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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第18話 フォルスさんの想い

 ーー目を開けると……ぼんやりと、灯り。高い天井……。それに暖かい。


 え……? なに? なんで天井っ!?


 私は木の天井が見えたのでびっくりだ。それに背中には、柔らかな感触。しかも身体の上にも何やら暖かなものが、掛けられてる感触。


 何よりも私の隣。そこにあったかい何かの気配。


「……シロくん……?」


 隣ですーすーと寝息たてるシロくんがいた。毛布みたいのにくるまって、私の隣で寝ていた。


 添い寝されてた?? ってこと??



「気がついたみたいだね。」


 その声は聞き覚えあった。私はシロくんを起こさない様に気をつけながら、体を起こした。


 どうやらベッドの上にいる様だ。それに近寄ってくるのは……


「あ。フォルスさん? え? すみません。休ませてくれたってこと??」

「やり過ぎましたね。今回は。君のお連れ……ネフェルくんだったかな? 怒られてしまいましたよ。」


 ベッドの脇に立ったのはフォルスさんだった。とっても優しい顔で、見おろしていた。何だか……飛翠と戦っていた時と……雰囲気が違う。


 ギスギス! ってのがない。


「ネフェルさん?」

「ちょっとムキになってしまいました。」


 フォルスさんはにっこりと笑った。


「え? どうゆうことですか? 人間を嫌ってるんでしたっけ?」


 あ! 言ってからちょっと後悔した。寝起きでぼーっとしてたからか、すんなりと言ってしまったのだ。フォルスさんは少しだけ、苦い顔をした。


「そう思わせる事が出来たのなら、私は天才ですね。そう思わせようとしていたのは、事実だから。」

「え? それって……わざと?」


 どうゆうことなんだろう? でも今、ここにいるフォルスさんはさっきまでと違う。そうウソっぽい笑い方じゃない。


「殺意を持って望む。そうじゃないとただの手合わせになってしまうでしょう? 私が教えたかったのは……“魔法剣を使う敵”なのだから。」


 フォルスさんはベッド脇にあるイスに腰掛けた。


「それって……イレーネ王のこと?」

「いえ。それだけじゃありません。この世界には、魔法剣を使う者はたくさんいます。君達が出会うかどうかは、わかりませんが。」


 わざと……飛翠を……キレさせたってこと??


「剣を交えれば……相手の性質が見える。飛翠くんは……私の殺意を感じ取っていたんでしょうね。」


 フォルスさんはそう言った。


 飛翠がブチッとしてしまったのは、ソレだ。そう。戦う気マンマンなのに、フォルスさんが優しさを見せてたから、余計にハラがたったのだろう。


 ウソついてる。それがわかったからだ。


「なんで……そんな事。ハッキリ言ってすごいイヤなヤツにしか、見えませんでしたよ?」

「悪役を演じるのも大変だ。それは良くわかりました。」


 にこっと笑うフォルスさん。はぁ。なんだかなぁ。今はイヤミっぽくもないし、とってもいい人。そう見える微笑みだ。


「ですが……それが“目的”です。より強い臨場感を与えること。本物の戦いの中にいる。飛翠くんにはそう思って貰わないと意味がない。敵だと認識して貰う事で、はじめて……“本気”になるし、恐怖も感じ取る。死ぬかもしれない。そう思える」


 フォルスさんは笑ってなかった。戦いの時は、本音や本心を隠す為に……微笑えんでたんだろうな。と、私にもわかったのだ。


「そっか。いつもは……“試練”みたいなものだから、油断はしてないけど……死ぬかも。とは思ってないって事ですよね?」


 と、言いつつもこれは飛翠だけだろう。と、思ったのだ。私は常に死ぬかもしれないからだ。支配者って……とてもじゃないけど、試練。って感じじゃないんだもん。


 みんな本気だったよね? 私はひやひやですよ。毎度。


「ええ。彼に剣技を伝授すること。それが目的ですからね。ああして、支えようと付いてくるぐらいです。お優しいのでしょう。」


 と、フォルスさんはベッドの脇の窓を見つめたのだ。私も思わず見た。


 窓の向こうには氷の洞窟があった。どうやらこのお家は、洞窟の中にあるみたいだ。


 そこでガルパトスさんと手合わせしてる飛翠がいた。それを見て声を掛けてるのか。笑うハウザーさんと、ネフェルさんもいる。


 それにグリードさんも。


 元気だね。本当に。


「薄情だと思いますか?」

「えっ!?」


 私はビックリしてフォルスさんを見たのだ。


 そんな事は思わなかったけど……。心配して傍にいてくれるシロくんを、見てしまった。


「飛翠くんが言い出したんです。“動いてねーと、イラつく”だそうですよ。貴女に無理をさせた事。それに気が付かなかったこと。色んな想いが、彼の中で渦巻いてたんでしょうね。貴女の寝てる顔を見ているのが、しんどそうでした。」


