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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第19話 樹氷の支配者ライムス〜最大の試練ですかっ!?〜

 ーー私とシロくんはフォルスさんと一緒に、洞窟に出た。と言うか……小屋の外に出た。


 氷の洞窟は寒気を連れてきた。ぶるっとした。


 そこに


「嬢ちゃん! 大丈夫か?」

「姉ちゃん! もういいのか?」


 心配してハウザーさんと、グリードさんが声を掛けてくれたのだ。


「はい。お騒がせしました。」


 ぺこり。と、頭を下げた。みんな……いる。良かった。


「良かったですよ。本当に。」

「顔色も良さそうだしな。安心した。」


 ネフェルさんとガルパトスさんだ。二人ともあったかい目をしてくれている。


 ん? つかつかと飛翠が来た。


 え!?


 私は目の前に立つといきなり、手を伸ばしてきた飛翠に、思わず身構えた!


 な……なに?? 顔コワっ!!


 だが……ぎゅうっと。頬をつねられた。


「いひゃい。」

「ああ。悪い。つねりやすそうだった。」


 はぁ!? なんだ?? なんなんだ!!


 と、私は思ったが……人の頬を抓りながら、なんだかとても……せつなそうな顔をしていた。


 いやいや。痛いから。離してよ。


「お前。自分で言ったこと忘れてねーよな? 今度は逃げんなよ。」


 飛翠はそう言うと手を離したのだ。


 え?? 今度?? 逃げる?? なんのこと!?


 頬を擦りながら思い返してみたが……思い当たる事がないのだ。逃げたっけ?? 何から??


 と、自問自答してはみたが、わからん。


 飛翠はさっさと行ってしまった。


 でも……良かった。普通に話せたし、顔を見れた。正直。どうゆう顔をしていいのかわからなかったのだ。告ったのはいいけど……、やっぱり照れる。


「行きましょうか。」

「……はい。」


 フォルスさんの声に、気持ちを切り換えた。そう。これから樹氷の支配者に会うのだ。


 私はシロくんと歩きだした。シロくんはずっと傍にいてくれる。ホッとする。



 フォルスさんの小屋は、飛翠と戦った場所から近くだった。あんな丸太小屋どうやって建てたのかな? なんて思ってしまった。


 だって、ここ氷の世界ですよ? 木あるのかな?


 今の所……無いんだよね。


「あ。イタっ!」


 ぼすっ。と、私は頭をぶつけた。


「ボケッとしてんな。バカ女。」


 目の前には飛翠の大剣。どうやら私は飛翠の背中にぶつかったらしい。背中に背負ってるからぶつかったのだ。


 もー。急に立ち止まらないでよね。


「蒼華ちゃん。ここです。」


 おでこを擦る私に、フォルスさんはそう言ったのだ。私はひょい。と、飛翠から顔を出した。


 え!?


「え?? な……なんですか?? なんなんですか!?」


 私はみんなが……立ち止まっているその場所を見て、驚いたのだ。


 みんなも目が点。ぎょっとしてる。


 何しろ目の前には氷の橋だ。向こう側には、氷の崖がどどーんとある。


 洞窟を抜けて広いところに来たのはいいけど……なんで橋!?


 しかもつららが橋の脇を覆ってる。


「なんで私だけこんななのよ!!」

「お前……とことん試練だな。」


 飛翠がとても可哀想なものを見る様な眼を向けた。同情の眼差しだ。


 橋は狭い。それにヒョオォと風も吹いてる。え? 下ってどうなってんの?


 ちょっと覗いてみた。


「ムリ!!」


 私は橋の手前で振り返った。みんなはとても同情の眼差しをしていた。


 え!? なんでそんな離れてんの??


 そうなのだ。橋の下は奈落の底だった。底が見えない。とにかく高いのはわかった。それに橋は長いし、細い。並んで二人がやっと通れるぐらい。


 ドーンと音がしたのだ。


 地面が揺れる。


 えっ!?


 細い橋が揺れたのだ。何しろ橋の真ん中にそれはいた。


 どっから出てきたの?? 上!? 洞窟の天井ですけど!?


 目の前にいるのは真っ白な毛。それに覆われた獣だった。ライオンみたいにも見えるし……トラみたいにも見える。猫っぽい顔をしてる。


「よく来たな。救世主」


 白銀のたてがみが氷の様にツンツンと、頭の上から生えている。まるでつららだ。


 それに長い牙。上顎から伸びる氷の牙が二本。


 スノータイガーですか? 雪みたいに白いからそう呼ぼう。


「こんにちわ。」


 とは言ってみたが……橋を渡る勇気はない。え? 落ちない?? 溶けない?? 割れない??


