表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第5章 秩序が崩れるとき
83/131

第1話 雷鳴の神殿

 ーーラナティア大陸は本当に大きな大陸だった。船で見たけど全景がよくわからなかった。


 とにかく広い大陸。それはよくわかった。船の上からでも見てるだけで、ほけ〜っとしてしまった。


 それにしてもこのイシュタリアは、自然が凄い。緑ばっかり。四季と言うのはないから常に、緑に囲まれているらしい。


 あ。雪は降るみたいだね。北の方とか。そこら辺は、私達の世界と変わらないのかな。南は暖かく……、北は寒い。だそうだ。


「蒼華。行くぞ。」

「あ。うん。」


 私は飛翠に呼ばれ、船を降りた。


 ラナティア大陸に上陸。ここに雷鳴の神殿と不屈の迷宮があるそうだ。


 何だか……名前だけでもおっかない。



 ▷▷▷


 雷鳴の神殿ーーは、その名の通りだった。


 大きな神殿と言うか……遺跡だ。写真とかでしか観たことないけど……ローマ時代の神殿みたいな建物だった。


 けど……それよりもこの


 ピカッ! と光りゴロゴロと鳴る雷がとてつもない。ひやっとするほど大きな音だし、絶対にどっかに落ちてる。


 空も稲光がずっと走ってて、雷が鳴り止まない。薄暗い空は黒と灰色。大陸の中にある深い森。そこを抜けた所に、この神殿はあったのだ。


「ねぇ? なんで森の中に雷の神殿があるの? フツーに落ちるでしょ。」


 私は余りにも轟音なので恐ろしくて、飛翠の腕を離せないでいた。いつもの事なので飛翠は、何も言わないけど。


「落ちねーの? ネフェル。」

「ええ。大丈夫ですよ。この雷は“支配者”がいる証です。威嚇みたいなものですね。」


 飛翠の声に前を平然と歩くネフェルさんは、そう言った。


「だと。」

「威嚇ってなに? 雷オヤジなの? もしかして。」


 ピカッ!! と、光った。それも真後ろで。直ぐにゴロゴロと鳴った。


「ひゃあ! ちょっと! 怒ってんの!?」


 ぎゅうっと。私は飛翠の腕にしがみついた。


「かもな。」


 飛翠はそんな私を見ながら笑っていた。


 神殿の中に入ると少しは雷の音と光が、弱まった。気がする。


 でも……広間みたいな所に出るとそこにはすでに、大きな男の人がいた。


「え? 人間??」


 私は驚いてしまった。今まではどっちかって言うと獣系。それに鳥系の神獣だったからだ。


 この人は浅黒い肌をした男の人だ。それに流れる様な紫の髪。凄くキレイな顔をした大柄な人だった。服装も布を巻いたもの。ズボンも履いてるし、足は裸足だけど。


「おお。来たな。待っていたぞ。我が名は“グローム”。お前か? 救世主。」


 ノースリーブみたいな布の服。それを全身に巻きつけている身体はとてもゴツい。


 筋肉むきむき。格闘とかやってそう。


「はい。」


 私はみんなから離れた。いつものごとく……。


「蒼華。」


 飛翠の声に私は振り向いた。


「無茶苦茶すんな。」


 心配そうな顔をしていた。珍しく。いつもは行って来い! みたいな顔をしてたんだけどな。


「うん。大丈夫。」


 でも……きっと……敵わないから、無茶苦茶するしかなくなるよね。


 ふぅ。


 この瞬間はやっぱり緊張する。試合前みたいで。と言っても……体育の授業でやるバスケとか、バレーとかしか経験ないけど。


「雷の継承者。手合わせは簡単だ。わかっていると思うが、どちらかが倒れれば勝負あり。いいな?」


 グロームさんは仁王立ちだ。それだけでも威圧感がハンパない。


「はい。宜しくお願いします。」


 私はロッドを持ちそう言った。


 すると……グロームさんは右手をあげた。


 え? なに?


 バチバチ……と、右手が紫色と青白い光に包まれた。まるで稲光りだ。それは私とグロームさんを、ドーム。包むように広がった。


「な……なんですか!?」


 紫色のドームはまるで円形状に、私達を包んだのだ。


「傍観者に言っておく。これは結界だ。邪魔はするな。」


 グロームさんはそう言ったのだ。


「……結界!?」


 ちょっと待って! こんなのははじめてですけど!? 紫色と青白い稲光の様な光のドーム。なんだか電撃みたいにバチバチと、流れてますけど??


