第3話 不屈の迷宮
久し振り過ぎて申し訳御座いません。
もし。宜しければ覗いてください。
高見燈
「まさか……本当にいるとは。」
えっ??
グロームさんや私……とにかく、戦いが終わった後だ。
その声に誰もが振り向いた。漆黒の髪、何よりも気品ーー、全てが彼を美しいと言っている。
立ってるだけで、その場が光輝いている様に見えた。
「グローム……。」
その隣にいるのはセピアのあの“手配書”ではわかんなかったけど、流れる様な金髪の女の娘。
私は、わかってしまった。
「ウソでしょ……? “ティアさん” ? え? シェイドさん?」
似てるかどうかなんてわからない。眼の前に鏡があればわかるだろう。でも無い。
けど、2人を見てわかった。
いや、確信した。
「ティア様……。」
その足を……いや? 膝を折り床に膝まづいたのは、カーミラさんだった。
しかも、深々と頭を下げたのだ。私も、いえ、ここにいる誰もが“現れた2人”に、何もかもを奪われた。
感情を。
「グローム……、全てわかっていての判断か?」
その、漆黒の髪をした騎士は言った。低いその声で。私達を見るその眼は深紅、美しい宝石みたいだけど……怖い。シェイド……さん? なんだよね?カーミラさんは、“彼女をティア様”と言った。隣にいて、剣を構えているのは……“彼女を護る騎士”。シェイドさん……。
見ていればわかる。
美しいお姫様を護る様に寄り添い、剣を構え……大人数の私達を“威嚇”している。
大切な人を……護る男だ。
この人は。
「お前か? やっと会えたってワケだ。」
でも、そんな何とも言えない空気を断ち切ったのは、飛翠だった。
大剣、えっと、、、“勇敢な心”だっけ??
飛翠にぴったりなその剣を、構えて美しい騎士を彼は、、、睨みつけた。
「なるほど、お前達か。」
シェイド……さんは、私よりも飛翠を見た。深紅の眼が、飛翠を見つめていた。
「シェイド、今は。」
ティア王女はーー、そんなシェイドさんをまるで制するかの様に……、前に出たのだ。
私はーー、ただの高校生だ。
でも、萎縮する人、いや女の人に会った事はない。綺麗な人は何度となく見てきた。都内には、腐るほどいる。いや? 私の住む世界には、沢山いる。憧れるほど。
でも、眼の前に出てきたその人は、ただ美しいだけではない。
真っ白な……ああ、女神が着ていた昔のドレス。それを纏ったブロンドの髪をしたその人は……、私に持っているロッドを向けた。
話を聞いて、少し会ってみたい。と、思っていたその人は金色のロッドを向けた。
「何の為に歯向かう? 邪魔をするならこの場で殺します。」
美しい女神はそう言ったのだ。
私だけではなかった。
誰もが……、彼女の言葉に目を見開いた。
金色の長い髪、金色のロッド。
白いギリシャ神話に出てくるあの女神が着る様なドレス……。それを着て颯爽と彼女は、私達の前に立った。
これだけの屈強な男たちがいるのに、その……“私に似たと言う顔”は、崩れない。
「時間がありません、歯向かうと言うなら貴方達を……。」
彼女の優しい口調。だが、向けられたロッドは、白く光輝いた。
それは、ここにいるネフェルさんを始めとする、皆を驚かせるものだった。
白い光に驚き立ち竦んだ訳ではない、その光の中から出てきた騎士。
それに、誰もが驚き、そして目を見開いた。
「……“オーディン”……。」
そう言ったのは、ネフェルさんだった。
白きユニコーン、それに跨がる銀髪の大柄の騎士。そして、手に持つレイピアに似た長剣。美しいその白銀の鎧を着た者がそこにいたのだ。
「“戦神オーディン”! 殺せ!」
それは、金色のロッドを天に掲げた美しい王女様の一言だった。
「えっ!?」
私はその美しい王女様から放たれたその言葉に、耳を疑った。
でも、白きユニコーンに跨がる騎士は、剣を突き刺しながら走って向かって来たのだ。
大きい!
