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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第21話 樹氷の精霊〜ライムライト〜

 ーーやった!?


「やったか?」


 爆風吹き荒れる中で、私がそう思った時だ。飛翠の声がした。


 ふと隣を見ると


「えっ!? なんでいんのっ!?」

「……なんとなく。」


 飛翠がいたのだ。ビックリだ!!


 なんとなくってなに!?


 だが、爆風は炎と氷。もう何だかわからない。吹雪なのか熱風なのか。それが、目の前で少しずつ晴れていった。


 爆風が晴れたことで、視界は良好。白い毛に覆われたアイスタイガー。


 …………。ああ。ライムスだった。それが、姿を現した。白い吹雪。未だにそれを身体に纏って、健在。


 つまりーー、私の紅炎の魔法は彼を倒すことが、出来なかったってことになる。


 でも、フラっとはした。右足が浮いた。けど、どーんと、氷の地面にその前足を踏ん張る様に着いたのだ。


「忌々しい小娘!!」


 ライムスは怒り。すべてをその口元に集めているかの様だった。


 白い吹雪纏う氷の弾丸。あれを放つんだろう。


「飛翠! どいてて!」


 私はロッドを持ちそう言った。


 巻き込まれるかもしれないからだ。えぇ。もう。容赦ないっすらね。この方たちは。


「どけ? 誰に言ってる。ふざけんな」

「はぁ!? ここで俺様ださないでくれますかっ!? そんな場合じゃないんですけど!?」


 なんなんだこの人わっ!! いや見て! ライムスは、樹氷の弾丸を放ちます! 溜めてますから!


 がしっ。と……私は右肩掴まれた。見上げれば、飛翠はライムスを睨んでいた。


「いいからさっさとブッ放せ。俺はここにいる。」


 え? いや……。それは……嬉しい一言だけど。


 ふぅ。


 飛翠が隣にいる。それは私にとっては“力”になる。息を吐いた。


 私はーー、今、なんの為に戦うのか? と、聞かれればこう答えるだろう。


 好きな人を守りたい。


 こんな漠然とした理由しか思い浮かびません! だって私はーー、都内の女子高生です。戦いなんて知らない……普通の人間です。


 だから。今は、隣にいる“大切な人”。その人を守りたい。


「ファイアーボール!!」

「ライムボール!」


 私の紅炎の弾丸と樹氷の弾丸。


 それが同時に放たれた。


 ぶつかる! お互いの弾丸が!


 でも、ライムスはその後ろから


「“樹氷の怒り(ブリザード)”!!」


 やっぱり! 必殺技を放ってきたのだ。猛吹雪! 更にはたくさんの氷の槍だ。


「ファイアースストーム!!」


 向かってくる吹雪に私は紅炎の嵐。熱風の嵐を突き返した。


 でも、こんなのじゃもちろん。防げない。私の紅炎の弾丸だって、もう消えてしまった。力が弱まってる樹氷の弾丸と、強い猛吹雪が私達を襲った。


「きゃあっ!!」


 私と同じように、飛翠もふっ飛ばされていた。


「これで終わりだ。」


 ライムスは地面に吹き飛ばされ、倒れた私達の前で、更に白い光を口元に集めていた。


 低い声が響いた。


 私は吹き飛ばされ身体から血を流していた。それはわかる。傷だらけだ。飛翠も隣で全身、傷だらけ。


 回復魔法……。でも、くる。


 ライムスからの攻撃がくる気配。どうしたら。


 回復魔法を放ってもライムスからの攻撃魔法は、防げない。そんな時間ない。けど、飛翠……。


 地面に倒れて私と同じ様に動けないでいる。


「アミナス!!」


 迷うことなんてない。私が下した決断は、傷だらけの飛翠を救うこと。だから水流の回復魔法を放った。


 でも


樹氷の槍(ライムトール)!!」


 ライムスのその声が聞こえた。あれは……串刺しにする氷の槍だ!!


 でも……



「もうやめて! このままでは死んでしまうわ!!」


 そんな悲鳴に似た声が、聞こえたのだ。


 と……思ったら……その人は、私達の前に現れた。


「“樹氷の怒号(ライムクラッシャー)”!!」


 さっきまでの可憐?? な声とは違う。え? 怒ってる??


 女性の声なんだけど、怒鳴るような声。そこにはたまた、唸る様な風の音。


 うわ!! トルネードだ!


 氷と吹雪の合体した様な勢いのいいトルネード!


 それは女性の両手から放たれていた。それも巨大な渦を巻いて、ライムスの吹雪を弾き飛ばしたのだ。


 下から上に突き上げる竜巻じゃない。前方に向かって行く消防の放水。そんな感じのトルネードだ。


 そしてそれは、ライムスを吹き飛ばした。


「え……ウソでしょ?」


 私は……白い毛に覆われた巨体のアイスタイガーが、氷の壁にぶち当たったのを見た。


 な……なんなの? え? あのライムスがカンタンに吹き飛ばされましたけど!?


 キラキラと光る身体は霧氷に覆われていた。目の前にいたのは、白いワンピースドレスを着た女性。


 しかも……白銀の長い髪。それを漂わせながらちょっと、大きな女性はそこにいた。


「ダメよ。ライちゃん。お痛がすぎるわ。」


 へ………………???



 ラ……ライちゃんっ!?


