさんは、自分の隣にいるシロくんに目を向けた。

「お主が使った“魔法”は、ワシが伝承したものだな?」

と、そう言ったのだ。

シロくんはロッド握りながら

「はい!」

と、笑っていた。

ゼクセンさんはそんなシロくんの頭を撫でた。

「奴隷として生活していた環境から、逃がす為に教えた魔法。それを、お主は自身ではなく、他者に使った。その事でお主は罪人となり大変な苦労をしたな?」

私はその言葉に驚いた。

目の前のシロくんを見つめた。

「はい、、、でも後悔はしてません。その事がキッカケで国は動き、ゼクセン様が救いの手を差し伸べてくれたのですから。」

シロくんは笑った。

私はこの時……“慈愛”って本当にあるのだと思った。そんなもの自己満足だと思ってたから。

「……シロ……、お前が蒼華ちゃんと飛翠くんに出会ったのも……、最早“運命”なのかもしれん。」

ゼクセンさんは、私達を見ると微笑んだ。

「いえ? 僕が運命です。僕がこの方たちと出会えた事が、凄いことなんです。でも、それはやっぱりゼクセン様のお陰です。僕はやっぱり、ゼクセン様の様な魔導師になりたいです。」


この場の全ての空気を、彼は支配した。

元、奴隷でいじめられっ子のコボルト。

シロくんは、確かにもうとてつもなく強い勇者だった。


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