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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第20話 私は負けない!!〜蒼華のチカラ〜

 ーー目の前にいるのは支配者と言う名前の、魔物だ。私はそう思うことにした。


 えげつない! 本気で殺しそうだし!


 樹氷の弾丸(ライムボール)を、ライムスは更にもう一発! 撃ってきたのだ。コッチは二発連射でどうにかしようと、思ったのに!!


 えぇいっ!! こうなりゃヤケじゃい!!


「くらえ! ファイアーボール2連発!!」


 ええもう。撃ってやりますよ! こうなったらブッ倒れるまで撃ってやろうじゃないの!!


 と、半分はヤケ。そして半分は……“負けたくない” これだったのだ。私にしては珍しく強く思った。


 ドドーンと樹氷の弾丸と紅炎の弾丸は、ぶつかる。私のファイアーボールはあいつのライムボールに、ぶつかって煙みたいに消えてしまう。


 でもその後にもう一発が追いつく。


 それが少しは体当たりを頑張ってくれるんだけど、ライムスも追い撃ちみたいに撃ってきたから、結局消えてしまった。


 氷の弾丸は吹雪を巻き起こし、炎を消してしまう。普通なら溶けるんでしょうね!


 でも。負けてません! 私は更に


「ファイアーボール!!」


 2連発を撃ったのだ。


「無茶だ! 蒼華ちゃん!」


 誰かが叫んでる。でもそんな事を考えてる余裕はない。


 目の前では樹氷の弾丸を貫かんと、私の紅炎の弾丸は吹っ飛んでいったのだから。そりゃ。威力は負けてます。ええもう。大きさだって一回り小さいですよ。


 でも! 倍撃ちしてるんだ。コッチは! 足せば同じだけの大きさになる!


 と、そんな事がありえるのかどうかはさておき。なんの確証もないのに、私は信じ切っていた。


 自分のチカラを。ゼクセンさんに貰ったこのロッドのチカラを。


 だって。


『貴女たちのものだ。特別なものだ。大切にしてください』


 フォルスさんはそう……言ってくれたんだ。特別だって。そう。こんな世界にきていっちょ前に、ロッドなんか持って……魔法使って……。


 昔、憧れたあのふりふりの魔法少女とまでは、いかないけど。私は“魔法使い”なんだから!


「小娘! 面倒だ!!」


 樹氷の弾丸が破裂したのだ。私の二発の紅炎の弾丸に、ぶつかって。そうか。威力はないけど、ぶつかった事でちょっとは、アイツの力を削ったんだ。


 でも、ライムスは怒り狂ったように怒鳴ると、浮かんだ。


 カッ!! と真っ青な眼が光る。


 真っ白な身体が吹雪に包まれた。


「“樹氷の怒り(ブリザード)”!!」


 なっ!? なによ! それ!! 本気だしたってこと!?


 ライムスが放ってきたのは、猛吹雪。それだけじゃない氷の槍だ。それも殆ど岩みたいなやつ。槍投げの選手が投げたみたいに、吹雪に包まれながら、吹っ飛んでくる。


 それも数も多ければ太いしデカい!! 


 この突風!! 氷つくみたいに冷たい!!


「ホント! イヤなやつ!! もうちょい優しくしなさいよね!! ファイアーストーム!! 豪華版!!」


 私はファイアーストームを連射した。


「蒼華ちゃん!!」


 吹雪と炎の嵐。その中でまた……誰かが、私を呼んだ。でも、目の前で紅炎の嵐と吹雪。更に氷の槍たちはぶつかった。


 冷たいんだか熱いんだかわからない突風が、私を襲った。


 氷の槍は飛んでこない! 消えたんだ。私の紅炎の嵐で。でも……猛吹雪は止まない!


 ギュッ。


 私はロッドを両手で握りしめた。


 もういい! ここで終わっちゃったとしても! 私はこの性格悪いアイスタイガーだけは、倒してやる。


「ファイアーストーム!! ファイアーボール!!」


 叫んでた。猛吹雪の前に、私は今。自分のなかの必殺魔法を叫んでいたのだ。


「蒼華!!」


 え? 飛翠??


「おのれ! 小娘!!」


 ライムスの声が唸るようだった。私が放った紅炎の嵐と、紅炎の弾丸。それに猛吹雪は包まれ打ち砕かれたからだ。


 紅炎の弾丸がびっくりするぐらいに、ライムスに向かって飛んで行っていた。


 ウソ?? 生き残った! 消滅するかと思ったのに。私は吹雪に消されるんじゃないかと、思っていたのだ。


 でも、吹雪を突き破り紅炎の弾丸は、ライムスに向かって飛んで行っていた。


「ライムボール!!」


 ライムスが樹氷の弾丸を放った。私のファイアーボールと、ライムボールが衝突した。


 それは物凄い爆撃だった。


「きゃあ!!」


 今までで一番の爆風。爆音。私はふっ飛ばされていた。


「蒼華!!」

「蒼華ちゃん!」


 氷の地面に叩きつけられる様に、落ちていた。だけど、直ぐに誰かに抱き起こされた。


 やがて……爆風は消えた。


「小娘……。舐め腐りやがって。」


 ライムスの氷の牙がきらっと光った。ふるふると口が震えて歪む。


 ああもう。完全にキレてるわ。あれは。眼がイッちゃってるし。どっかの……○ク中みたいだ。


「蒼華ちゃん。今のうちです。魔力の回復を。いいですか? 魔力が無くなれば……“死にます”。今までは瀕死でセーブ出来ていたんです。今の貴女は、きっと“ゼロまで使い切る”」


