表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
75/131

第15話 衝撃!!アイスマンはエルフだった!

 ーー氷ばっかの広い場所。


 そこにきらきら氷の身体をしたアイスマン……。ああ。エルフだった。


 樹氷の妖精(エルフ)。フォルスさんは、やっぱり氷みたいな剣を持っている。


 しかもデカい。大剣だ。霜が纏う冷たそうな剣。夏に抱いて寝たら……気持ちよさそうだよね。


「さて。見てわかると思うが……私が、使うのはこの……“樹氷の刀剣(ライムカリバー)”。だが……」


 ライムカリバー??


 なんかお菓子とかでありそうだな。スゴい鋭い刃を、飛翠に向けてるけど。


「君は……。ああ。名は?」

「は??」


 そりゃ驚くよね。この話の流れで、名前を聞かれるとは思わないよね。


 私は後ろで飛翠の声に、うんうん。と頷いていた。


「名前だ。名も知らぬ相手と剣を交えても、面白くもないだろう。」


 フォルスさんは笑った。なんか……楽しんでるのが、すっごいわかる。眼も氷みたいだから、冷たい感じするけど。


柏木飛翠(かしわぎひすい)だ。」


 飛翠がそう答えると、フォルスさんは少しだけ目を丸くした。だが、直ぐににこり。と、笑った。



「ああ。そうか。なるほど。だから……タイミング的に……“この感じ”なのか。」


 フォルスさんはぶつぶつと言ったのだ。独り言みたいだった。


「は? なんなんだ? さっさとしてくんねー?」


 イラっとしてるのがわかる。飛翠の声はちょっと……キレ気味だった。短気だなぁ。もう。


「いや。すまない。では……話を戻そう。“君は樹氷の刀剣”相手に、どうやって戦う?」


 フォルスさんは……とってもマイペースなんだな。くすっと微笑んだのだ。それに……我慢ならない。とってもわかりやすい飛翠は、


「あー。イラつくな。」


 と、ひと声。突っ込んでいった。


 でしょうね。この感じは、イラっとするでしょうね。貴方は。


 私はそう思いながら飛翠が、飛び掛かるのを見ていた。だが、フォルスさんの身体はまるで霧氷。霧みたいな蒸気に、包まれていた。


 あの大きな氷の大剣も。


「“樹氷の霧剣(ライムソルト)”」


 斬り掛かろうとして、大剣持ち飛び上がった飛翠に、フォルスさんは氷の大剣を両手で持って、胸元に翳しただけだった。


 なのに……飛翠は巻き起こる吹雪。それに吹き飛ばされていたのだ。


「な……なにあれ。」


 私はたくさんの氷の粒。その吹雪だ。雪じゃない。突風みたいだった。それに吹き飛ばされた飛翠を見て……そう言っていた。


「なんだ?」


 飛翠は起き上がったが、自分の腕や足。更に身体につく霧氷。それらを見て驚いていた。


 ただ、氷ついてはいないのか……手を動かし、身体についた霧氷を払っていた。ぱんぱんと。


「試し。なので、加減はしました。もう少し強く撃てば、瞬間凍結させる事が出来ます。」


 フォルスさんは大剣を降ろした。


「魔法か?」


 飛翠はそう聞いた。すると、フォルスさんはにこり。と、微笑んだのだ。


「君達を後押ししてくれてる“方”は、とても厄介な人みたいだね。まるで……“修行の道”だ。ここに来て……ようやく“魔法剣”に、辿り着かせるとは。」


 フォルスさんはそう笑ったのだ。


 え? それってまさか。


「まさか……あのジジィか?」


 飛翠がそう言うと、フォルスさんはこっちを見たのだ。私ーー、ではない。隣にいるネフェルさん。それにハウザーさん。その二人を見たのだ。


「偶然に出逢った仲間たちは、君達を見れば……“段階を踏んで連れて行く”。そう思ったんだろうね。いきなり、私の所には連れて来ないだろう。幾ら、“防御耐性”のある闘衣を着ていても……、万能ではないからね。」


 と、フォルスさんは言うと……私を見たのだ。


「それに。イフリートの様に“心優しくない”んだ。ここの“支配者”は。君は……“凍死でジ・エンド”だったと思うよ。」


 え!? なにそのまさかの衝撃的発言!? 殺害予告!? 


 しかもめちゃくちゃ微笑んでるけど!!


 飛翠が私をチラ見した。


「あー……何とかしそうだけどな。アイツなら。」


 と、そう言ったのだ。


 え!? 今のは褒めてますか!? それ! 絶対にバカにしてるよね!?