「闇魔石を相手にするんだろう?」


 グロームさんは手を下ろしたけど、既に右手と左手は、紫色の円の光に包まれていた。


 電流の様に青白い光も流れてる。雷の力だ。


「……そうです。」


 ドームの結界に閉じ込められてしまった事で、私はかなり。動揺していた。


「ならば……本物の戦い。そのつもりで来い。」


 グロームさんの濃い紫色の眼が、凄く鋭くなった。


 えっと……雷には、地。大地。私はタイラントから継承しているから……大地の魔法を使えばいいんだね。


 私はグロームさんにロッドを向けた。


「行きます! “大地の怒り(アーススラング)”!!」


 タイラントから受け継いだ魔法だ。岩石の連射魔法だ。大きな岩石は5連発。グロームさんに向かって行く。


 まるで落石する岩の塊。それが飛んで行くのだ。


 こう見るととてつもなくデカい。


「“雷鳴の轟き(サンダーボルト)”!」


 グロームさんから放たれたのは、雷の稲妻だった。でもそれはとてつもなく広範囲で、頭上から降り注ぐ。


 グロームさんは私の放った岩石ではなく、私に向けてその稲妻を放ったのだ。


 バチバチと音を立てながらまるで雨。稲妻が幾つも、私の頭の上から電流の様に落ちてきたのだ。


「え? ちょっと! どうすればいいのこれ!?」


 最早……私には避けることなんて出来なかった。


「きゃあっっ!!」


 痛いーーを、通り越した。熱い。身体がビリビリとまるで何十回も同じ所を、突き刺された様な痛み。それに熱だ。


 焼ける様な熱が全身を覆った。


 グロームさんが岩石連射をどうしたかなんて、見てる余裕はなかった。


 やばい……。


 私はそのまま地面に倒れたのだ。ビクビクと全身が、痙攣してるのがわかる。


 静電気でバチっとなったあの痛さ。あれが数十倍。全身を駆け巡った。それも一瞬で。


 右手が黒く煤みたいになってる。


「蒼華ちゃん! シロくん! 回復魔法を!」


 ネフェルさんの声が聴こえた。


「手出しはするな。そう言った。これが闇魔石を持つ“ヤヌス”との戦いだと思え。救世主。回復はして構わん。それも戦いの基本の一つ。己の力で向かって来い。」


 グロームさんの声が聞こえる……。てことは、私の魔法は消されたってこと?


 回復……


「……水流の雫(アミナス)……」


 呟く様な声がでた。でも、ロッドは光る。蒼い光が私を包むのがわかる。


 暖かな流れ。回復魔法がかかったんだ。


「そこのガキ。俺を睨んでもヤヌスは倒せない。憎むなら“非力な救世主”を、憎むんだな。」


 ガキ? あ。飛翠ですかね?


 回復魔法が効いてきたので、グロームさんの声もはっきりと聞こえるし、私の身体の感覚もすぅっと、元に戻っていた。


 相変わらず……スゴいな。回復魔法は。


 さっきまでの痛みなんてどこかへいった。私は立ち上がる。


「いきなり全開なんですね?」

「当然だ。何度も言わせるな。ヤヌスだと思え。」


 グロームさんは私に右手を向けた。


 私も構えた。と……思ったら、グロームさんは向かって来たのだ。


 えっ!? ウソでしょっ!? まさかの殴り合いですかっ!? ムリ!!


 向かって来たと思ったらバッ!! と、ジャンプした。


「“アーススラッグ”!!」


 私はロッドを向けて大地の魔法を放った。でも、岩石の連射。それを前にヒュッ!! と、グロームさんの姿が消えた。


 えっ!? ちょっと!!


 岩石は相手のいない空中で飛び、そのまま地面に落下して粉々になっていく。なんてこと!!


「相手が魔法で攻撃してくるとは、限らない。」


 そんな声が後ろから聴こえた。


 と、思った時には私は背中にとてつもない痛みを感じた。そのまま前にふっ飛ばされた。


 蹴り!? 蹴られたーー、それはわかった。でもその衝撃は、受けたことないぐらい。


 ボーリングの玉でも投げつけられたみたいな……そんな、重くて痛い衝撃。


「蒼華! クソが! 手出しすんなら俺が相手だ。さっさと妙なモンを解け。ブチ殺す。」


「見てられないなら目を瞑っているんだな。」


 飛翠とグロームさんの声が聴こえた。


 飛翠……。待って。これは私の戦い。


 痛くて聞こえてはきても……動けない。


 これが……戦い。あのイレーネ王なら……こんなもんじゃすまないよね。きっと。


「……アミナス……」


 絶対……背骨折れた。と思ったので、回復魔法を呟いていた。痛みが尋常じゃない。


 動けないってことは骨が折れたんだ。でも……、生きてるから大丈夫だ。


「気絶しなかったのは褒めてやろう。」

「……お陰様で。」


 はぁ。この軽口がまだ出てくるあたり。自分でもスゴいと思う。成長したな。自分。


 逃げようと思わないんだから。前なら逃げたくて堪らなかった。


 私は立ち上がる。


「飛翠。大丈夫だから。」


 そう……とりあえず、言っておいた。飛翠はドームの外で……おっかない顔をしているけど。


 グロームさんは両手を私に向けた。


 これは何かくる。どんな魔法なのか知らないし、使ったことないけど、


「“大地の揺らぎ(アースフリッカー)”!!」


 そう。もう一つ。貰ったんだ。


 ズズッ……と、グロームさんの立つ地面が揺れた。そこから岩の槍がにょきにょきと生えたのだ。それはもう、グロームさんを突き刺さんとする様に、幾つも。


「“魔法防御(シェルミナ)”!!」


 私の方に手を向けていた筈のグロームさんは、咄嗟だったのかそう叫んだ。


 白い光に包まれたグロームさん。それは円球の光。岩石の槍がそれに当たり砕けていく。


「なにそれ……」


 さっきの魔法もこれで……ふせいだってこと??


 あ。イレーネ王が使ってた。魔法を防ぐ力。鉄壁の護りみたいなやつ。あれと同じ?


 グロームさんは私の魔法が消えると、笑った。


「まだシェルミナは覚えてない様だな。」


 ぎゅっ。


 私はロッドを握りしめた。


 目の前のグロームさんの顔から笑みが消えた。


「救世主。魔法防御を使えんと死ぬぞ。ここで。」


 私はーー、今までに無いぐらい……やばい。と、本当に思った。


 どうなる?? 私!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