 フォルスさんの声に私は……ぎゅっ。と、フワフワの毛布を掴んでいた。


 そうなんだ……。飛翠。


「絆の強さが良くわかりました。魔法剣は絆です。お互いの力を認め合い、高め合い信頼し合うこと。そうでなければ……持続と継続は勿論。強力な力にはなりません。」

「信頼……」


 私はフォルスさんを見つめた。フォルスさんは微笑んでいた。


「貴女たちの魔法剣はどうやら……“特別”なもの。の様だ。それには貴女方の武器も関係しているでしょう。不思議なロッドです。見させて貰いました。」


 ベッド脇の壁に立てかけてある私のロッド。フォルスさんはそれを見つめたのだ。紫に煌めくロッドだ。


「そうなんですか? 何がなんなのかわからないんですけど。」

「魔法とは想いです。それは時に“想像を超えた力”を発揮します。まるで命を持ってる様なロッドと、貴女たちの絆。」


 フォルスさんは、私を見たのだ。


「それが貴女たちの魔法剣を生み出したんでしょうね。大切にしてください。それは貴女たちの力だ。特別なものだ。」


 絆……特別。私達にしか出来ないこと。


 私はフォルスさんの言葉を心の中で、繰り返していた。フォルスさんは立ち上がったのだ。


「今夜はここで泊まって……明日。支配者の所へ案内しましょう。」

「あの……有難う御座いました! それに何か……ごめんなさい! 色々と言ってしまって!」


 フォルスさんはくすっと微笑んでいた。


「貴女は何も。あそこで剣を振ってる飛翠くん。だと思いますけどね。」


 と、そう言ったのだ。


 ま。たしかに。毒を吐いたのは飛翠だ。いつもの事だけど。私はこうして……飛翠の代わりに、謝る事も多いのだ。何しろあの方は俺様なので。


 本当に困ったちゃんだよ。


「いつもの事ですから。」

「そうですか。純愛ですね。聞いてて羨ましくなりましたよ。」


 フォルスさんのその声に、私はぎくっとしてしまった。あーそうだった。私はみんなの前で大胆にも告ったのだった。


 ど……どうしましょ?? 飛翠に会わせる顔がないなぁ。言っちゃったのは私なんだけど。




 忘れていた……。


「それに……“仲間”と言うより、家族の様だ。貴女たちは。それもとても羨ましいことです。」


 フォルスさんはシロくんを見ていた。微笑ましそうに。私は……隣で疲れてしまったのか、ぐっすりと眠るシロくんの、ふわふわの頭を撫でた。


 ムニャ……と口が動く。なので、手を離した。起こしちゃ可哀想だよね。


「ありがとう。シロくん」


 私はそう言ってから窓の外を見つめた。楽しそうに剣を振る飛翠たちを。






 ▷▷▷


「ごめんなさい!! 寝てしまいました!!」


 翌朝だ。と言ってもよくわからない。洞窟の中にある小屋だから。太陽とか見えないし、でもフォルスさんが起こしに来てくれたのだ。


 で……ベッドの上で必死に謝るシロくん。


「ぜーんぜん! お陰でぐっすりです。私も。ありがとう。」


 そうなのだ。シロくんをぎゅっとして寝たので、とっても寝れた。爆睡ですよ。お陰ですっきり。


「それなら……良いのですが……」


 私とシロくんは、ベッドから降りる。フォルスさんは、くすくすと笑っていた。


「ご気分は良さそうだ。」

「はい。ありがとう御座います!」


 ふかふかベットだったし。すっごい寝心地良かった。


「では。参りましょうか。皆さんお待ちですよ。」


 フォルスさんの声に、私とシロくんは


「「はい!!」」


 と、元気良く返事した。


 今日は……樹氷の支配者に会うのだ。私が……戦う番だ。


 私はロッドをぎゅっと握りしめた。

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