「早く来い。力試しに来たんだろう?」


 え?? なにその戦闘モード。なんでそんなに頭低くしてるの?


 大きなスノータイガーは、やる気マンマンで橋の真ん中で待ってる。しかもブルーの眼が光るから、コワい。


 さらさらと雪の様な毛並みなんだけど、キレイだなぁ。とか思ってるヨユーはない。


 今にも噛みつかれそうだ。ヒョウが獲物狙ってる画像を見た事あるけど、あんな感じで前足突き出して、体を屈めてる。


 いきなり飛びかかってきそうだ。


 はぁ。


 私はとりあえず息を吐き、橋に向かった。どっちにしても行くしかないのだ。帰るワケにはいかないし。


「私は樹氷の支配者“ライムス”。お前は?」


 低い声。重低音だ。


桜木蒼華(さくらぎそうか)です。」


 ピンッと三本の銀のヒゲが、揺れる。耳も氷みたいに尖ってる。


「蒼華。来るがよい。お前の力を見せてみよ。」


 はぁ。


 最初だけなんだよね。優しいのは。みんな。


 と、私は思いながらライムスとやらから少し離れて立った。近くで見ると本当にデカい。それに氷の吐息みたいな、息が鋭い牙を持つ口から出てる。


「行きます!」


 私はロッドを向けた。


「“紅炎の弾丸(ファイアーボール)”!!」


 弾丸はライムスに向けて放たれる。いつもより、調子良さそうに見えた。少し大きい弾丸だった。それに、炎の威力も強く見えた。


 ライムスはその白い身体で真正面から、ファイアーボールを受け止めていた。


「え? 逃げないの?」


 私は直撃したことに驚いていた。それに炎に包まれたんだ。ライムスの身体は。


 でも直ぐに紅炎の弾丸は、パンっ!! と、弾き飛ばされてしまった。


 やっぱりね!!


 思ったとおりでした。私の魔法は効かなかったのだ。


「ふむ。なるほど。それなりにか。だが、その程度では私の身体は、焼かれない。ならば今度はこちらから。」


 ライムスの口元に吹雪が集まり始めた。ヒュウウと。まるで吸い込んでるみたいに。


 なんだろ? イヤだな。


 吸い込んだかと思うとカッ!! と、口から放たれたのは吹雪を纏った弾丸だった。


「“樹氷の弾丸(ライムボール)”!」


 吹雪を纏う氷の弾丸だ。それも球体。なにこれ!?


「ファイアーボール!!」


 迷ってるヒマはない! 私は直ぐにファイアーボールを放った。


 ドンッ!! と、直撃したけどライムボールとやらは突っ込んできた。


 速い!! 避けらんない!!