 私は飛翠に抱き起こされていた。でも、隣でしゃがんでそう言ったのは、ネフェルさんだった。


 そう言って……差し出したのは、マジックメイトだった。


「でもまだ……フラついてないよ?」

「それは魔力が多少なりとも……増えているからです。そのロッドのお陰とも言えます。それから……“貴女の精神力が強くなったこと”。」


 ネフェルさんはそうは言ってるけど、何処か……心配。そんな顔をしていた。


「小娘。第二ラウンドだ。待っててやる。さっさとしろ!!」


 まるで……地鳴り。


 そんな怒鳴り声が響いたのだ。ライムスは氷の針みたいなトサカを突き立て、吠えた。


 吠えた様に喋った。とにかく恐ろしい声だった。私はネフェルさんからマジックメイトを受け取り、飲み干した。


「蒼華。なりふり構わねーのは俺も同じだ。でも、お前はやるな。」


 私は肩を支える飛翠の声を聞いた。ごっくん。と、甘いトロピカルジュースみたいな魔力回復薬を、飲み干した。


 飲み干すと消えてくれる。ゴミになったのが、わかるかのように。


「……なにそれ。」


 私は飛翠から離れた。ちょっと……ムカついた。


「あ? わかんねーの?」


 ムッとした様な飛翠の声が聞こえた。


「勝手だよ! 飛翠は。私だって……心配だし、おんなじ。負けたくないし、いなくなって欲しくない。おんなじ!!」


 ムカついたからそれだけ言って、


「ネフェルさん。有難う御座います」


 私はライムスの方に戻ったのだ。


 もう。これは意地だ。負けたくないだけだ。


 ライムスの白い毛に覆われた身体は、吹雪に包まれていた。虎に似た氷の獣。


 私はぎゅっ。と、ロッドを握りしめた。


 さっきの魔法……。ブリザードだっけ? アレって支配者が使う魔法なのかな?


 イフリートが使う“メルトストリーム”。それみたいなやつだよね? 必殺魔法みたいな。


 ん?


 私はロッドを見つめ……右腕につけてる金色のバングル。それを見た。


 そして……思いついてしまったのだ。


 わからないけど。やってみよう。


 ライムスにロッドを向ける。思いついたら直ぐ実践!!


「“紅炎の熱風(メルトストリーム)”!!」


 とりあえず叫んでみた。


 あれ??


 だが、ロッドもバングルについてる真紅の継承石も、なんの反応もない。


「あ。やっぱダメなのか。」

「何をしてるんだ?」

「うるさいな! 初心者だから色々と試したいの! そーゆうモンでしょ!?」


 呆れたようなライムスの声。バカにした様な顔に、私はそう怒鳴っておいた。


 やっぱり……魔法のコトバを知ってるだけじゃ、使えないのもあるのか。


 魔法の呪文みたいなやつ。“コトバ”って勝手に言ってるけど。叫べば使えるのかと思ってた。なんか発動条件みたいのが、あるんですかね??



「蒼華ちゃん。“上級魔法”は魔導士にならないと、使えませんよ。」


 と、そこへ救いの神が!


 ネフェルさんの声が響いたのだ。


「あ。そうなの?? やっぱり条件があるんだね。」


 私はロッドを見つめながらそう言った。上級魔法。そうか。そうゆうのもあるんだった。


 と言うことは……魔石の魔法は、初心者魔法だから……ファイアーボールとかは、魔法ってことでいいのかな??


 う〜ん。良くわかんないや。もう。


 あ!!


 そして私は思いついた!


「行くぞ。小娘!」

「かかってきなさい!!」


 と、大口たたいてみた。試してみたいからだ。


「“樹氷の怒り(ブリザード)”!!」


 思ったとーり! ライムスはあの氷の槍だらけの猛吹雪の魔法を、使ってきたのだ。


 なので、私は


「ファイアーストーム!! ファイアーボール2連発!!」


 どどーんと紅炎の魔法を撃ちつけたのだ。


 イフリートのメルトストリームは、熱風纏った紅炎の弾丸。私のファイアーボールやファイアーストームじゃ、威力なんて小さいけど。でも。似たような魔法なら使える!!


 同じじゃなくても……ものまねぐらいなら、私だって出来るんだ!


 紅炎の嵐と紅炎の弾丸二発。それは大きな炎を纏いブリザードめがけて、飛んで行った。さすがにイフリートみたいに、どかん! と大きな球にはなってくれないけど。


 でも……猛吹雪と私の紅炎の魔法はぶつかった。


 熱風なのか吹雪なのかわからない風。それを受けながら、私は炎と吹雪の競り合いを見つめていた。


 燃える紅炎の弾丸が吹雪を弾いたのは、そんな時だった。



 それはーー、私がライムスに勝った証だったのだ。

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