 私達はアミナスのお陰で、完全復活だ。ずずずっと、氷の壁を背中で引きずりながら落ちてくるライムスを、見上げていた。


「“樹氷の精霊(ライムライト)”」


 そう聞こえた。


 振り返るとフォルスさんが、


「精霊です」


 と、再度。言ったのだ。


「えっ!? 精霊!?」

「まじか。強ぇーのか。」


 飛翠もビックリだ。そりゃそーだ。あのアイスタイガーが、今もなお、地面からよろよろとしながら、立ち上がっているのだ。


 あんなに強いあの! アイスタイガーが!


 この美しくナイスなバディな女の人にやられてしまったのだ。


「ライム……邪魔をするな。」

「もういいでしょ? 勝負はついてます。これ以上やると……」


 ゴゴゴ……と、ライムライトさんの全身が氷の塊に覆われた。ピキピキーんと、それはもう鋭く尖る氷の槍みたいに。


「お仕置きよ?」


 それに声が……ワンオクターブ低い。キレた女の声だった。


 ひらひらと白いワンピースドレスを揺らしながら、そう言ったのだ。


 顔はきっと般若みたいなんだろうな。血管ビキビキなんだろうな。


「なんなの?」



 私がそう言うと


「嫁だ。」


 ライムスは頭をふるふると振りながら、そう言った。


「えぇっ!? 奥様は精霊ですかっ!?」

「鬼嫁か。ガチで。」


 私と飛翠はビックリだ。


「大変でしたね。救世主。本来なら口を挟まないつもりでしたが……やりすぎです。」


 ふわっと、その人は振り向いた。綺麗な人だった。肌は真っ白で、まるで雪。


 それに眼がキラキラとやっぱり、宝石みたいに青く光ってる。ちょっと……雪女チックだなぁ。と、思った。


「救世主だとは思えん。」

「それでも救世主ですよ。ライちゃん。」


 夫婦なのはわかるけど……ライちゃんって。


 ぷっ。


 不貞腐れた様な顔をしたライムスに、私は吹き出していた。


 なんだか可愛かったので、大笑いしてしまった。


「笑うな! 小娘!」

「ライちゃん!」


 もーやだぁ。この人たち! なんなの? 笑えるんですけど!


 さっきまでの勢いなんてなくなってしまった。今はただ、叱られたペットの仔猫みたいになってしまった。


 しゅん。と、頭を項垂れさせていたのだ。



 ▷▷▷


「やっぱり来ちゃいましたか。」

「貴方も止めなさい」


 ライムライトさんは、カーミラさんが現れるとそう言ったのだ。


 おかしなことにライムスは大人しく、おすわりしてしまった。


 ライムライトさんはカーミラさんより、少し大きい。2メートルぐらいかな?


「私は中立です。ですが、今回はいささか支配者の私情が見えましたね」


 カーミラさんの鋭い視線は、おすわりするライムスに向けられた。


 ライムスはふんっ。と、鼻息ふくと地面にフセた。寝転がった。


「とてもじゃないが……ティアとは別物すぎる。」


 ライムスはそう言ったのだ。


「どーゆう意味よ!」

「ティアは聡明で美しい。お前はがちゃがちゃだ。」


 はぁっ!? 人をがちゃがちゃ!? なにそれ!

 意味わかんないし!!


「あー。ウマいな。“ガラクタ”か。」

「おい!!」


 私は飛翠を睨んでおいた。


「ティア王女は……“アズール魔導館”。そこから少し先にある“不屈の迷宮”。そこに向かったそうですよ。」


 ライムライトさんがそう言ったのだ。


「不屈の迷宮?? なんですか? それ。」


 と、私が聞くとカーミラさんは、飛翠を見た。


「これから救世主の蒼華は、“雷鳴の神殿”にて、グロームに会う。その先で飛翠。お前が会うハズの“戦士”。“バルクーザ”。シェイドはその者に会いに行ったのだ。」


 カーミラさんはそう言った。


「え? それってシェイドさんが……その人の力を求めてるってこと?」


 私がそう聞くと


「そんな訳ないだろう。シェイドはイレーネの騎士だ。素人じゃない。」


 後ろからライムスが馬鹿にした様な声で、そう言ったのだ。


 ちょっとかちん。とくるね。


「救世主。ティア王女とシェイド殿は、逃げ回ってる訳ではない。彼女らは“力”を集めている。イレーネに歯向かう為に」


 ライムライトさんは、そう言ったのだ。


「ティア王女は、“光魔石”の継承に失敗したと聞いています。お父上の“闇魔石”。その力に対抗する力です。それを継承出来なかったことで、支配者たちに会い、力を集めている。対抗する為に。」


 と、ライムライトさんは続けたのだ。


「なるほどな。で? その不屈の先とやらを仲間にしようとしてる。そう言いたいのか?」


 飛翠がそう言うと


「ええ。彼は正真正銘の戦神。ハウザー氏やガルパトス氏とはまた……異なる強さを持っています。何故なら……“剣の支配者”だから。」


 と、ライムライトさんはそう言ったのだ。


「え? それって……神獣ってこと??」


 私がそう聞くと、


「そう。この先……お前達は、最後の試練に向かってもらう。バルクーザがどうなっているかはわからない。それを確かめる為にも“不屈の迷宮”を、目指しなさい!」


 びしっ!!


 と、カーミラさんは黒い長い爪。その右手を向けた。私達は指さされたのだ。


 目指しなさい……って。いきなり命令ですか??


 とにもかくにも、次なる目的地は、不屈の迷宮と雷鳴の神殿。


 最後の試練が待っている!! 私達、破天荒コンビを!!

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