「それ。」


 だが、フォルスさんは急にとても強い口調になった。まるで、突き刺す様な言い方だ。


「あ?」

「“何とかなる”。そんな世界じゃないんですよ。魔法と剣の世界は。君達は確かに……“光るモノ”は、持ってる。天性的なものかもしれないが、だが……ここからは、そうはいかない。その為に、今までの概念は捨て……イシュタリアの世界の力。それを認めること。」


 フォルスさんの声に……飛翠は、何も言わなかった。私も何も言えなかった。


「“恐ろしい世界”だと認めることです。」


 私は……無意識だった。ロッドを握っていた。たしかに、今までは何とかなる。そう思ってた。だって、魔法の世界だから。夢の世界だと、どこかで思ってた。


 でも……イレーネ王の力。闇魔石のあの“視えないのに恐怖を感じる力”。あれを見てから、私も……飛翠も、感じている。


 ここは……“とんでもない世界”だと。私も飛翠も、ヘタしたら……“死ぬ”。


 それは……昨日。話したばっかりだ。だから、フォルスさんに言われて……ちょっと、恐くなった。他人から言われると……それも、イシュタリアの人に言われると……現実なのか。と、思えるからだ。


「そんな事はわかってんだよ。だからこうして……強くなろうとしてる。俺もアイツも。」


 飛翠……。


 彼は昨日もそう言った。


『変わらねー。強くなるしかない。それは……来た時と同じだ。』


 そう言ってた。だから私も……そう思ってる。


 私は前を向いた。フォルスさんと飛翠を見つめた。


「君達を見守る“この世界の大人たち”は、強くなって貰う為に……、行動を共にし、更に敢えて……“肝心な助言”はしない。君達が強くなるには、“己の心が強くならなくてはならない”から。この世界の恐ろしさを知っているからだ。」


 フォルスさんの声に、私はネフェルさんとハウザーさんを見た。


 二人は私を見ていた。とても優しい目で。


 そうか。何も言ってくれない。教えてくれないんじゃなくて……、見守ってくれてたんだ。私や飛翠が……、気づくのを。


 飛翠はちょいちょい、気づいて……強さを出してるけど。私は……やっと。だ。勢いだけで乗り越えてきたけど、何となくわかってきた。魔法ってものが。それに……戦うってことも。


 飛翠じゃないな。私の為だ。私はきっと言われても、理解できない。経験しないと納得しない。属性だ。魔力だ。と、あれやこれやと説明されても……理解できない。


 そうか。だから……みんな。言葉を濁してたんだ。言ってもわからない。経験すればわかる。その時に、サポート出来る事はするよ。そんな感じだったんだ。


 私が……飛翠が……この世界の人間じゃないから。


 そう。私が……“弱くてアマちゃん”だから。頼りっぱなしで、逃げ出す気100%のガキだから。私は。


 でも……考えること。どうすればいいのか……答えを、自分で見つけること。探すこと。


「私達は逃げない! そう決めたから。だから、ここをさっさと出て、樹氷の支配者とやらも倒して……あのバカ親父を倒すの! そう決めたの!」


 私はーー、フォルスさんにそう叫んでいた。無意識に。


 フォルスさんは微笑んだ。


「なるほど。それでは……力を貸しましょう。飛翠くん。君に”魔法“の恐ろしさ。それを教えてあげよう。」


 剣を構えフォルスさんは、そう笑った。優しい笑いなのだが


「ヤバいですね。」


 ネフェルさんは隣でそう言ったのだ。


 え!? このヤバい。は……ホントのヤバいだよね? 


 私がそう思っていると


「“樹氷の塔(ライムエンド)”」


 フォルスさんは飛翠に向けて氷の大剣を、突き出し構えたままそう言った。


 だけど……フォルスさんの身体からとてつもない、冷気。冷たい風が飛翠に向かっていった。


 光とその冷たい風に包まれた飛翠は、一瞬だった。氷柱。まるで氷の岩石。それに包まれてしまったのだ。


「飛翠!!」


 私は目の前で氷漬けにされた飛翠に、頭が真っ白になった。当たり前だけど……氷の岩石の中で、大剣を構えたまま動かない。


 凍結してしまった。


「飛翠……」


 グリードさんが、背中からアックスを取り構えた。だが


「手出しは無用。これは彼の勝負。さて、どうするかな?」


 フォルスさんがそう言ったのだ。


「どうする。ってなによ! 氷漬けじゃなにも出来ないでしょ!?」


 と、私がそう言った時だった。


 ゴッ!!


 物凄い音がした。それは氷の岩石が割れる音だった。それも紅炎。それが氷の岩石を壊したのだ。


 バラバラ……と、崩れていく氷の岩石。飛翠は地面にしゃがんでいた。


「飛翠!!」


 私は駆け出していた。


「あぶねー。魔石の事を忘れてたら……終わってたな。」


 飛翠はそんな事を言いながら立ち上がった。


「え? 平気なの? ねぇ? なんで?」

「知るか。アレじゃねーの? 武器が進化したから、魔石の力を“強く”してくれてんじゃねーの? なんかもー……ワケわかんねー。」


 飛翠は大剣を構えながらそう言った。


「いや。そーじゃなくて! 身体! 氷ったでしょ!?」


 ソッチ! 私が言いたいのは! 魔法とか魔石なんてどーでもいい! 飛翠の身体! ソッチが心配!


「さぁな。ま。死なねー。いつもそう思ってるからじゃねーの? つーか邪魔。どけ。」


 飛翠はフッと笑った。


 最後はいつもの口調で強めだったけど。でも、フォルスさんの方に、少し近寄った。


「……そ……そんなんで……誤魔化してばっか! 私は、心配してるんだけど!!」


 と……なんでだろうか。今……言う事じゃないのに。言ってしまった。


 飛翠は振り返りはしなかったけど


「わかってねーな。“お前を残して死なねー”。そう言ってんだけど?」


 少し……優しい声だけが聞こえた。


 あ……。飛翠が強いのは……死ねないと……思ってるのは、私がいるから……?


 でも、フォルスさんと飛翠の戦いははじまってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