近づくとよくわかる! その右手に持っている剣すらも……、巨大だ。
あんなので突き刺されたら、私も飛翠も……、皆、、、死んでしまう!!
いやだ!!
私はロッドを向けた。
「“紅炎の野獣”!! “深海の乱暴者”!!」
そう、、、私は叫んでいた。
颯爽と剣を突き刺し向かってくる騎士……オーディンを前にして。
私の前に彼らは現れる。
炎とそして水飛沫に包まれながら。
「“メルトストリーム”!!」
オーディンの攻撃は、旋風そのものであった。剣を突き刺しながら、ユニコーンで向かって来るのだが、それはまるで突風!
それをイフリートは、炎の嵐でまるで壁の様に私達の前に護る様に放った。
更に、リヴァイアサンは水の津波だ。
それをユニコーンで駆けてくるオーディンに、放ったのだ。
津波は、オーディンの身体を飲み込む。
高波がまるで人を攫うように。
「やった??」
私は、波に飲み込まれる様に流されてゆくオーディンを見て、そう叫んだ。
だが、飛翠が叫んだ。
「蒼華!!」
私はーー、その声に顔を向けた。
でも、隣で彼は飛んできた“黒い矢”に、その腹を突き刺されて……、吹き飛んだ。
「飛翠っ!!」
叫んでいた。
眼の前に彼はその胸元を矢に突き刺されて、倒れたからだ。
「“生命帰還!!」
私がーー、倒れ込んだ飛翠に手を貸すよりも先に、ネフェルさんが叫んでいたのだ。
「え?」
私はわからないが、彼の“必死”な声にネフェルさんを見たのだ。
だが、そんな事よりも地面に倒れた飛翠が、金色の光に包まれたのだ。
そしてーー、
「死ぬな! 私はその為に来たんだ!!」
ネフェルさんは、神道書を開いたままそう叫んでいたのだ。
私はようやく、飛翠が……“ヤバい”と知った。
魔法の世界だ。
これまでも色んな意味でヤバい事はあった。けれども、私達は生きてきた。それは、皆が助けてくれたからだ。けど、今、、、飛翠は、ヤバいってことなんだ。
そう思っていたら……
「“メルトストリーム”!!」
「“深海の悲鳴”!!」
イフリートと、リヴァイアサンがティア王女とシェイドさん、オーディンに攻撃していた。
「“天地無心”!!」
シェイドさんにハウザーさんが、剣を振り下ろしていた。
紅炎の嵐と、水の波動と、そしてーー、ハウザーさんの斬撃が、ティア王女とシェイドさん、戦神オーディンに降り掛かっていたのだ。
私はーー、眩く光る閃光を見つめた。
飛翠の身体を抱きながら。
「蒼華ちゃん!」
でも、ネフェルさんがそう叫んだ。
私はその彼の必死な眼に、飛翠を離し……、地面に放置して、立ち上がっていた。
向けていた。ロッドを。
爆風も閃光も消えたその遺跡で、私は彼女にロッドを向けた。
「なんなの? 飛翠をやったのは魔法?」
そう、アレは何だったの?
オーディンの攻撃ではない。
だけど、飛翠は黒い矢で攻撃された。
すると、シェイドさんが剣を向けた。
「俺だよ。」
そうーー、言ったと思ったらシェイドさんはその剣を振り下ろした。
黒い太刀ーー。一直線にその刃の太刀は飛んできた。まるで、ブーメラン!!
「バカ者っ!!」
その声に私は目を見開く。
私の前に立ちはだかったのはーー、紅炎の神獣、イフリートだった。
「……!?」
でもーー、カレはその太刀筋を受け消えた。
「イフリート!?」
私がーー、叫んだ時、紅炎の神獣は粉々に砕け散った。
そう、まるで……、ガラスが割れた様に。