「きゃあっ!!」


 なにこれ! 痛い!! 岩を投げつけられたみたいに痛い! いやもっとなんだけど。


 私は吹き飛ばされていた。


 氷の橋に倒れた私に


「“樹氷の槍(ライムトール)”」


 そんな声が聞こえた。


 地面が揺れた。倒れた私の下からそれは突き出した。


「きゃーっ!!」


 悲鳴が出た。それはもう痛みとかじゃなくて、何だかわからない衝撃が私を襲った。


 地面から突き出した氷の槍は、私のお腹を突き刺し、貫いたのだ。私は串刺し状態で突き出した槍に身体を持ち上げられていた。


 それも……かなり太い。


「蒼華!!」

「蒼華ちゃん!」


 飛翠とネフェルさんの声が聞こえた。


 ボタボタと氷の槍に突き刺された私のお腹から、血が流れる。


 ど……どうなってるの? これ。熱い……。お腹が焼けそう。それにまるで電柱みたいに太いんだけど。この槍。


「加減はしてやった。さあ。そこから生還してみよ。救世主。」


 ライムスの声が聞こえる。


 な……なに? 生還?? 何言ってんの?? すでに死にそうなんですけど。


 動けない。ちょっとでも動くと痛くてたまらない。意識が飛びそう。


「やり過ぎだ! これは試練だ。殺し合いじゃない!」


 ネフェルさんの怒鳴り声だ。


「蒼華を降ろせ。ぶっ殺すぞ」


 飛翠の声も聞こえる。


「ほぉ? 手助けはルール違反。私の力は渡せん。それで良いか?」


 ライムスの声も。


 そうだ。これは……力を借りる試練。


 私はロッドを突き刺している氷の槍に向けた。ズキズキするけど……。それにボタボタと血も垂れてるけど。


「……ファ……ファイアーボール!!」


 叫んでた。


 氷の槍にロッド向けて。


 炎の弾丸は地面から突き出した槍を直撃! そのまま氷の槍を砕いた。


 炎に包まれ砕けたことで、私は解放されたけど地面に叩き落された。


 お腹を突き刺していた槍も溶けたのかなんなのか。消えてはくれたけど、痛みは消えない。氷の地面に叩きつけられたから、余計に痛い。


 しかも真正面から落ちた。


「うっ………」


 息が出来なかった。


 身体を打ち付けられて、本当に気を失うかと思った。こんな痛いのは始めてかも。


 でもロッドだけは握ってた。だけど地面に叩きつけられたから……指の骨は折れてるかも。


 もうじんじんしてるし、全身が痛いからどこが痛いのかわからない。とにかく……回復しないと。


「……あ……アミナス………」


 ポウッ。


 ロッドが光り、私の身体は青い光に包まれる。良かった。声はなんとか出た。


「……良い良い。それでこそ救世主。では行くぞ。」


 え!? ちょっと!! まだ回復途中ですけど!?


 ギョっとしましたよ! 私は! ライムスの声に。


 見る事すら出来ないけど!!


「“樹氷の吹雪(ライムストーム)”」


 放たれたのは今度は猛吹雪だ。それは私の身体を地面から浮かせて、吹き飛ばすものだった。


 氷の粒がまるで雹みたいに、私の全身を打ち付ける。たくさんの石を一気に投げつけられてるみたいだ。感覚的に。投げられたことないけど。


 吹雪の風にきっと、私の身体は回転させられてる。それも浮き上がったまま。


 全身を打ち付ける雹。穴でもあくんじゃなかろうか。私の身体。


 呑気な事を考えてられるのも、あまりの痛さでわけわかんないからだ。


 それにぐるぐる回転させられるから、頭の中もぐるぐるだ。


 気がつけば地面にまたもや落とされていた。


「降参するか? 魔法防御も持たぬお前では、私には勝てん。そうやって傷つけられて回復しての繰り返しだ。痛いだけだ。」


 何か……ハラたってきた。


「アミナス!!」


 八つ当たりチックな……ストレス発散チックな、この試練! バカにしてる!


 冗談じゃない! あ。ちょっと待って。反撃する前に、用心。用心。


 アミナスで回復したあとに、私は必殺!! マジックメイト!! を、取り出した。


「何だ?」

「ちょっと待って。ハウス!!」


 私はきょとん。としてるライムスに、そう言ってからキュポっと、青い小瓶のフタを開ける。


 ごくごく


 飲み干した。あ〜たまらんっ!! 


 さて……と。


 ビシッ! と、ライムスにロッドを向けた。


「いい加減にしろ! このスノータイガー! その牙、折ってやる! 掛かってこい!」


 アタマにきたのだ。もうキレた。


 なので怒鳴っていた。


 は?? と、ライムスはきょとんとしていたが、


「蒼華姉様! かっこいいです!!」


 シロくんの声援は響いたのだ。このノリについて来れるのは、彼しかいない。


 ええ! もっと言って! シロくん! 


 と、思ったら少し遅れて、パチパチと拍手が鳴った。


「「「おお〜〜」」」


 と、歓声つきで。みんなもついてきてくれた。うんうん。良かった。良かった。


「なかなかいい根性してるな。良かろう。殺してやる。」


 ヒュウウ……と、スノータイガー……ああ。ライムスの口に吹雪が、集まりだした。


「殺すのは反則ですよ。殺ったら相手をするのは、この僕です。」


 ネフェルさん……。涙でそうになった。背中からの声援に。しかもちょっとキレ気味の声。始めて聞いたけど。


 ライムスはふんっと鼻で笑った。黒い鼻がびくっと動いた。


樹氷の弾丸(ライムボール)

「それが来るのはわかってるのよ! ファイアーボール! 連射!!」


 私はライムスの樹氷の弾丸に、紅炎の弾丸を2発。撃ったのだ。


 絶対に負けない!! 

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